2章 復活の邪神編

第1話 夢


 こんな夢を見た。


 俺はどこか暗い空間にいた。

 そこには3人の男女がいて、何かを話していた。

 会話の内容はよくわからなかったが、何やら禍々しい話をしていた気がする。


 そして場所は変わり、俺はどこか辛気臭い場所にいた。

 そこには1人の女性がいて、真っ赤な聖杯を所持していた。

 女性は聖杯を手にして、何かを叫んでいる。

 耳を澄ますが……聞き取ることはできない。


 そして女性は背後にある棺に、聖杯を叩きつけた。

 聖杯から漏れ出た深紅の液体が、棺を真っ赤に染める。

 赤く染まった棺は勝手に動き出し、中から何かが出現した。

 それはまるで包帯塗れの、ミイラのようであった。

 ミイラは狂ったように笑い続ける女性の頭に、齧りついた。


 と、ここで1つ気付いたことがある。

 俺の背後から、何者かによる視線を感じるのだ。

 思わず振り返ると、そこには──がいた。

 ララとリリとルル、そしてレイナを従えている。

 背後にはシセルさんがいて、何やら頷いているようすだ。


 自分の存在に気付いた瞬間、ひどい頭痛が襲ってきた。

 そして──



 ◆◇◆◇◆◇◆



「はっ──」


 目を覚ますと、見慣れた天井があった

 動悸が激しい。発汗も凄まじい。

 めまいもするし、若干ながら吐き気もする。


「あ、アルガ様……大丈夫ですか?」


 俺の異変に気付いたレイナが、心配そうに寄ってくる。

 その格好はネグリジェ1枚だけを着たもので、とても際どい。

 以前に風邪をひくから上着を着ろといったが、俺を誘惑する為にそんなものは着れないと断られたな。


「あ、あぁ……問題はない」


「本当に大丈夫ですか? わたし……心配です」


「大丈夫だ、安心しろ」


「わたしが妻だったら、もっと安心できますよね? 結婚しませんか?」


「しない」


 バカみたいな会話のおかげで、少し落ち着いた。

 あの夢は……なんだ?

 やけにリアル感ある夢だったが……。


「うッ……!?」


 一呼吸を置くと、またしても頭痛がやってきた。

 頭をガリガリと削られるような、ひどい痛みだ。


「あ、アルガ様!!」


 何か柔らかいモノに頭が包まれるが、それでも痛みは引かない。

 痛い、痛い、痛い。18歳にもなって、涙を流すほどの痛みに苦しむことになるとは。

 情けないが、苦しみは消えない。


 そして痛みに苦しんでいる最中、1つの記憶が脳裏を過った。

 それはどこかの組織の記憶。

 何やら怪しい格好をしている連中が、どこかの施設に入っていく記憶。

 全く知らない場所だが、どこか見覚えのある記憶だった。

 その記憶が頭を過ると、不思議と頭痛は消えていた。

 

「う、痛たた……。……ん?」


 頭痛が消え、マトモに思考ができるようになると、違和感に気付いた。

 俺はプニプニモチモチの、マシュマロみたいなモノに頭を包まれている。

 ……いや、これは知っている。少し前に同じ目にあった。


「……レイナ」


「大丈夫ですか!?」


「……心配しておきながら、求愛しているじゃないぞ」

 

 プニプニから頭を話す。

 「あっ」という嬌声がレイナから聞こえたことで、確信した。

 俺はレイナの胸に、埋もれていたのだろう。


「で、だ、だって!! 殿方は胸に埋もれていれば、どんなケガも病も治るのですよね!? 健康的な胸を見れば、健康になれるのですよね!?」


「どんな迷信だ……。少なくとも、俺の頭痛は自然に治った」


「そ、そうなんですか……。で、でも、し、心配だったのは事実ですよ!!」


「あぁ、わかっている。そこは感謝しているさ」


 俯き、少し涙を見せるレイナの頭を撫でてやる。

 絹のように柔らかい髪は、感触が心地よい。


「えへへ……。それで何が起きたのですか?」


「あぁ……そうだな。レイナよ、父の復讐は果たしたいか?」


「……はい、もちろんです!!」


 あの決戦からおよそ2か月が過ぎた。

 俺たちの評判はさらに上がり、今では人類史上最強のパーティと呼ばれるようになった。


 2か月も経過したのだから、レイナの怒りも風化したかもしれない。

 そう思い質問したのだが、杞憂だったようだ。


「レイナよ、復讐相手の居場所がわかったぞ」


「……え?」


「さっそく明日、乗り込もう」


「……はい!!」


 レイナはニッコリと、微笑んだ。


 

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