経験値10000倍~ハズレスキル放置プレイヤーが覚醒したらレベル上限なし! 最強で最速のレベルアップ、俺は隙間時間を利用して世界最強に成り上がる~
島風
第1話 追放と裏切り
「アル。悪いがお前はクビだ」
勇者エルヴィンの放った一言で俺は頭が真っ白になっていた。
彼はいつものように俺を馬鹿にした目で見て、薄ら笑いを浮かべている。
「どうしてだ! 俺は自分の仕事をまっとうしてきたじゃないか?」
「はぁ? どうして? そんなこともわかんないのか? お前が使えないからに決まってるからだろ」
俺なりにパーティに貢献していたつもりだった。それなのに。
わかってはいたんだ。最近の俺はあまりパーティに役立っていない。
俺はハズレスキルで、戦闘では落ちこぼれていた。でも。
「だが、与えられた仕事はきちんとこなしてきただろ? 最初からそういう約束だったじゃないか?」
「笑わせるな! お前ができることなんて偵察くらいだろうが!!」
俺は謎のジョブ【ラプラス変換】を女神より与えられたが、宿ったスキルは【スライム召喚】のみ。だが、俺のスライム召喚はスライムをダンジョンやフィールドで偵察役として、とても重宝していた、最初は。
スライムは最弱の魔物。だから戦闘ではほとんど役に立たない。もちろん俺自身の戦闘力も他のメンバーとの間に圧倒的な差が生まれてきていた。
だが、こうなることは最初からわかっていた。それを踏まえて偵察役として、この勇者パーティに採用されていた。
「他のみんなも同じ気持ちなのか?」
きっと、他のみんななら俺を引き留めてくれる。
そうかすかに思った。
だが。
「僕もエルヴィンの言う通りだと思うの。アルの能力ではもうこのパーティーでは無理よ。こんなに差が開いて、まだわかんないのかしら?」
「ナディア……?」
聖女のナディアが冷たい声で勇者エルヴィンに賛同する。
「……そう、ね。いくらなんでもスライムしか召喚できない上、個人の戦闘力が冒険者より弱いんじゃ、あたしもダメだと思うな」
続いて煉獄魔導士のアンネ。
そこに俺が唯一心を許せる幼馴染のクリスが割って入ってきた。
「ま、待ってよみんな! アルを追い出すなんて……!」
「オレだって好きでアルを追い出すわけじゃないんだ」
「じゃあどうして!」
「じゃあ? それじゃ逆にクリスに聞くがな、アルは最近偵察でも戦闘でも活躍したか? 偵察なんてしなくても、いつも楽勝だっただろ?」
「そ、それは……」
俺を唯一擁護しようとしてくれた幼馴染の女の子、クリスの言葉に嗜虐心をたたえて薄ら笑いで答えるエルヴィン。クリスじゃなく、俺を見ながら。
そして……俺を唯一擁護しようとしてくれたクリスも、エルヴィンの言葉に言い淀む。
そう、今の俺のスライムによる偵察は意味をなさない。最近は俺のスライムによる偵察なんて行っていない。
優れたジョブに恵まれた4人は初見の魔物でも、圧倒的な能力で魔物をねじ伏せる。
早い話が、皆強くなり、俺のスライムの偵察も足手まといの俺の戦闘力も必要ないのだ。
エルヴィンは更にクリスに問いかける。
「今日もクリスがアルを庇って、クリス自身が怪我をしたよな。……なあクリス、これ以上こいつを庇っていると、お前もアルも死ぬぞ」
「……」
俺はたまらなくなった。このままじゃ幼馴染のクリスにまで見捨てられてしまう。
「ク、クリス!?」
「きゃあ!?」
俺がクリスに詰め寄ると驚いたのか悲鳴をあげて俺を突き飛ばしてしまう。
それはクリスにとっては軽く突き放した程度のことだったのだろう。
だが、俺は激しく吹き飛ばされて、宿のロビーの壁に激しく打ち付けられた。
「ギャハハはぁ!? 女の子にちょっと突かれただけで吹き飛ぶとか笑えるんだが!!」
「はぁ……本当に残念だね。流石の僕も落胆を感じえないよ」
「ふふふっ!! やっぱりアルはクズね。無様でエルヴィンとは大違い!」
俺は激しく痛む体をなんとか起きあがらせるが。
「まあ、みんな、俺と比べるなんて可哀想なことするなよ。勇者の俺とスライムしか召喚できない奴を比べるとか、もうそれ、いじめだろ?」
「だね。僕、反省したよ」
「エルヴィンはやっぱりすごいわ。こんなゴミのこと気遣って。それに比べてアルはカスね」
俺は幼馴染のクリスを見た。彼女は下を向いて、何も言わなかった。
「じゃ、そういう訳だから、明日からお前はどっか行け、二度と俺たちに近づくんじゃないぞ。あと、俺たちの名前出していいようにするのもやめとけ。わかってるな?」
「あ、ああ、わかったよ」
そうして、心の底から落ち込んだ俺は宿の自分の部屋に戻った。流石に今日はこの宿に泊まれる。明日から路頭に迷うことになるのだが。
その時、部屋の外に気配がした。ドアを開けるとドアの下に紙切れが置かれていた。
紙を拾って読んでみると、クリスからのメモだった。
『今晩、いつものところで会お』
俺とクリスは幼馴染なだけでなく、子供の頃から将来を誓いあっていた。
クリスだけは俺を馬鹿にしなかった。
いつものところというのは俺が落ちこぼれ始めた頃から二人きりでこっそりあっていたダンジョンのそばだろう。クリスはいつも俺を励ましてくれた。
クリスは一体俺になんの用があるのだろうか?
お別れをしたいのかもしれない。ずいぶんと差がついてしまったが、クリスだけは俺のことを考えてくれたんだろう。
ああ、勇者パーティが結成されたばかりの頃が懐かしい。
あの頃は俺もみんなの役に立って、クリスも、ナディヤもアンネも俺のことを褒めてくれた。最初はスライムの偵察はとても便利だったんだ。
俺は幼馴染のクリスとお別れをする為、約束の場所に向かった。
ダンジョンの奈落の底を見渡せる崖の近くだ。
「よく来たな、アル」
「っ!?」
背後から突然声をかけられてが、俺は驚いていた。
何故なら、声はクリスではなく、勇者エルヴィンのもの。そして振り向くと、やはりエルヴィンが立っていた。
ここは俺とクリスだけが知っている秘密の場所の筈、何故エルヴィンが?
一瞬疑問が湧いたが、答えは簡単にわかった。
「アル、悪いが俺とクリスの為に死んでくれ」
「ぐあっ!?」
エルヴィンに激しく殴りつけられる。
次の瞬間、俺は顔面から地面に突っ伏していた。
ドガン!! ガン!!
激しい音が響く。エルヴィンが俺の襟を掴んで殴りつけてきた。
激痛に耐えながら、必死で叫んだ。
「な、何をするんだ!」
「何って、さっきまでは一応仲間だったから遠慮してたがな。俺はお前みたいに弱い奴を見てると虫唾が走るんだよ!! この軟弱野郎がぁ!!」
チクショウ。俺だってお前みたいなスキルが欲しかったさ。
でも、だからと言って、こんなのあまりに理不尽だ。
なんでこんな目に合わされなくちゃいけないんだ?
エルヴィンは俺の首を掴むと、俺を片手で簡単に持ち上げて崖から奈落の底に差し出した。
「お前とクリスは将来を誓いあってたろ? だからクリスが気持ち悪がってな。いい加減わかるだろ? 俺とクリスの関係が? お前は邪魔なんだよ」
「ち、ちが」
「お前、馬鹿だな。クズのお前とクリスが釣り合う訳がないだろ?」
そんな筈はないと言いたいが、首を絞められているため満足に声が出せない。
「クリスはな、いい加減察してどっかに行って欲しいのにいつまでもパーティにお前が居座るから、すっかりお前のことが嫌いになったんだ」
「ち、ちが!?」
「はは、今日もついお前が気持ち悪くて突き飛ばしてしまったんだ。お前をパーティから追放しようと言い出したのもクリスなんだ。それに……お前を始末して欲しいこともな。俺も本当はこんなことはしたくないけど、クリスの為なんだ」
「ち、ちがうっ!」
俺はかすれた声絞りだしていた。クリスはそんなことは絶対言わない。
俺の気持ちが分かったのか、エルヴィンは歪んで笑みで俺の目を見た。
「なあ、なんで俺はこの場所を知っているのかな? クリスに聞かないとわかる訳がないだろ? クリスはな……俺にお前を殺して欲しいって頼んだんだ」
「……う、嘘だぁ!!」
細く枯れた声が出た。確かにこの場所は俺とクリスしか知らない。
……クリスが俺を。
「じゃあ、そういう事だからな」
ニヤリと半笑いを浮かべ、エルヴィンはそう言った。そして、俺は落ちていった。奈落の底へ……何処までも。
俺は死ぬんだ……。
その時何故か天の声が聞こえてきた。
パーティ解除を確認、隠れスキル、ステータス全員10倍のスキルを解除します。
パーティ解除を確認、隠れスキル、経験値全員10倍のスキルを解除します。
パーティバフの犠牲処置、本人ステータス1/10を停止します。
パーティバフの犠牲処置、本人経験値1/10を停止します。
そして、俺は生きていた。そして…目が覚めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます