第27話  クラス内戦闘

 入学式と同じ体育館に連れて来られた。


 驚いたことに、椅子が全部片付けられてる。

 中心に大きな仕切りがあって、半分に別れている。

 ……これは制服の採寸の時と同じか。


「男子が右側、女子が左側です」


 また、入学式の時と同じく、ハンガーに掛けられた体操服を片っ端から着てみる。

 服のおかげで、なんとなくサイズはわかってるから、すぐに決まったけどな。

 

 半袖、半ズボンの他に、ジャージ上下もあった。デザインはまあまあかな。ザ・ジャージ。質感は少し違うけど。




 採寸が終わり、来たほうとは反対側の扉──グラウンド側の扉から出た。


「あ……」


 ん? 先生、どうかしたのだろうか?


「すみません、武器を取るのを忘れてました。一旦ぐるっと回って、武器庫に行きましょうか!」


 おい! なにやってんねん!




 武器庫は、体育館を挟んで、グラウンドと反対側にある。


 これも3つある。

 体育倉庫みたいだ……つまり一言で言うと、少し狭い。


「左端が1年生の武器庫になりますが、許可がないと入れません。一番の人から順番に、3人ずつ中に入って武器を選んでください。同じ種類でも、重さや長さなど、様々な違いがありますし、同じ物でも複数個あるので、安心してください」


 やっぱり剣にするか、棍にするか……。迷う〜〜〜!

  ターバと戦うことになれば、全力で戦う必要があるし〜〜。

 他にもターバレベルの奴がいるかもしれないし。


 最悪、棍は作ればいいんだけど、卑怯呼ばわりされてはたまらんしな。

 いや、使えるもんは使うのが当たり前だけどさ。


 ……いっそ、武器を所持しないのも手か。

 いや、念の為持っておいた方がよさそうだ。火の属性特化がいるなら、油断はできない。


 ターバとスゥ・フォナイ。この2人は厄介だな。


 スゥ・フォナイは、火の属性特化であることが危険。

 火だからな、応用の幅が大きい。

 なにより、火は不定形だ。


 そしてターバは、単純に戦い方が上手い。

 流れるような剣捌きは、まるで踊っているかのようだった。

 隙がない。


「あ、ラインくん」

「ん? なんですか、先生」

「ラインくんは、ハンデとして、棍の使用は禁止させてください」

「…………いいですよ」

「え、ほんとに?」


 お願いしてきたのは先生でしょうが!


「ほんとですよ」

「おお〜、自信満々ですねぇ」


 ……関係なくない?

 先生のお願いを聞いただけなんだがら。


 まあ、こんなことになったんだし、剣でも使うかな。

 一般的な、少し重めの両手剣。これが理想だな。




 お、次はオレの番か。

 武器庫に入る。


 ざっと見だけど、やはり当たり前と言うか、どの武器も刃はない。

 刃があったら、今頃誰か死んでるか。

 回復魔法があると言っても、そうそう間に合うものでもないだろ。


 中には窓はあるが、換気用だろう。

 人が通るのは無理そうだし、鉄格子が付いてる。


 薄暗く、ひんやりしている。夏にはここに入っていたいな……。


 それにしても──先ほどの感想と矛盾するが──意外と広いな。

 武器の種類も数も豊富だ。

 ナックルとかチャクラムまである。ククリ刀まであるよ……。


 剣は、あっちだな。片手剣、両手剣、刀。


 ……刀かぁ。よし、刀にしよ!

  ちょうどいい重さのものも見つけたし! よし、出るか。


「おや、ラインくん、刀なんて珍しいですね」

「え、そうなんですか?」

「斬撃に特化してるんですけど、使い勝手が悪いと評判ですよ?」


 え〜〜。結構人気な武器じゃないのかよ。

 まあいいや、これで。最悪、水晶で棍を作ればいい! ……最後の手段だけどな。


 最後のサヤ・ワーグが出てきた。


 速いな、1分も経ってないんじゃないか? 

 短剣使いって言ってたけど……1本だけ? 2本の方が良さそうな気もするけど……。


 まあオレのことじゃないし、いいか。


「さて、皆さん、校庭へ移動しますから、付いて来てください」




 もと来た道を辿り、校庭に着いた。


「じゃあ、各自準備運動をしておいてください。10時30分になったら開始します」


 9時から入学式が始まって、20分で終わった。

 そのまま体操服の採寸をして、一人一人武器を選んで、今に至る。

 で、今は10時15分。


 武器選びを待っている間、何をしていたかというと、ただただターバと話してた。

 内容はくだらないことだ。

 ターバはやはり、双剣を選んでいた。


 そして、ヌーとクォーサ──魔術師は、短杖を選んでいた。短杖はかなり種類があったな。

 まあ、素材とか形で効果は変わらないらしいけど、いくつか魔法が込められているのがあった。

 まだ、攻撃魔法を習得してないやつは、それを使うんだろうな。

 持てるのは一人2本までだから、攻略は簡単そうだな。


 にしても、準備運動か……。ラジオ体操でもやるか?

 いや、シンプルに屈伸とか、アキレス腱伸ばしでいいかなぁ。


 ラジオ体操はさすがに、ねえ?

  と、周囲を見渡してみる。……ラジオ体操をしてる人がいました。


 音楽はないけど、ちゃんと8拍子だ。オレはやらんぞ? 

 普通に屈伸したり、アキレス腱伸ばしたり、肩回したり……。




「はい、30分になりましたので、一旦集まってください」


 やはり剣が多いな。


「では、ここに皆さんの番号が書かれた紙が入った箱があります。2枚紙を引きます。そこに書かれている番号同士で戦ってください。戦う前にこの簡易的な装備を着てください。最初は……?」


 バッと勢いよく引かれた先生の手の中には、2番と15番の紙があった。

 オレは39だから違う。


 あれ、15番って……。


「私か〜」


 ヤマルじゃん。


「アッハッハ、頑張れヤマル〜〜」


 煽ったった。


「応援よろしくね、ライン?」


 目が笑ってねぇぞ、目が。

 まさしく、鬼だな。いや、これは種族そのものを馬鹿にしていると捉えられてもおかしくないな。やめておこう。


「応援してるから、勝てよ?」

「任せて!」


 ヤマルの身長は低め。いや、はっきり言って小さい。


 だが、槍という武器の性質上、リーチが長い。そこがポイントだ。

 相手は男だ。武器は剣だな。名前の確認は、しなくていいだろ。どうでもいいし。






 私、ヤマルの対戦相手はクラスの男子……。勝てるかなぁ。


 私もそこそこ力はあると思う。

 ここで勝てば、皆から一目置かれるかもしれない。

 けど、ラインと当たることになれば、少ししんどいかなぁ。……少しどころじゃないか。  

 手も足も出なかったから。アレと少しでも戦えるターバは凄いと思う。もちろん、ターバにも勝てなかった。


 いや、今は目の前の相手に集中しないと失礼。


「準備できたようですね。では、開始!」


 身体強化を発動と同時に、槍を構える。柄の太い、短い槍──騎士槍ランスにしようかと迷ったけど、こっちの方が合ってる。


 相手の武器は剣……片手剣。利き手は右かな。

 相手が走り出したら、それに合わせて……。もう来た! 走り出し、乱れ突きをする。






「乱れ突きですか」  


 先生がそう呟く。


 オレ、ラインはヤマルの戦いを観察していた。

 乱れ突き……槍スキルじゃなくてもできるから、不思議ではない……か。

 ヤマル、意外と強いのかな。優勢だ。


 まず、武器のリーチ。

 懐に入られたら終わりだが、懐に入らせなければいいだけの話。

 懐に入られそうになれば、乱れ突きで進路を妨害、か。


 相手の剣の動きもちゃんと見えているようだ。

 相手が武器を振る前に槍を武器に当てている。相手が剣しか・・使っていないのも、有利に働いている。


 ヤマルの突きも、肩などの関節を狙っているものが多い。

 このままいけば、ヤマルが勝つ。

 相手が切り札を用意していた場合、またはヤマルがミスをした場合、ヤマルが負ける。


 だが、魔力探知を発動させたところ、どちらも攻撃魔法は使えない。

 それに、一撃でも受ければヤマルは戦闘不能……なんてことにはならない。


 それに対し、相手にダメージは確実に蓄積している。

 目に見えて動きが悪くなっていき、ミスも増えた。ヤマルが関節以外を攻撃する回数も増えている。




そして数分後、相手が降参した。


「勝者、15番ヤマル・コラヤン!!」


 パチパチと、拍手が起きた。

 ヤマルは、と言うと…ろ無傷だ。弱攻撃連打だったからか、時間が掛かったな。


「おめでとさん、ヤマル」

「おめでと〜」

「おめでとう!」


 と、讃美の嵐だ。


「どーいたしまして」


 一方相手側は、かなり悔しそうだ。

 それもそうだろう。負けたんだから。

 ここでの戦いが今後のクラス内での立ち位置を左右すると言っても過言ではない。


「さて、次は……9番対22番!!」


 お、ターバじゃねえか。

 22番は……クラスの中心人物になりそうな男子だったか……? 





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る