第4話 子犬の正体とデスゲイズ

 俺様は腐れ縁のみなを引き連れてオーガが潜む迷宮とやらへやって来た。

 首都デーレーから徒歩で半日。朝早く町を出て今は昼を過ぎたあたりだ。


「迷宮探索は久しぶりだなぁ」

 

 アムリタがはしゃいでいる。


「汗をかいたのは久しぶりだわ。早く帰ってシャワーを浴びたいわ」

 

 ルーシャがだらけたことを言っている。


「フッ オーガの棲む迷宮か。久々にオレの剣技けんぎが使える時がきたな」

 

 あんたは拳だろグレイザークよ。


「オレも誘っていただけたのは恐縮ですが上手く戦えるかな〜」

 

 アズマよ。大丈夫だ。冒険の荷物運搬ご苦労さまです。


 俺様たちは昼飯を軽めにすませ、鬼が潜む迷宮へ入って行った。


 迷宮に入ってすぐの場所は開けたホール状になっていた。そして生臭い獣臭けものしゅうと共にオーガが数匹いた。

 オーガは俺様たちに気がつくと手足を地面に打ちつけながら威嚇をしてきた。


「うわあぁぁぁぁ!? 鬼だ!」

 アズマがオーガに恐怖した!

 彼が逃げようとダッシュするのをグレイザークが抱きしめて止め、アズマの耳元にささやく。

「オーガは逃げるやつを追いかける。逃げるな。大丈夫だ。オレ達がいる」


「オーガめ! かかってきなさい! グランネイルのさびにしてあげるわ!」

 ルーシャが嬉嬉ききとして矛斧ほこおのグランネイルを構えオーガめがけて突撃する。


「それ!」

 ルーシャがオーガにグランネイルを突き刺した! 更にグランネイルを引き抜き、もう1匹のオーガを切り裂いた!

 オーガはルーシャの重撃じゅうげきを浴びて絶命する。


「ハハッ。なんだ、オーガは弱いじゃないか」

 アズマが笑顔を取り戻し発言するが「ルーシャの攻撃が強すぎるだけだよ」とアムリタが訂正する。


 そこから戦闘はスムーズに終わり、オーガを退治した。


『キャンキャン』

 犬が鳴いた。


「あれ? デスゲイズ…子犬がいるよ…2匹だ…」

 子犬で何かを思い出したアムリタが怪訝けげんな表情を浮かべた。


「こいつらか。俺様のペットだ。名前はヒエとアワだぜ」


「フッ おまえオレが猫を飼っているから対抗して犬を飼ったのか?」


「違う。ある知り合いにプレゼントされたのだ」

 俺様はグレイザークに反論した。


「ゲイズはペットなんか飼わないと思っていたけどどういう風の吹き回しなんだか」


「ルーシャよ。俺様だってペットぐらい飼うこともある」


 アズマが子犬に近寄り頭を撫でようとした時だった。子犬が「お前。知らない奴だな」「たしかに知らない奴だ」としゃべった。


 アムリタは防御魔法を自分に唱え始め、グレイザークは剣を抜き放ち、ルーシャはグランネイルを構え、アズマは子犬から離れ、俺様は遠い目をした。


「知らない奴にはマラカス音頭おんどだ!」「たしかに知らない奴にはマラカス音頭だ!」

 子犬は意味深なフレーズの言葉を言い放ち、姿をムクムクと変身し始めた…。


「キサマは悪魔キキとカリ!」

 魔界に巣食う上位小悪魔キキとカリに俺様たちは何十年かぶりに遭遇そうぐうした!


 俺様は子犬を送りつけてきたサキュバスのニーナを激しく呪いながら悪魔変身して戦おうかどうしようか悩んだ!


 ルーシャはグランネイルを捨てて逃げたくなったがみんながいればなんとかなると思い踏みとどまった。


 グレイザークは「フッ 」と笑い全力で迷宮の外へ逃げ出していき、それを見たアズマもグレイザークを追って走り出した。


 アムリタは防御魔法の因果律防御いんがりつぼうぎょを唱えたあと転移魔法テレポートを唱え一人どこかに消えた。


 ルーシャはパーティが分散したため、テレポートを唱え、姿を消した。


「いなくなったね」「いなくなったな」

 悪魔キキとカリは俺様以外の連中がいなくなったのを確認すると、俺様に歩み寄って言った。


『キャンキャン』


「茶番はそこまでだ! ウゴゴゴ…」

 俺様は悪魔変身をして悪魔キキとカリを滅ぼそうとした。


「お待ちになって♡ デスゲイズさまっ♡」

 ニーナが現れたのを見た俺様は悪魔変身をやめて話しを聞いてやることにした。


「子犬ラブラブ大作戦はいかがでしたか?♡ 魔界で暇そうにしていたキキとカリの協力を得て、あふれるわたしの思いを表現してみました♡」


「どうだった?デスゲイズ」「どうだったか?デスゲイズ〜」


 俺様は最近不眠が続いていたため、このくだらない作戦を練ったニーナにほとほと愛想あいそがつきた。しかし、近頃なかった刺激もあったのでニーナに「よくやったぞ」と意味深な返答をした。


「はぁい♡ ハァハァ♡ ありがとうございます♡ デスゲイズさまぁ♡ ご褒美をくださぁい♡」


「俺たちにもなんかくれデスゲイズ」「なんかくれデスゲイズ」


「フフ…そうあせるな…キサマらにはこの迷宮を踏破とうはする権利をくれてやろう。もしも迷宮に人間が喜びそうな財宝があったら俺様のもとに持って来い。そうすればキサマらをもっと快楽に包んでやろう」


「ジュルリ♡ ほんとうですか? 快楽〜♡」

「快楽〜!」「快楽ー!」

 3匹の悪魔は迷宮奥深く潜って行った。


「愚かな奴らだ…もしも財宝があれば独り占めだ。フハハハハ!」


 俺様はテレポートを唱えながら「キサマら程度では黄金鬼ゴールドオーガは倒せん。一生迷宮で遊んでいるがいい」つぶやいて自宅へと転移して帰って行った。


 


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る