第4話 聖女の周囲
その影響は徐々に色濃くなっていく。
アウルはもうアリエスに悪戯をしてはいない。
アウルはアリエスに恋をしたのだ。それも悪戯もできないほど強烈に。
それはアウルの友達、リッツも同様。
私は一年前、独りぼっちで可哀想なアリエスを少し気にかけてあげてほしいとお兄様に言った。
今ではその優しさめいたものを後悔している。
ついにお兄様までも陥落し、最近ではご友人のライド様までもアリエスにご執心のようだ。
そして、アリエスの魔手はロスター様にまでおよんでいる。
私は眩暈がした。
アウルはあの娘の気を引くためスポーツ等で良い所を見せようと必死になっている。
リッツはあの娘を恋人のようにエスコートして周囲を牽制することに躍起だ。
お兄様はお父様の跡を継ぐ勉強のための留学を取り止め、あの娘の近くにいようとする。
ライド様はあの娘を社交界に連れて行って自分の物であるかのようにアピールしている。
ロスター様は勉強を教えるということを口実にあの娘と二人きりになろうとする。今までそんなことは誰にもしたことはなかったのに。あれだけ強く賢い女性になれと言っていたのに、結局は女性らしく、少しドジなところのあるアリエスに特別な愛情を注ぐのだと思うと気分が悪くなる。ロスター様はもう私の憧れたロスター様ではなくなっていた。
なんて醜いのだろう。
私が幼い頃から憧れていた男性はこんなにも浅ましかったのだと思い知らされた。
そして、周囲の男性が狂うと私の友達にも影響が出てくる。
ライザはアウルがアリエスにばかり構うようになってしまって露骨に落ち込んでいる。その表情はまるでこの世の終わりを迎えているかのようで見ていられない。
アンナはリッツを諦めることができたようだが、そもそもこの西アルグ地方の男性の全てがアリエスに骨抜きにされているものだから、男性というものに幻滅したようで妙な趣向に走りそうで不安だ。
だが最も不憫なのはリィズだろう。
リィズはロスター様の理想の女性になろうと一生懸命学び、女だからと軽んじられることはもうなくなった。だが男性に引けを取らぬ強い女性になったリィズは今や社交界で疎ましく思われるだけの存在になった。
ロスター様に裏切られたことに心を病んでしまったリィズは家に引きこもってしまった。この前会った時はあの聡明なリィズの面影は全くなく、それは酷い有様だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます