第40話:情熱はまるめてこねて10
そして秋のお月見だんご大会当日。
ビターたちは大会会場へ来た。
「ていうかなんだよこの格好!?」
会場に到着した途端ビターたちは大会の係員に『じゃあ正装に着替えましょうねー!』と一人につき二人がかりで連行され更衣室で着替えさせられた。
そして現在着なれない服を着させられ突っ立っている。
「“着物”っていうこの国の正装だよ。大会では着物を着て参加するのが決まりなんだ。似合ってるよ!」
そう言ううるちも袴スタイル。さすが地元の人間。なかなか粋だ。
「スースーするぜ」
袖はぶかぶかで手を挙げると肘まで下がってくる。黒い裾の広がったズボンのようなものもスースーして落ち着かない。
「私たちのは華やかなかんじね!」
「“着物”っていってねお正月、年の始めの行事にも着るんだ」
メルトの着物は赤色をベースの生地には椿の花が咲き誇り金色の帯が締められている。
「フィナンシェのは
「ほほう」
フィナンシェは紫色の羽織を着せてもらっている。ご丁寧に頭には捻り鉢巻まで。
会場を見渡すと他の参加者も普段より豪華な衣装に身を包んでいた。
「しかしあんたってば異様に似合いすぎてるっていうか……」
「サマになりすぎてますね。
「うるせェ」
確かにビターだけ会場で浮いていた。
リーゼントに紋付き袴は迫力がありすぎるのかビターたちの周りだけ明らかに人口密度が低かった。
会場はみたらしの園の奥に聳え立つお城……の前にある広場。
広場には銀杏の樹が植えてあり下の地面は金色の絨毯で覆われている。
「おー並んでる並んでる」
そして広場の中央には簡易的に設置された釜戸が五つ。その釜戸を挟むように五つの調理台が左右に二列ずつ、計二十個並んでいた。
調理台正面には審査員が座る特別席の長テーブルが設置されている。純白のテーブルクロスに花を生けた豪奢な花瓶まで、かなりのVIP待遇だ。
「ここに姫様たち審査員が座るんですね」
「私も姫なんだけど」
「お前はあくまで参加者の連れで一般人。無礼がないように気をつけろよ」
「ぶぶー」
「あ、親父だ」
近くで歩いていた大将にうるちが声をかける。
「親父! 今日は負けないよ!」
「俺も! 大将に教えてもらった実力試させてもらうぜッ!」
「ふん……オメェら今日は容赦しねーからな」
弟子たちの宣戦布告に大将は僅かに笑みを浮かべた。
『まもなく開会式が始まりまーす! 参加者の皆さんは広場入口まで集まってくださーい!』
呼び掛けをする係員らしき男の口元にはラッパのようなものがあり、そこから男の声が大ボリュームで広場に響き渡る。
「うおッなんだ!? ラッパみたいのからデケー音が!」
「“メガホン”だね。遠くにも聞こえるように音を大きくできる魔法アイテムさ。ここから北西にある
「け、けっこう進んでんだなみたらしの園」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます