第58話お給金日
本日は待ちに待ったお給金の日です。
私は朝から浮き足立っています。
──早く夕刻にならないでしょうか。
そんな事を思いながら、仕事をこなしております。
最近、城の中が慌ただしく忙しいのです。
その理由は、数日後に行われる王家主催の夜会が開かれる為です。
この王家主催の夜会は年に一度行われる大規模な夜会で、他国からも大勢の方々が訪れます。
ですので、使用人含め国を治めているお偉い方々は失敗してはいけないと、皆様一様にピリピリしております。
「マリー!!!大変よ!!!」
そんな重い空気を物ともしない方が現れました。
「……何ですか?私は今、物凄く忙しいんですが」
「そんな悠長な事言ってる場合じゃないわよ!!今度の夜会、私の婚約者お披露目会を兼ねてるらしいの!!」
あらあら、それは大変ですね。では、こんな所で油を売っている場合じゃありませんよ?急いで婚約者の方を探して来てください。
「……貴方、自分は関係ないみたいな顔してるけど、カリンにはバレているんだから逃げれないわよ?」
殿下にそう言われると、「はっ」としました。
確かに、カリンには私が婚約者だと紹介しました。その勢いのまま、友達認定を頂いたのでした。
「……って事だから、マリアンネ。貴方、私の婚約者として夜会に出なさい」
「それは出来ません」
いくらカリンに顔が割れていようと、それは無理なお話です。
よく考えて下さい。今の私は令嬢でなければ貴族でもありません。
夜会となれば、国の重鎮の方々や他国の王族の方々など多数のお偉い方が集まります。
そんな中で、殿下の婚約者が侍女だとバレたら一大事です。
下手したら私はクビです……。
「ふふっ。そう言うと思って、ちゃんと策を練ってきたわよ」
どうやら殿下は断られるのを分かっていた上で、何やら考えがある様です。
「今回の夜会は皆、仮面を付けて来場するのよ!!」
殿下は得意げに、ビシッと私を指さしました。
なるほど、仮面をして喋らなければ誰か分かりませんね。
しかし、そうなると……
「……別に私じゃなくても良いのでは……?」
「お黙り!!私はマリアンネがいいのよ!!いい、これは命令よ!!」
出ました、職権乱用です。
命令と言われてしまえば、従わない訳にはいきません。
──また面倒な事になってきましたね……
「マリアンネのドレス一式は私が用意するから心配しないで。あぁ~、楽しくなってきたわぁ」
言うことだけ言って、殿下は意気揚々と私の元から去っていきました。
残された私は盛大に溜息を吐き、仕事へと戻りました。
◇◇◇
「マリー、お久しぶり」
中庭を掃除していたら、なんと、カリンに遭遇しました。
侍女の姿で会うのは初めです。
「お久しぶりです、カリン」
「……貴方、本当に侍女だったのね」
「ええ、働かぬ者食うべからずです」
カリンは私の侍女姿を見て、大層驚いた顔をしておりました。
「──……侍女と王子の禁断の恋。──素晴らしいわ!!マリー、他の奴が反対しても私は応援しているわ!!是非その恋を実らせてちょうだい!!」
カリンは私の手を取り、興奮さめらぬ様子で申してきました。
侍女の姿を見てもなお、カリンは疑うこともせず、私を婚約者だと信じている様です。
これは、ボロが出る前に話を変えた方が良さそうです。
「ところで、どうしてこんな所にカリンがいるのです?」
花が咲き乱れた中庭なら、お茶会の場として使用されますが、生憎今の時期は花よりも緑の葉っぱの方が多いです。
「あら、友達に会いに来たのに随分な言い方ね?」
ニコッと可愛らしい笑みを私に向けながら言われました。
もしや、私に会いにわざわざ来てくださったのですか!?
友達と言うものは、そう言うものなのですか!?
カリンは私にとって初めての友達なので、友達とはどういうものか、私には未知の領域なのです。
「まあ、マリーに会いに来たのは本当だけど、別件であの男女に呼ばれたのよ」
男女とは殿下のことですね。
「ねぇ、それはそうと、マリー。私とデートしましょ?」
カリンはそう申すなり、私の手から箒を奪い取り、私の手を引き中庭を出ました。
私が「カリン!!私には仕事が!!」と何度も訴えましたが、「平気平気」と全く、聞く耳を持っていただけませんでした。
──……友達とは、随分と強引なのですね……
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