誇大表現にご注意を!

柄山勇

第1章  

第1話  まず初めに 


 高校生。それは人生の踏み切りを選ばされる分岐点に過ぎない。人を蹴落とし蹴落とされ上がってきた道のりは到底楽ではなかったはず。

 本当なら自分のやりたい道を進みたかった。美術高校に進学して絵を描いたり商業高校に行って華やかな高校生活を送りたかった。親のひかれたレールの上でなく迷いながらでも足を踏み出す勇気を与えてくれた己の道の上を歩きたかった。


 勉強なんてしたくなかった。それよりもずっと絵を描いていたかった。ピアノを続けたかった。もっともっと自由に過ごしたかった。


 だから…だろうか。


 「ここから先は君の人生みちだ。誰にも咎められない自分だけのための終着点を決める場所なんだよ」


 そう言われた時、思わず目元から水滴が垂れた。だってそれは、


 


 私が一番聞きたかった


 



 言葉なのだから。






   〜〜〜






 「ねえ美夜、聞いてるの?」

 「え、あ、うん聞いてる」


 完全に上の空でした、などと言わずにクラスメイト津付蓋丹生つづかさにいの話に相槌を打つ。

 私立青谷畑しりつあおやはた高校。ここの入学式が始まってまだ二ヶ月ちょっとしか経っていない。知らない人に話しかけれない私、永山美夜ながやまみやにとって丹生の存在は食事時でいうと完全に箸だった。

 友達という概念が小中通してお粥以上に薄味な自身にとっての初めての同性。昔の私なら聞いただけで飛び跳ねそうな事実だが彼女がどう思っているかは定かでない。よってここで交流を深めることで彼女との仲は親密になり時期に他の人も寄ってくると予想を立て彼女の話に食いつく。


「えっと、それで丹生は何にしたの」

「私はサッカー部のマネージャー。体験?っていうのかな、それに行ってみたんだけど先輩たちが、もうとーってもカッコいいの!! 練習も結構シビアでさ、顧問の先生が見てないのにどの人も汗かきながら一生懸命試合してるの! 中学校とは大違いでさ……」


 ああ、だめだ。丹生に部活の話題振ったら私が延々と話を聞くハメになる。元々は二ヶ月がたって部活に入ってない私を甘んじて言ってくれたことなのに。

 心ではそう思いながらも他人事ではない話に私も改めて考える。


ーーでも本当にどうしよう。他人の世話なんて意地でもしたくないからマネージャーは無しで、うーん活動多そうな運動部は嫌だな。なんか汗臭そう。となれば文化部一択なんだけど…。


 「ねえ、この学校の文化部ってどんな感じだっけ?」


 話が一通り終わったタイミングで丹生に話しかける。すると、驚いた表情でこちらに向き返っていた。


 「え、美夜。文化部入るの?」

 

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