ミクリはペテン師 3

 お世話係のミクリは幼稚園から呼び出しを受けました。


「本当に……申し訳ありませんでした!」


 幼稚園の関係者達へ深々と謝罪をして回るミクリ。


 一方で不機嫌そうにぶすっと頬を膨らませて無言を貫くカレン。


「ほら、お嬢様も謝って下さい。危害を加えたんだから当然ですよ」


 無理やりカレンの頭を降ろさせます。


 するとカレンの組を担当する教員は慌てて頭を上げさせました。


「そ、そんなそんな……頭を上げて下さい。園内での魔法の使用は禁止しているので……それを見落としてしまったこちらに非があるんです。それにカレンちゃんの暴走はすぐに止めたので他の園児たちに怪我は無かったんです」


「でも物損はあったんですよね? 本当に申し訳ございませんでした!」



 ◇ ◇ ◇



 帰り道のリムジン内でミクリは未だ不機嫌なご令嬢へ尋ねます。


「で、お嬢様……何であんなことしたんですか?」


「…………」


「言わなきゃ分からないですよ」


「…………」


「あの魔法・・、披露したそうですね。お友達が上手だったって言ってましたよ。凄いじゃないですか」


「…………」


「もしかしてそれを馬鹿にされたから怒ったんですか?」


「……違う」


 ようやく重い口を開いたカレン。


「じゃあ、どうして?」


「みんなミクリの事をペテン師だって言った」


 ミクリはこの時初めて、カレンが幼稚園で暴れた本当の理由を知りました。


「へ? もしかして私の為に怒ったんですか?」


 すると黙ってこくりと頷くカレン。


「お嬢様……どうしてそんなことを……。だって私がいつも周りを怒らせてばっかりのしょうもない人間だって……お嬢様が一番分かっているでしょう。たかが使用人なんかの為に――」


 ”たかが使用人なんかの為に怒る必要なんてない。”


 そう言おうとしたミクリの言葉を遮るようにカレンは叫びます。


「たかがって言わないで! ミクリは凄い魔法使いだもん! わたしの大好き…………なんだもん」


 それを聞いたミクリ。


「お゛嬢゛様゛~!! うおおおおお~! おおおお!」


 こんな嬉しいことを言われたら……もう、泣くしかありません。


 カレンを強く抱きしめました。


 すると……。


「わあああん! ミ゛グリ゛~! ごめ゛ん゛な゛さ゛い゛~!!」


 思わずカレンも泣き出します。


 その様子をバックミラー越しに見ていた運転手の目からも……自然と涙が零れ落ちるのでした。

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