美風
「そこの可愛らしいお嬢さん、待ってくんなまし」
蜜のように甘くて、色気のある声がした。
女の人がいた。
高い下駄。たくさん和の柄が入った、美しい着物。髪は高く結ってあり輝く髪飾りで溢れており、おしろいのせいもあって、目元と唇の真紅の化粧がとても映えていた。
よく見ると、目元はチューリップのような明るい赤色で、唇はバラのような真紅だった。
その女の人は、なんというか、「美しい」って言葉では足りないくらい美しい。
年齢は20歳前後だろうか。とても大人びて見える。
雨宮とかいう人とはまた別の美しさ。
その女の人が妖艶な微笑みを浮かべ、下駄をカランコロンと鳴らしながら、こちらに歩いてきた。
「突然の訪問、おゆるしなんし。あちきはお嬢さんに話があって来んした。しかし、ここはちと騒がしい場所でありんすね。場所を変えんしょう」
女の人がパチンと指を鳴らすと、目の前が真っ暗になって、私の意識は底なし沼に落ちていくように遠のいていった。
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