第6話 ニコニコ集金人

 俺は自動販売機で飲み物を買った。


その特典でQRコードを通して映画を観ている。


俺は飲み物を買うとその特典でQRコードを通して映画を観る事ができる自動販売機のサービスを満喫している。


あの日も今日のように自販機の特典で手に入れた映画を鑑賞していた。


ピンポーン


あぁっ、ちょーど良いとこなのに!


でも、俺はどこか少し嬉しかった。


あの女子高生に会えるからだ!


俺はとてつもないウキウキに身を支配されていた。


うぃ〜す


俺は張り切ってドアを開けた。


えっ?


そこにいたのは彼女ではなかった。


見知らぬ女性だった。


集金させて下さい!


ん?


集金させて下さい!


彼女はとにかくメチャクチャ笑顔だった。


無邪気な笑顔だった。


そして、彼女はいきなり台所に入っていった。


何食わぬ顔で入った。


俺は展開の速さについていけなかった。


俺はただボーッと突っ立っていた。


俺の思考は停止していた。


俺の思考は無と化した。



 彼女は包丁を持った。


そして、その包丁を振りまわし始めた。


彼女は笑っていた。


無邪気な笑顔だ。


あまりにも無邪気な笑顔だ!


あそぼ〜よ〜


ブンブン


彼女は包丁を振り回しながら俺の方に近づいてきた。


俺は一瞬にして、我を取り戻した。


くっ、来るな!


あっちいけ!


え〜、い〜じゃ〜ん。


あそぼ〜よ〜。


とても無邪気な声だ。


不気味さはなかった。


しかし、それが不気味だった。


俺は咄嗟の勢いで彼女を張り倒しながら、ドアの外へ追い出した。


俺は恐怖でしばらく固まっていた。


何も起こらなかった。


俺はとりあえず落ち着いた。


 それから数日後、俺はテレビのニュースを観た。


集金人を装い、いきなり家の住人に刃物で襲いかかったようです。


ある女性が不法侵入と傷害罪の容疑で逮捕されたらしい。


俺はあることに気がついた。


そいつはこの前、俺の家に来ていた謎の人物だ。


ピンポーン


ピンポーン


ピンポーン


ピンポーン


俺は背筋が凍りついた。


体が固まった。


俺はドアを開けるのが怖くて仕方がなかった。


あんなに大好きだったはずなのに。


ドアを開けるのが恐怖の対象に変わってしまった。


幸せ集金人はそんな俺の身を案じてくれた。


俺はそんな素敵な人と出会えて心から良かったと思う!


俺はどうにか恐怖から立ち直った。


そこには彼女がニコニコ集金人が怖くて仕方がないという俺の相談に乗ってくれたおかげもある。


俺はニコニコ集金人を恐怖だと思わなくなった。


敵=悪というのはなんか違うと思う。


その謎の集金人にもいろいろあったと思うよ。


彼女はそう言った。


俺は不思議とニコニコ集金人を恐怖だとは思わなくなった。








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