第26話料理人
数日後、無事にジェムさんが職場復帰しました。
皆さんに復帰祝いの酒を振る舞われ大変ご満悦のご様子ですが、皆さんと同じペースで飲んでいて、大丈夫でしょうか。
暫くすると案の定、ジェムさんは真っ青な顔で手洗い場へと駆け出しておりました。
「やだ、これぐらいでギブなの?」
「わはははは!!こりゃ酒の訓練もしないとな!!」
シモーネさんとゴリさんが、ジェムさんの後ろ姿に向かって申しておりますが、貴方がおかしいんですよ?
この便利屋の皆さんは全員ザルなんです。
勿論、私も酔った事がございません。
皆さんで飲むと一晩で酒樽が5樽空になります。
……ですので、酒場は出入り禁止となり『マム』以外では飲めないのです。
一度酔うほど飲んでみたいものですね。
「……ねぇ、クレメール伯爵はどうなったの?」
ティムさんの言葉に、ピタッとゴリさんの手が止まりました。
実は私もそこは知らないのです。
「……後味悪いぞ?」
そこまで言うなら全て吐いてくれます?
ゴリさんは意を決した様に、ポツリポツリと語りだしました。
「……あの後、騎士達にクレメール伯爵を引き渡したんだ。そこまでは良かった……」
それで?
「城に向かう馬車の中で、クレメール伯爵は……死んだ」
「はぁ!?」
思わずティムさんが声を上げました。
「一緒に騎士が乗っていたんでしょ!?その騎士は何してたの!?みすみす殺されるのを見てた訳!?」
そうですね。おかしな点があります。
罪人を連行する場合、左右に一人ずつの騎士が逃げれないように囲っているはずです。
そして、ゴリさんの言い方です。
これは、襲われたわけでなく、自ら命を絶ったのか、あるいは……
「……呪詛が仕込まれていた」
──やはりですか。
「……大方、内情を暴れかれたくない近隣国の奴らの仕業だろう……と、言うことでこの件は終わった」
なるほど、確かに後味悪い終わり方ですね。
ゴリさんの話しを聞いていた皆さんも眉間に皺を寄せて何か言いたそうですが、敢えて何も言いません。
まあ、あまり深入りして面倒事に巻き込まれるのは御免なので、この話はこれまでと言うことで……
「そう言えば、マリー。クレメール伯爵の屋敷から男を一人連れ帰ったみたいだけど、どうしたの?」
「あら!!やだ、本当!?遂にマリーも男を持ち帰ってきたの~!?いい男!?私にも味見させて頂戴」
ティムさん、余計な事を……
見なさい、シモーネさんが素晴らしい勘違いをしてるじゃないですか。
ティムさんが言っている方は、殺し屋に不向きだった彼の事です。
そもそも、持ち帰ってきたのはそういう事ではなく、ちゃんとした職を見つけさせる為です。
そして、見事『マム』の見習い料理人となりました。
因みに、『マム』の、料理の全てはミレーさんの旦那様ジャックさんが一人で作っています。
ダメ元で『マム』を受けさせたら、まさかの採用でした。
どうやら、ジャックさん一人では少々厳しくなってきた所へ就職希望がやって来たのでジャックさんからしたら、棚からぼたもちだったらしいのです。
「ゴラァ!!ロン!!卵まだ出来ねぇのか!?」
「は、ははひい!!すみません!!」
ジャックさんは少々口は悪いですが、とてもいい人です。
その証拠に……
「おっ!!こっちの仕込みは上出来だ。また頼むな」
飴と鞭の使い方が大変上手です。
ロンさんも褒められ、嬉しそうです。
この調子で頑張ってください。
本日のお給金……ゴリさんの奢りの酒4樽(便利屋の皆さん含)
借金返済まで残り5億8千100万2100ピール
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