親愛なる友への手紙

狂フラフープ

親愛なる友への手紙

 親愛なるアビーへ


 君がこのメッセージを読む頃には、我々はすでに冷凍睡眠プロセスに入っているだろう。

 我々は間違っていた。

 周囲の反対を押し切りこの星の開拓を進めようとした我々が愚かだったのだ。

 ここが生存に適さない土地であることは最初からわかっていたというのに、当時の我々は信念がすべてを解決すると聞く耳を持たなかった。そしてこの星の過酷な環境は我々の甘い見通しを打ち砕くに充分に過ぎた。

 そんな中で、君は本当に我々に良く尽くしてくれた。

 コロニーの誰もが倦怠に沈む中、君だけは希望を失わなかった。

 来る日も埃にまみれて畑を耕し、凍える中で砂を掻き、外敵と戦い続けてくれた。

 君がいなければ、我々の誰一人、この星の厳しい冬を生き抜くことができなかっただろう。

 だからこそ我々は君に謝らなければならない。別れの言葉もなく君の前から去る我々をどうか許してほしい。我々人間と共通のリソースを必要とする以上、君を長距離航宙を行う引揚船に乗せることができないことは、君もわかってくれるだろう。

 君は我々の大切な一員だった。

 これは私だけの言葉ではない。コロニー構成員全員の総意だ。誰もが君を家族同然に思っていた。だからこそ、君をこの過酷な星に置き去りにしなければならないことを心苦しく思う。

 けれど安心してほしい。

 真に平等な社会を実現するという我々の理想は、必ず新天地で成し遂げると約束する。

 

 世に平等のあらんことを。


 君の永遠の友グレイスより

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