俺がカードゲームで無双できる都合のいい世界 〜カードゲームアニメの世界に転移したけど、前の世界のカード持ち込めたので好き放題します〜
鴨山兄助
第一章:中学生編①
プロローグ:ある青春の1ページ?
カードゲームを通じて女の子と仲良くなれたら、それは理想の極みだと思う。
水族館デートとか普通なら夢じゃん? 美しい青春の筈じゃん?
「あっ、ツルギくん! これ見てください!」
腰まである白い長髪が特徴的な女子、赤翼ソラが嬉々として俺に話しかけてくる。
大きな学校行事が終わって、クラスメイトの女子と水族館に来る。
だれがどう見ても最高の青春……の筈なんだよなぁ。
「海洋生物系カードだけが収録されているパックですよ! ペンギンさんも出るかな?」
水族館です。俺が今訪れている場所は水族館です。
そして彼女が目を輝かせて眺めているのは、カードゲームのパックです。
何故か水族館の中にカードショップがあります。
『まもなくライディングイルカファイトが始まります』
「ツルギくん! イルカファイト見に行きましょう!」
「そうだな……俺は今眼球の寿命を消し飛ばす覚悟を決めた」
水族館名物イルカショーじゃないんだよ。飼育員がイルカの背に乗ってカードファイトをするトンチキ演目なんだよ。
動物愛護団体に怒られてしまえ。
(なぁ神様……俺は確かにカードゲームアニメの世界に行きたいとは願ったぞ)
だけどさ、こうなるとは思わないじゃん。
骨の髄までカードゲーム至上主義のトンチキ世界だとは想像できないじゃん。
「おいあっちでプロポーズ成功を賭けたファイトやってるらしいぜ!」
「やっほー、見に行こう!」
わかるか神様よ。その辺の通行人の発言ですらこれが基本なんだぞ。
そもそもなんだよプロポーズファイトって。そんなものをカードゲームで決めるな。
「水族館でプロポーズファイト……なんだかロマンチックですね」
「そうか……俺はもっとシンプルにやっても良いと思うな」
すまないが、ロマンを感じる要素が見当たらない。
冷静に考えてくれ、現実でカードゲーム使ってプロポーズする男がいたら相当ヤバいぞ。
しかも一部の業界人とかじゃなくて、一般人だぞ。
あとロマンチックとか言うけどさ、これ一部の女子限定の思考じゃないんだぞ。
全世界共通の思考とかいうんだぞ。知らなかったよ世界がこんなにトンチキだなんて、一回滅んでしまえアース。
(本当に……なんでこんな事になったんだろうな……)
カードゲームで無双できる理想の世界。
そんな世界に転移したつもりだったけど……実際は俺の無双とトンチキが共存した混沌の極みのような世界だ。
(家族まとめて異世界転移……人生ってわからないもんだな)
とりあえず今は、諦めと共にイルカを見に行くか。
異世界転移なんて現実からは、目を逸らそう。
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