第2話
ぼくらは村で話し合った。
「どうしたら、あの怪物に勝てるかな」
「それは、真理の世界にある本物の完全な剣を手に入れるしかないと思う」
「どうやったら、真理の世界にある本物の完全な剣が手に入る?」
「わかんない。真理ってどこにあるのかな」
プテラはそういって、口をつぐんだ。
真理とはどこにあるのだろうか。
「真理……真理……」
「ああ、たぶん、真理って心の中にあるんだよ。心の中に真理の世界にある本物の完全な剣、イデアの剣があるんだと思う」
ぼくはちょっと驚いた。
「心の中かあ」
ぼくは瞑想した。
この苦しい人生で、ぼくは幸せになりたい。真理なんてどうでもいい。だけど、今は真理の剣が必要だ。ぼくには、真理の剣が必要なんだ。
そう考えていたら、目をつぶっているのに、何かがぼくを呼ぶ感じがした。ぼくは宙に手をのばし、つかんだ。そして、ぐっと引っ張る。
「ああっ」
ぼくもプテラも驚いた。
なぜか、いつの間にか、ぼくの右手に真理の剣、イデアの剣が握られていたからだ。
真理の剣は、透き通るように白い刃をした完全なる本物の剣だった。
「なぜだ。どうしてだろう」
「わからないけど、この世界はいずれ善のイデアに至るというから。神さまの助けがあったのかも」
「善のイデア? 何だい、それは」
「ううん、なんでもない」
プテラははたっと横を向いてしまった。
これで怪物にも勝てる。
ぼくらは翌朝、再び、恐怖の森に入って、洞の中をのぞいた。いる。怪物がいる。赤いグリフォンがいる。
「いくぞ」
「うん」
ぼくらは怪物に襲いかかった。今度はぼくの右手には真理の世界の本物の完全な剣がある。イデアの剣がある。
ずさっ。一振り、二振り。
「それ」
「ぎゃあ」
怪物は完全な剣によって切り裂かれ、傷ついて死んでしまうところだった。
「ははははっ、人間どもよ。よく真理の剣を手に入れたものだな。それならば、我も本当の姿を示さねばなるまい。見るがいい。我が本当の完全なる姿を」
そして、赤いグリフォンは、真っ黒なグロテスクなキメラへと変身した。
「我こそは悪のイデアそのものである。完全なる悪というものを思い知れ」
ぼくはプテラの手をつかんで、逃げ出した。
悪だ。こいつは悪そのものなんだ。
「ダメだ。完全な剣だけじゃ、あいつには勝てない」
そして、再び、森を出て、村に帰った。
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