第37話怒り

私は怒りに任せてドゥオさんに飛びかかりそうになりましたが、ヤンさんに止められました。


『怒りに任せると隙だらけになる。耐えろ』と言われました。

ヤンさんの仰っている事は正しいので、グッと拳を握り耐えました。


「……アイツは、ちと厄介だな。能力者じゃないが、剣士としては一流だ」


いつの間にか横にいたゴリさんが言われました。


──このゴリラいつの間に……


「……ヤン、まだ動けるか?」


ゴリさんはドゥオさんを睨みつけながら、ヤンさんに問いました。


「…………」


「『勿論』と申しております」


その言葉を聞いたゴリさんは「ふっ」と口角が上がりました。


「久々に、暴れてみるか?」


その言葉を聞いたヤンさんは、とても嬉しそうに頷きました。


すると、ゴリさんとヤンさんは物凄い速さでドゥオさんに向かって行くと同時に剣を振り下ろしました。


「へぇ~、まだそんなに動けるか……上等や。かかってきぃ!!」


初めて、ヤンさんとゴリさんの本気の剣さばきを見ましたが、凄いの一言です。

思わず息を飲み、その場に立ち竦むほどに……


ヤンさんはゴリさんと長い付き合いだと聞いてはいましたが、こんなにも息のあった戦いができるのですね。


流石のドゥオさんも押されています。


──しかし、油断は禁物です。


「中々やるやん……ほな、僕も本気にならなあかんな……『一剣乱舞』」


ドゥオさんは、まるで舞を舞っている様に剣を振っています。

その姿は敵の私ですら魅入ってしまうほど美しいものです。


「ぐはっ!!!」


「ゴリさん!!?ヤンさん!!!?」


気づくと、ゴリさんとヤンさんが倒れていました。


「あはははは!!よそ見してると危ないで?」


「マリー!!!」


名を呼ばれ「はっ!!」とするとドゥオさんの剣が目の前に迫っていました。


──間に合わない!!


パンッ!!!


斬られると覚悟を決めた時、銃声が響きドゥオさんの剣を弾き飛ばしていました。

銃声の方を見ると、ティムさんが銃をこちらに向け立っていました。


「ティムさん!!!」


グラッと倒れるティムさんに、慌てて手を差し出し受け止めました。


「──ちっ!!死に損ないが目障りや。さっさとあの世に行き!!」


剣を素早く拾い、ティムさん目掛けて斬りかかってきました。

私はティムさんを守る為、抱き締め庇います。


しかし、剣が私の元に届く前にゴリさんの剣がドゥオさんを止めました。


「ここにもおったか、死に損ないが……」


苛立ちを隠せないドゥオさんが、ギリッと唇を噛みました。


「……悪いな。まだ死ぬ訳にはいかんのだ」


ゴリさんが再びドゥオさんの相手をしているのを黙って見ていると「……マリー……」とティムさんに呼ばれました。


そして、私にある事を託すとティムさんは気を失いました。


私はティムさんに託された事をやり遂げる為に、ドゥオさんを確実に狙える場所。螺旋階段の上へ移動しました。


そして……


「ゴリさん!!!」


私の声を聞いたゴリさんは素早くドゥオさんから飛び退いたのを確認すると、素早く狙いを定めドゥオさんに一発の銃弾を打ち込みました。


パンッ!!!!


ドゥオさんは逃げ遅れ、銃弾は腕に命中しました。


「あはははは!!残念やったなぁ!!最後のチャンスかもしれんかったのに!!」


──いえ、こちらの勝ちです。


そう思った瞬間、ドゥオさんはガクッと膝を着きました。


「な、何や!?力が入らん!?」


仕込んだ毒が効いてきたのを確認し、私とゴリさんがドゥオさんの元へ。


「──……先程撃った銃弾は、ただの銃弾じゃありません。ティムさん特製神経麻痺弾です」


「なん……やと?」


この国に乗り込む際、ティムさんが便利屋でちまちま作っていた代物です。しかも、即効性のある物を選びました。

因みに、これ以外にも毒、幻覚、思考停止、睡眠、催淫と色々な物を作っておりましたよ。


「さて、随分と手間かけさせてくれたな」


ゴリさんの手によりドゥオさんは縄でグルグル巻にされ、手も足も出せない状態になりました。


「あぁ~、久々に動いたら疲れた……」


首をコキコキ鳴らしながら、気だるそうにゴリさんが仰っています。


「…………」


「『ある意味、今からが本陣だろ?』と仰っていますが?」


確かにヤンさんの仰る通りです。


「……そうだな。動けるのは、ヤンとマリー、シモーネにジェムか」


ユリウス様とティムさんは気を失っています。

ルイスさんは解毒中。ルーナも傷を負っている為、動かしたくありません。


「よしっ!!シモーネはここに残り、皆の手当を頼んだ。ヤンとマリー、ジェムはすまんが付き合ってくれ」


「「はいっ!!」」


──さあ、いよいよ黒幕達と対面ですよ。

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