夏色の嘘
木島別弥(旧:へげぞぞ)
第1話 夏色の嘘
「七月は勇太くんと無人島に行きました。だけど、無人島には、古代から生きのびつづけてきた古代人の末裔が隠れ住んでいて、わたしたちに襲いかかってきました。やりとかナイフとかが飛んできて本当に危なかったけど、勇太くんが勇敢に戦って古代人を追い払い、わたしたちはなんとか助かりました。
そのあと、この島には秘密があると気づいた勇太くんは、山や森を走りまわって、古代人の巨大宮殿を探しあてました。わたしは何もできずにびっくりしていました。勇太くんが秘密の通路を通って巨大宮殿に侵入しようとしたので、わたしもついていきました。秘密の通路には、古代人の飼っている巨大大鷲が巣くっていましたが、勇太くんがやっつけました。勇太くんは本当にすごいです。
奥の間に辿りつくと、古代人の奴隷たちがいて、勇太くんの体をむりやりとりおさえて調べました。すると、それで勇太くんが古代人の血を引いていることが分かり、勇太くんは古代人の王になりました。大勢の古代人に大歓声で迎えられた勇太くんは、古代人たちを教え導くために、島に残ることになったのでした」
栞ちゃんが夏休みの日記を発表すると、みんなどよめいた。
それで勇太くんは学校に出てこないんだ、と先生は思った。
さらに、栞ちゃんがいうには、勇太くんは栞ちゃんをお嫁さんにもらうと約束したので、栞ちゃんはまた来年、無人島に戻らなくてはならないのだという。
栞ちゃんの日記は絶賛を浴び、栞ちゃんはいつものように笑顔をふりまいて学校から帰っていった。
だれも気づかなかった。
嘘なのだ。
無人島に古代人はいなかった。
勇太くんが帰ってこないのは、栞ちゃんが帰れなくしてしまったからだ。
夏の無人島に、勇太くんの死体が浮かぶ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます