第13話警備

「ふぁぁ~~~ぁ」


「……まだ始まったばかりですよ?」


今、私とルイスさんは静まり返った屋敷の屋根の上にいます。

屋根の上からは夜空がとても綺麗に見渡せます。


──素晴らしい星空ですね。


そんな夜空など気にも止めていないルイスさんは、大きなあくびをしたせいで涙目になっております。


「──……ねぇ、マリー。何で俺ら屋根の上にいるの?」


「こういう場面はまず、屋根の上からと決まってるじゃないですか?」


「いや、それ、何処の常識!?」


寝転がっていたルイスさんが勢いよく飛び起きました。


「冗談ですよ」


屋根の上にいるのには、理由があります。


「ピィーーーーー」っと、私が指笛を吹くと……──来ました。


キュルルルル!!!


森の方からこちらへ飛んでくる影が見えました。


「ルーナ!?」


ルイスさんもルーナを認識した様です。


そう、私が屋根の上にいたのはルーナを待っていたからです。

航海中はずっと一緒でしたが、流石に屋敷には連れて来れません。

私はルーナに「指示があるまで、森で大人しくしていてくれますか?」と、伝えておいたのです。


「てっきりルーナは国に戻ったのかと思ってたよ」


ルイスさんはルーナを撫でながら仰っております。

ルーナもルイスさんに会えて嬉しそうに顔を擦り付けています。


……国に戻るように伝えたんですが、ルーナが離れなかったんですよ。

仕方ないので、森で待機していてもらいました。


「──で、ルーナを呼んだのは、俺に会わせる為じゃないでしょ?」


察しがいいですね。


「えぇ、一応念には念を入れて、外はルーナに警備してもらおうと思っております。ルーナは夜目が利くので適任だと判断しました」


まぁ、ルーナの出番がないのが一番なんですが。


「お前、警備まで出来るのか!?すげぇな!!」


キュルン!!


ルイスさんが更にルーナを褒めると、ルーナは得意げに一声鳴きました。


全く、誰がルーナの主だと思っているんです?私ですよ?ルーナが賢いなんて当たり前じゃないですか。


ルーナが褒められて、私も鼻が高いです。


「さぁ、早速ネズミ捕りにでも行きましょうか?」


「えぇ~、ネズミなんているか分かんないじゃん。ここでルーナと夜を明かそうぜ?」


……なに付き合いたてのカップルみたいな事言ってるんですか。


「はいはい、ルイスさんはこちら、ルーナは外をお願いしますね」


いまだにルーナにくっ付いているルイスさんの首根っこを掴み、ルーナから離しました。


「ルーナ---!!」と、叫んでおりますが、明日の朝また愛でて下さい。

今は仕事中です。


ルイスさんが離れると、ルーナは早速屋敷の周りを旋回し始めました。


──ルーナは仕事熱心ですね。ルイスさんにも見習って欲しいです。


私はルイスさんの首根っこ掴み、引きずりながら屋敷の中へと戻りました。


屋敷の中は既に皆さんお休みのようで、静まり返っておりますね。


「……二人で同じ所にいても仕方ないので、手分けしましょう」


「あ~ぁ、分かったよ~。仕事すればいいんでしょ~?」


ルイスさんから、何ともやる気の無い返事が返ってきました。


──全く、この方は大丈夫でしょうか?


少々不安を残しつつ私は右の廊下へ、ルイスさんは左の廊下へと別れていきました。


さて、ネズミがいないことを願いましょうか。

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