600文字以内で繋ぐ短い物語
香座未 裕
夜景とカフェオレ
夜。彼女の誘いで行った散歩の帰り道。疲れたと騒ぐ彼女をなだめるために、ファーストフード店に入った。
「カフェオレ一つ」
「んー、私はメロンソーダとチョコパイで」
よくそんなに食えるなと思いながら、カードで支払う。階段を上がった二階の飲食スペースへ行き、窓際の席に座った。
「綺麗だね」
街のネオンを眺めながら、心のこもっていない彼女の声がした。僕は何も言わずにカフェオレを一口飲む。絶妙な甘さと苦さが口に広がった。
「あ、そーだ」
彼女はおもむろにスマホを取り出して、夜景と、カフェオレを持つ僕の手元を写真に収める。彼女の微笑みが窓に反射した。僕もつられて笑顔になる。
「なに?」
「なんでもないある日の記念に」
「そう」
僕はまた一口カフェオレを飲んだ。少しだけ、甘かった気がした。
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