第39話 やっぱり性奴隷を買おうと思う

俺はアリーと冒険を楽しんだ後、一人路地裏を歩いていた。


目的はアリーと出会って頓挫していた性奴隷を買うためだ。


アリーと一発アンドヤリ逃げが出来る気がしない。


最近アリーと仲良くなって来て、ちょっとだけ抵抗もある。


それに俺……肝心な時にヘタレになるみたい。


ならば最初からご奉仕することが義務である性奴隷を購入すればいい。


女の子をこき使って、夜のご奉仕させるという俺の夢が叶う。


俺って最低だな。


でも、俺の中にある衝動は止められなかった。


女の子への恨み、復讐心。


その原因は幼馴染のクリスに裏切られたことだろう。


でも、俺ってこんな鬼畜な人間だっけ?


そんなことを思っていると、奴隷商の店に行きついてしまった。


俺はゴクリと唾を呑み込むと、奴隷商の店に入った。


「これは冒険者のお客様ですかな? 今日はどう言った品をご希望ですかな?」


「ああ、戦闘力のある強い仲間としての奴隷を探しているんだ」


性奴隷を探してるんじゃないのか?


ていうツッコミがあると思うけど、本屋でいきなりエッチな本のコーナーへ行かないよね。


それと同じだ。


あくまで偶然を装い、目に止まった可愛い性奴隷を買うんだ。


「戦闘力ですか? それならお任せ下さい。当店はそちらの方は得意分野です」


「宜しく頼む」


そうして俺は全く興味のない戦闘奴隷を見た。


奴隷にも色々種類がある。


戦闘奴隷、汎用奴隷、特殊技能奴隷、重労働奴隷、そして性奴隷だ。


奴隷は人権を剥奪された人や亜人だが、別に罪人という訳ではない。


主に飢饉の時などに売られた子供が中心だ。


奴隷商はこれらの子供を育てて販売用の奴隷にする。


もちろん大人が売られることもあるが、それは珍しいし、大抵が犯罪に巻き込まれて売られた被害者なことが多い。そもそも大人は買い手がつかない。


俺は師匠のところで本で読んだが、奴隷という制度は必要悪らしい。


本来ならこんなシステムはいらない。


単純に金を出せば人は雇える。エッチな方向もそうだ。


しかし、飢饉の時、飢えた民は食い扶持を減らす必要がある。


だから労働力として劣る子供を泣く泣く奴隷商に売る。


このシステムが無いと飢饉の時に親は自らの子を手にかけるか、全員餓死する。


「う〜ん。イマイチこれという奴隷が見つからないなぁ〜」


俺はわざとらしく奴隷商に目星がつかないと言った。


もちろん、奴隷商に、それなら性奴隷はどうですか? と言わせるためだ。


奴隷商もわかる筈だ。


俺は紳士なのだ。奴隷商が紳士への対応がわからない訳がない。


「そうですか……それは残念です。なら、趣向を変えて性奴隷をご覧になりませんか?」


「性奴隷か……しかし体裁がな」


「まあ、そうおっしゃらず、せめて見るだけでも」


よしゃ! さすが年配の奴隷商。よくわかっている。


俺は紳士なのだ。紳士は偶然紹介された可哀想な性奴隷を購入しなくてはならないのだ。間違っても、エロい気持ち100パーセント全開で買ったりはしないのだ。


そして、カーテンで仕切られた部屋へ通される。


仕組みがレンタル屋のエロビデオコーナーと同じだ。


俺は目を奪われた。


みんな可愛い。


性奴隷は身体が資本だ。だから皆着飾っている。


お化粧もして、綺麗な服を身につけている。


布面積が少ないのは言うまでも無い。


「ご希望の商品がございましたら、身体のチェックのため、裸にすることもできますぞ」


何?


それは素晴らしいシステムだ。できるだけたくさん見とこ。


そんな時、俺は一人の性奴隷に目が止まった。


いや、すごく可愛いとかじゃなくて逆だ。


性奴隷なのにみすぼらしい服、化粧もさせてもらっていない。


奴隷は基本、一生奴隷だが、例外もある。


例えば主人に認められて平民に戻るとかだ。


性奴隷と言っても、人間なのだ。


そういうこともある。


つまり平民になって主人と結婚するとかだ。


むしろ、それが意欲増進となって奴隷たちの勤労意欲が上がる。


他の種類の奴隷についても同じだ。


主人も人間なのだ。気に入ったら平民に戻してやることもある。


もちろん、高い金を出して購入した奴隷を簡単に平民にすることは滅多にないが、国も鬼では無いのだ。それに奴隷を平民に戻すと税を軽減するとか主人にもメリットがあるように考えられている。


だが、この奴隷は変だ。奴隷商にとって性奴隷は早く売った方がいい。


性奴隷は女性がほとんどだ。従って若いうち、つまり早く売った方がいい。


いれば食事はするし、購入した費用回収が遅れるのだ。


だから性奴隷をこんな扱いするのはあり得ないと思う。


「その性奴隷は?」


「ああ、この奴隷は……お優しいのですな。こんな奴隷に興味を持つとは。この奴隷は性格が悪すぎて、今日売れなかったら……まあ、おわかりでしょう」


俺はゾッとした。


基本、奴隷と言っても最低限の人権がある。


殺したり、傷つけたりすることは禁止されている。


発覚すればもちろん処分を受ける。


殺人とあまり変わらない強い罰だ。


だが、俺の本で読んだ知識だと、密かに奴隷が処分。


つまり殺されてしまうことはある。


奴隷はモノなのだ。だから売れ残ると不良在庫になる。


だから、リスクを承知で奴隷商が毒などで処分することがある。


「だが、この子はこんなに痩せて、服だって不公平じゃないか?」


「当店は奴隷が素直に販売に協力するなら相応の協力はしますが、そうでないモノには」


そうか、従順な奴隷には良くしてやり、そうでない奴隷には厳しいということか?


「そろそろ、見せしめが必要な時期でしてな」


うっ!?


そうか、従順でないとどうなるのか?


確かに合理的だ。


そして。見せしめとはつまり。


「この子はいくらだ?」


気が付いたら俺はその性奴隷を買っていた。

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