第27話 中島、怒る

リア充ってのは何を考えているのか全く分からないものだ。

いやまあそれは一部だけだとは思う。

偏見になるからな。


羽田とか森本に付き合っているからこそ。

だから一部だとしている。

だが中には関わり辛い人間も居る、という事だろう。


「え.....優子.....長門の家で生活しているの.....?」


「そうですよぉ。羨ましいでしょ?アハハ」


通学途中で森本に出会ってからそう直ぐに言い出した鈴木。

この野郎という奴は。

俺は額に手を添えながら鈴木の頭を引っ叩いた。

そしてジト目を見せる俺。


「お前な。調子に乗るのも大概にしろ。そもそも俺は嫌でお前を家に置いているだからな。調子に乗るな」


「えぇ.....先輩それ酷くないですか」


「酷くねぇよ。ふざけんなよお前」


するとそうしていると森本が俺の胸ぐらを掴んだ.....!?

そして俺をジッと見てくる。

かなりキツい目をしているのだが。

どないした。


俺は思いながら顔を引き攣らせる。

だが次の瞬間。

森本は涙を浮かべてブワッと泣き出した。

私だって長門と一緒に生活したい!、と大声で.....オイオイオイオイ!!!!!


「落ち着け森本!頼む!マジに泣き止んで!?周りから白い目で見られているから!頼むから!」


「何で優子ばっかり.....」


「も、森本先輩。ゴメンなさい。悪かったです」


「俺は非リアなんだぞ!何でこんな目に遭っているんだ!」


そんな感じで大騒ぎしていると。

目の前から羽田がやって来た。

どうしたんだ?、という感じで、だ。

そして状況を見て直ぐに察した様にピーンとする。


「つまりあれか。君を巡ってこうなっていると?」


「半分合っていて半分は不正解だ」


「君は本当に大変だな」


「煩いな.....」


まあ冗談はさておき、と羽田は笑みを浮かべ。

そして真剣な顔になる。

それから、聞いたよ。優子が追い出されたそうだね。家から、と。

そしてもっと悩んでいる様な表情になる。


「それに加え優が迷惑を掛けてないかな。.....アイツは結構キツいからなああ見えて性格が。居場所を、仲間を、友人を守る為なら何でもする様な感じだからね」


「まあ残念ながら釘は刺された感じだな。というかどっから聞いたんだ」


「そんなもの聞かなくても分かる。君の話題は優と一対一の時の話題でかなり出て来るからね。そろそろ釘を刺す頃かな、と」


「.....羽田先輩。私は優先輩が苦手です」


「良い奴なんだ。優は。でも.....俺の関係もあって時折かなりリミッターが外れる時がある。だからそこさえ治ればな」


言いながら羽田は苦笑する。

俺はその姿を見ながら、随分と苦慮している様だなお前も、と言ってみる。

すると羽田は肩を竦めてから、そんな事は無いが.....まあ人には個性があるからな、と苦笑気味に答えてきた。

ふむ、と思いながら羽田を見る。


「昔から遠野くんは何処か遠かったよね」


「そうだね。彼だけ大人過ぎる感じがした」


「.....そうなのか」


「そうだね」


そう言いながら羽田は、じゃあな。先に行くから、と歩いて行く。

俺はその姿を見送りつつ。

鈴木と森本を見る。

火花を散らしていた。

オイ。さっきまでの緊張感はどうしたのだ。


「とにかく。私は認めないから。一緒に暮らすなんて」


「私はお父様の指示に従っているのです。だから1週間暮らす必要がありますから」


「お前ら.....大概にしろ。行くぞ」


「先輩。一緒に寝たりしているのに冷たくないですか?」


「殺すぞ!!!!!」


態とだな!?お前、態とやっているな!?

俺は考えながら森本を見る。

森本はピキッと額に#を浮かべていた。

ヤバいんですけど。

殺される。


「へぇ。一緒に寝て、へぇ」


「森本。取り敢えずは落ち着け」


「私は何時も落ち着いているけど。ふーんだ。もう良い。バラそうクラスで」


「それこそマジに俺の居場所が無くなるわ!!!!!ざけんな!!!!!」


森本はつーんとしながら歩き出す。

俺達はその姿を追った。

それから学校に登校して行くと。

何故か俺は中島に空き教室に監禁された。

軟禁とも言えるかもだが。



「アンタが最近、調子に乗っている感じってのは同感なんだけど。優から聞いたけどね」


「.....ああもう。またそれか。俺は何もしてないんだが。あくまで俺は俺自身の事を影響しない範囲でやっているだけだ」


「つーかさ。アタシはアンタをウザイって思っているし。はなっから信用してない。実際の所インシデントかもしれないし」


中島は俺を床に突き飛ばして目の前に仁王立ちする。

俺はその姿を見ながら唇を舐める。

さてどう乗り越えたものか、と思いながら。


そして中島は俺を睨みつけながら、アンタがこの数日間でやった事は良い事かもしれないけど優はアンタの事をかなり疑っているから、と言い出す。

やれやれ。リア充の彼女ってのは従ってのこんなんばっかか。

違うと願いたい。


「遠野もそうだが居場所や人間関係が壊れるのが怖いだけだろ。俺はそこら辺は何もする気はないんだが」


「それもまあそうだけど。先に釘を刺すのは大事だとアタシは思うから。だからアンタはあまりやり過ぎた事をしない事ね」


「リア充に手出しをするなんて恐れ多いんでね」


俺は言葉を発しながら中島を見る。

すると中島は睨みつける様な眼差しのままだったが。

突然、背後を見た。

するとドアが開いてから、やはりここか、と複雑な顔をした羽田と森本が。

俺は、!?、と思いながら見た。


「光。ユナ!?」


「雪子。信頼出来ないのは分かるけどこんな場所に連れて来て監禁みたいなのは良くないよ」


「鍵を借りたんだ。職員室でな。君達の姿が見えないからおかしいと思ってね」


中島は少しだけ唇を噛んでから。

そのまま後にして行った。

俺は、助かった、と思いながら目の前を見る。

すると森本が手を差し伸ばしてきた。

それから、大丈夫?、と聞く。


「まあな」


「すまないな。雪子もそうだが.....」


「まあ気にはなるだろうしな。仕方が無いだろうとは思う」


「でもやり過ぎだね。これは。後で雪子にお説教しないと」


「.....」


中島。

遠野。

お前らの言っている事は分かる。

俺自身が全てを失って来たからな。

友人とかを。


人間関係を壊したく無いのは当然だ。

過剰になるのも当然だ。

だからいつかお互いに面を向いて話せる時が来れば良いが。

思いながら俺は立ち上がりつつ。

そのまま空き教室を後にした。

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