第2話 デスゲイズ、アムリタに子犬を贈る

 それはとても気持ちがいい朝だった。


 俺様は珍しく早起きをして、デーレーの町を散策さんさくしていた。

 肩で風を切って歩きながら道行くたみに『おはよう』と声をかけながらあるモノを探していた。


「探せば出てこねーなぁ…どこにいやがるんだ」

 俺様が街のあちこちを歩きまわり疲れ果てているとたまたま市バスが来るのが見えたので乗車することにした。


 べー


 ブザーが鳴り市バスのドアが開く。

 客はあまり乗っていない。

 俺様は一番後ろの席に脚を広げて”ドカッ”と座り一息ついた。


 どこまで乗るとかは決めてなかったが、楽だったのでしばらく寝ることにした。

 柔らかいソファと早起きしたのとですぐに深い眠りについた。


■■■■■■■■■


 俺様は闇の中、目を開いた。

 こりゃあ夢の中だとふと思った。


 夢の雰囲気からして魔界まかいの夢だと思った。

 

 久しぶりの魔界か、今はどうなってるんだろうなと遠い意識の中考えていたら


「デスゲイズさまぁ〜ん♪ やっとお気づきになりましたね〜ン」


 この甘ったるい声は…! 俺様が苦手なムチムチボインボイーンのサキュバスだな……!


「ワタシからのプレ・ゼ・ン・ト♪ どうでしたか〜ン」


 プレゼントだと…なんのことだ…


「2匹の子犬ですわ~ン。可愛かったでしょ〜う♪」


 ほっほう♪(怒)

 あの子犬はキサマのせいか!? ニーナよ!


「あ♡ お気づきになられましたわね。デスゲイズたまぁ〜ン」


 あ♡ ではない! キサマのせいで死ぬかと思ったぞ! お仕置き…は逆効果だな…


「お仕置きしてくだたぁ〜い♡ デスゲイズさまぁ♡」


 俺様はもっと体がしゅっとした細身の女のほうが好きだと何回言ったらわかるのだキサマ…!


■■■■■■■■■■


 「む? ニーナ? 逃げやがったな」


 デスゲイズは夢から覚めて、顔を手で拭い大あくびをした。

 

「あの子犬は多分魔獣トコちゃんの幼体だな…さて、探しものの続きをするか」


 ピンポーン


 俺様は市バスを停めるためブザーを押した。

 市バスは次の停留所までゆるゆると走行し、俺様はそこで市バスから降りた。


 すると『キャンキャン』子犬の鳴く声がした。

 

 停留所に2匹の子犬が座って尻尾を振っていた。


「探したぞ…お前たち」

 俺様は子犬を抱き上げ、転移魔法テレポートとなえたが魔法は効果を示さなかった。


「仕方がない歩いて行くか」

 俺様は子犬を地面に下ろしトボトボ歩いて行った。

 子犬はトコトコあとからついてくる。


 俺様は自宅まで歩く道中、アムリタに錬金術携帯電話ズマホで連絡した。


「出ないな。アムリタのやつ。警戒してやがるな…生意気なヤツだぜ」


「ぷーぷーぷー。現在、このズマホは使われて、おりません」

 アムリタが電話に出たがあからさまな居留守いるすを使いやがった。


「キサマ…居るではないか、ようく聞け! キサマは今日が誕生日だ」


「何言ってるんだデスゲイズ。今日は私の誕生日じゃないよ」

 アムリタが通話に応じた。


「誕生日だからプレゼントをやろうフハハハ」

 俺様はニヤニヤしながらアムリタと話した。


「プレゼント? いらない。じゃ切るねー」


「まてまて! キサマがノドから手や足が出るほど好きなモノだぞ!」


「自分で買うからいいー」


「何かヒントをやろう…"ニヤニヤ" 小さくて可愛いものだ」


「そう言ってまたビバちゃん人形だろ? その手には乗らないよ♪」


 俺様は立ち止まって子犬が鳴く声をズマホでアムリタに送った。


「犬? 鳴き声からしてまだ小さい? 子犬くれるのか? デスゲイズ」


「当たりだ。誕生日おめでとう」


「…普通の子犬だよね。念のため」


 俺様はドギマギしながら「あたりまえだ! 何を言ってる!? 可愛い2匹の子犬だぞ」


「ふーん。2匹とか言って頭が2つある子犬じゃなきゃいいけどね」


「キサマ。大丈夫だ…もうしばらくして首都デーレーにある俺様の自宅で落ち合おう」


「なんで? ザルカスの町とかもう少し私から近いところでいいんじゃないか?」


「ダメだ。誕生日パーティの段取りがあるから、俺様の自宅まで来い」


「ふーん。なんか怪しいけど暇だから行ってあげるよ」


「よし。ならばへそで茶をわかして待っていよう」


□□□□□□□□□


 しばらくしてデスゲイズが自宅に戻ると、既にアムリタは家の軒先で待っていた。


「おっそいよ! 何で歩きなんだ? デスゲイズ」


 プリプリと怒るアムリタに「散歩帰りだ。たまには運動をしなくてはな」と答えた。


『キャンキャン』

 子犬が鳴き、アムリタが言う。


「あれ? なんか犬が鳴いたけど、どこにいるんだろう…」

「俺様の後ろに2匹いるではないか」


「なんか不気味だな。デスゲイズ、やっぱりその子犬いらないよ」


 俺様は手をすり合わせペコペコしながら「そんなことを言わず、もらってください…」と懇願こんがんした。


「じゃあね! デスゲイズ」

 アムリタはテレポートを唱えて俺様の前から消えていなくなった。


 俺様は子犬を追い払いながら自宅のカギを開けて中に入り厳重にカギをかけた。

 そしてベッドに寝そべり布団をかぶり寝込んだのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る