第18話 痛い目を見た話
うつ症状がひどくなってから薬の量が増えたのだが・・、
それから3週間が経ち、私は再度、薬を貰いに病院へ行った。
「先生、私はもう働けますか?」
症状はだいぶ軽くなっていたからだ。
先生は私の顔をじっとみて、即答した。
「まだ無理ね。あなた、年末どんだけひどかったか、覚えてないでしょ!」
先生が半分怒ったように強い口調で言う。
「あなたは泣きまくってたわ。薬を増やすわねと言った時、いつもなら反対するあなたが、はいって素直に言ったの覚えてる!?きっと、覚えてないわよね。それぐらいひどい状態だったのよ。今は症状が落ち着いてきたってだけ。まだ完璧には良くなってないのよ。薬で症状が落ち着いてきた状態って事。分かるかしら。」
「・・・はい。そしたら、まだ働けないって事ですか・・ね?」
「そうよ。無理よ。まぁ家庭の事情もあるだろうから、せ・め・て!後1か月は働かないで欲しいわね。」
「そうですか。」
「もちろん、1か月後の状況にもよるわよ。あなたがまだ働く自信が起こらない。もしそうだったら、それはまだ働けないって事よ。いい?何度も何度も繰り返し言うけど、焦らない事!!!いいわね。」
「ハイ。」
あぁ、無理だったか。
でもこそっと働いてもばれないんじゃ?
私はそう思い、携帯で在宅でできそうな仕事を探した。
やっぱりまだ、人と一緒に働くと言うのが怖い。
それは、トラウマにもなってしまっているのかもしれないけれど。
でも怖いもんは怖い!
それで体を悪くしたら元も子も無い。
在宅でしばらく働いた後、気力も沸いて外で働きたいと思ったら、その時働こう。
うん。もっと気楽に考えよう。
焦らないでって言われたし、無理して外で働かなきゃって思う必要もない。
そう思い、私は在宅で働けそうな仕事をひたすらさがした。
ん?企業へ電話して、担当者まで繋いだら、担当営業マンにつなぐだけの完全在宅ワーク・・・。こんなのあるんだ。
少し興味が湧いた。
以前、コールセンターで働いていたことがあったし
これなら外に出なくても働けそう。
(嫌な事は言われそうだケド・・、ま!対面じゃないからなんて言われても良いか!)←そこは楽観的。
でもやっぱり医者には「働くな!!!」って鬼の形相で言われたしなー。
でもお金はほしーよー。
いろんな派遣会社にも登録していたので、時々いろんな所から仕事の紹介の電話があった。その中で1社、家の近くで9時から16時まででOKの職場を紹介された。事務員以外男性で、ほとんどみんな出払っていて、ほとんど事務所には所長以外誰もいないと聞かされた。
以前の職場で女性上司にパワハラを受けた私。
心の中にトラウマがあった。
全ての会社がそうであるとは限らない事は頭ではわかっている。だが、複数の女性と、相談しながら働くと言う事が今の私は怖かった。
ここの会社ならいけるんじゃない??
そう安易に考えた私、頭の中は「働ける~♪仕事内容もほとんど希望通り~♪」なんて浮かれまくってた。それから私は地獄を見ることになる。
職場見学まで漕ぎつけたというのに、突然不安が襲ってきたのだ。
私は働けるのだろうか。息が出来ない苦しさに襲われた。
不安で涙がボロボロ出てくる。
子供達が不安そうに「どうしたの?」と聞いてきた。
「うぅん。なんでもないよ。ちょっと電話してくるね。」
と言って、すぐに仕事を紹介してくれたところへ電話をかけた。
断る為だ。やっぱり、医者の言う通り、私はまだ完璧じゃないんだ。もう少し、休養が必要なんだ。だって、働くって言う不安で良い大人(もう36)が涙でる?
でないでない。
医者が言った事を思い出す。
「働ける!そう自信を持った時が、働ける時よ。それが思えない内は、まだ早いって事。」
あぁあああああ。言う通りにしとけば良かった。。浮かれた私が馬鹿だった。今から断っても迷惑じゃないかな。不安になりながら思い切って電話した。働く事が出来ないと自覚した時点で、1分1秒でも早く断りの連絡を入れないと先方に迷惑をかけてしまう!!
すぐに電話をしたら、相手も困惑したような返答だった。
先方とも打ち合わせして、日程調整もしていただいたのにと、かなり困っていた。(いや、多分怒っていたと思う。)当然だ。会社の信用問題にもなるんだから。責められても当然だと思い、私はひたすら謝った。
主人にその事を言うと、
「働く前になって動悸がした。怖い。なんて思ってると、本当に治った時に、「やっぱり私怖い」って言う癖がついて働けなくなるぞ。」と厳しく言われた。
ごもっともかもしれない。
私は甘えなのだろうか。
それとも病気でこんなに不安な気持ちになるのだろうか。
もうよく分からなかった。
暗い顔をしていると、
「誰も厳しい事言わないから言うけど、それぐらいの強い気持ちでいる事も大事だと思うよ。だって、前の会社だって、決まったらやっぱり・・ってなってたじゃん。その時は病気でも無かったのに。いや、責めてるわけじゃないからね。」とフォローするように直人が言う。
いや、責めてますけど。
がっつり。
あぁ、なんて情けないんだ!
穴があったら入りたい!!(←煉獄さん風)
紹介してくれた方にも迷惑かけて、その営業マンにも迷惑かけて、、私なにやってんだろ。
トホホ。。
涙が出てきそうだったが
いや、おいら泣かねぇ!
直人はうつ病を心のどこかで「それぐらいで?気合で乗り切れ。」って思っているんだと思う。いや、普通の人はそう思うだろう。私も知り合いが以前うつになった時、「気の持ちようじゃないの?」って内心思ってたからだ。(今思うととんでもなかった。本当にゴメン!)
病気を経験してない者には理解できにくい病気、それがうつ病でもあるのだ。症状が明らかに出てる時以外は普通の人と変わらないと言うのもあるだろう。
でも私は、今は完治できてなくて、普通とは違う。それは間違いなく事実なのだ。でもそれを分かってもらうのは、家族であっても難しい事だと医者にも言われていた。
「太雅!お願い!元気の出る歌かけて!」と言うとyoutubeで「元気の出る歌!」とマイクに向かって叫び、候補がいくつも出て来た。
「ね、何か唄ってよ。」
と、母からの無茶ぶり。
太雅は「やだ」の一言。
「じゃぁ励ましてよっ!」
と、子供みたいに駄々をこねてみると
「大丈夫~大丈夫~。」と小さな子供をあやすように私の腕をさすった。
「あはは!いいね、それ。煉獄さんで言ってみて。」(←再び小3相手に無茶ぶり)
「大丈夫!もう大丈夫だ!」と煉獄さん風に力強く言ってくれた。
「あっはっは!おかし~!うまいね、ありがと。太雅。元気出たわ!」
「何々、まだくよくよしてんの?」と直人が入って来た。
「うん。でももう吹っ切れた。就職活動は当分しない。周りに迷惑かけるし、雇用保険貰い終わる頃には症状が落ち着くっしょ。直人に言われた通り、いい仕事紹介されたからってすぐに飛びつかないようにするし、どんな良い案件でも今は働けないって言う!」
「うん。それがイイと思うよ。」と直人が答えた。
そう。負けないぞ!
少し失敗したぐらいなにさ!
少し憶測見誤ったぐらいなにさ!死ぬわけじゃない!!
それでいいのだ。「焦らず」なのだから。
私はわたしのペースで行く!
それでいーいのだ(←なんか昭和)
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