第17話

 (※ゲイブ視点)


 また、負けてしまった……。


 どうしてだ?

 どうして私は、奴に勝てないんだ?


「いやぁ、また勝っちゃいましたよ。あなたもすごいですよ。よくそんなに連続で負けられますね。ある意味それも、才能ですよ」


 俳優気取りの若造は、にやにやと笑いながら、私を馬鹿にして来ていた。

 しかし、悔しいが、何も言い返せない。

 何度やっても、奴にカモにされてしまう。

 次こそは勝てると思っていたのに、また負けてしまった。


 そして、私はまた、借金を背負ってしまった。


 しかし、これだけ大金を取られたら、もう後には引けない。

 奴に勝って、負けた分を取り返すまで、私は引くつもりはなかった。

 まあ、とりあえず今日のところは引くしかないが、彼に金を借りて、すぐにまたリベンジしてやる。


 そうだ、彼にはもっと、金を借りよう。

 

 今までは、借金分の金しか借りていなかったが、もっとギャンブルができるように、さらに借りればいいのだ。

 そうすれば、奴に勝つまで、何度も勝負を挑める。

 

 よし、そうと決まれば、また明日、彼を呼び出そう。

 しかし、それが、最悪の選択だったことを、この時の私はまだ知らなかった……。


     *


 (※バレリー視点)


 ジョエルがまた、コソコソと出掛けて行った。


 私は気付かなかったふりをして、窓からこっそりと行き先を確認した。

 

 そして、距離をとってこっそりとあとをつけた始めた。

 さて、浮気の現場を抑えてやるわよ。

 そして、証拠を得て、慰謝料をたっぷりと請求してやるわ。


 それにしても、彼が浮気をするなんて思っていなかった。

 彼はお姉さまと別れてまで、私を選んだ。

 だから、私に夢中だと思っていた。

 それなのにまさか、浮気をするなんて……。


 相手はいったい、どんな女なの?

 まあ、よほどの美人なんでしょうね。

 もちろん、その女からも、慰謝料を請求してやるわ。


 私は、彼にバレないように、距離をとって慎重にあとをつけていた。

 この方向は、彼が経営している病院がある方向だ。

 そして、どんどん病院に近づいている。

 とても、偶然とは思えない。

 まさか、あの病院の看護師と、浮気していたの?


 絶対にそうだ。

 しかも、病院で密会するなんて……。

 でも、誰もいない病院なら、浮気現場を目撃される心配もない。

 その辺の宿屋で密会するよりも、安全だ。

 もし入るところを見られても、仕事があったからと言い訳できる。


 ジョエルは、病院の中へ入った。

 私も、中へ入った。

 彼は、暗い廊下を進んで行く。

 私も息をひそめて、彼のあとをついて行った。

 そして、彼はある部屋の前で、足を止めた。


 私は少し離れたところから、その様子を見ていた。

 彼は大きく深呼吸をして、その部屋に入った。

 私はそれを核が部屋に入ったのを確認した後、その部屋の扉に近づいた。

 そして、ゆっくりと扉を少しだけ開けて、廊下から部屋の中の様子を確認した。


 そこには、驚きの光景が広がっていた。

 彼が密会していたのは、看護師ではなかった。

 彼の向かい側にいる人物は、この病院の院長である、ゲイブだった。


 嘘でしょう!?

 ジョエルの浮気相手がまさか、男だったなんて……。

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