第75話地獄の門番ケルベロス

僕達の目前にそびえ立つ巨大な門は音を立てゆっくりと開いていく。

そしてその先には首が三頭に分かれ一つ一つに顔を持つ怪物ケルベロスが待ち構えていたのだ。

「ケ…ケルベロス……。」

「地獄の門番か……。」

ネージーさんに続きフレアース様は続ける。

するとその三頭のうちの一頭が口を開く。

「お前ら…生きたままの姿でここへ来るとは…そうか…ドワーフの血を持つ者がいたか…。」

僕達をはるか真下に見下ろし続けるケルベロス。

「ふむ…地獄の門へと生きたまま来たと言うことは何らかの願いを我の元へ持ってきたのか?」

もう一頭の顔が問いかけてくる。

「我々は…生の門よりここへきた者…死者となり魂の欠片を現世に残し去った『風雅』に用事がありここまできたのです。」

そう言葉にするフレアース様。

するとネージーさんは続ける。

「ケルベロス様…私はドワーフとエルフの混血のネージーと申します。どうか…ここへ風雅の魂をお呼び願えませぬでしょうか?…そして風雅の再生魂はこちらにあります。」

「ほぉ…人間が再生魂を持ちここまで辿り着くとは…その様な力を持っておるとはこれは面白い…。」

ケルベロスはそう言うと次の一頭が口を開く。

「良かろう…お主…ネージーと言ったか…貴様らドワーフの血は太古より太陽も浴びること無く地下に住みこの門を創り出し守護してきた者達…お主達のその功績を認めその願い…我が聞き入れようではないか…。」

するともう一頭が口を開く。

「ちょっと待て…しかしあの者はもう現世にはもう戻らんと言っていたではないか?」

「ん?確かに我もそう聞いたな…お主達は現世に蘇る気の全くない魂を再び戻そうとするつもりなのか?」

「えっ!?そんな…でも兄は!!??」

飛鳥ちゃんはケルベロスにそう叫ぶ。

するとフレアース様は前に出る。

「ケルベロス様…私は現世の魔導士『フレアース』と言います…我が弟の存在…そう…魂をここへ呼び…話だけでも出来ませんでしょうか?」

フレアース様は真剣な顔でケルベロスにそんな提案をする。

ケルベロスは三頭で話し合う。

一時…僕達はケルベロスの一人会議を見ていたんだ。

いや…三頭で話していたのだけれど。

そして三頭は結果を出したらしい。

「お主達…そやつの魂を今ここに呼び戻そうでは無いか…。」

僕達全員の表情は笑顔へと変わる。

「「ありがとうございます!!」」

「では…参るぞ。」

ケルベロスにお礼を言うとケルベロスは身体を発光させる。そして口から炎を吐き出す!

「カアアアッ!!」

ホボッ!!

炎は火柱となり火柱の中に一つの光が発光しだす!

「あ…あれは……。」

「!?光が少しづつ人の形に変化していくみたいだ。」

ダンさんと僕の目にもそう見えたんだ。

やがて炎の中から人型の何者かの姿が現れてくる。

「えっ!?」

すると僕が持っていた風雅の魂の欠片は人型に吸収されていく。

そして………。

ピカーーーーーーーーーッ!!!

辺りを閃光が照らす!!

「まぶ…しい。」

僕の視界も眩む。

「う…うわあああっ!?」

「ふぅ…全く……人というのは本当に騒がしい…終わったぞ。」

ケルベロスがそう言うと僕達の目の前にはなんと…光り輝く風雅が立っていたのだ。

「こ…これは……!?」

「にぃ……さん?」

風雅の声に飛鳥ちゃんは震えながら風雅さんの元へ歩み寄る。

ところが風雅の身体は光り輝いたままだ。

「飛鳥?それに…ん?フレアース?」

「久しいな風雅…。」

「これはどんな状況だ?俺はあの時死に…そして現世には戻る顔など持ち合わせてはいなかった…だから黄泉へと旅立ったはず。」

「風雅よ…お前も知っての通りこれから現世は混沌の時代を今まさに迎えようとしている…時代にはお前の力も必要なのだ…。」

フレアース様のその言葉に風雅は険しい表情をしている。

「兄さん…兄さんがした事は確かに許されない事…でも人は過ちをきっと起こすものでもあるよ…。」

飛鳥ちゃんのその言葉に風雅は飛鳥ちゃんを見つめる。

「飛鳥……。」

「我々がきっと風雅さんの力になりますから!なぁ!ネージーさん!?」

ダンさんがネージーさんに問いかける。

「もちろん!」

ネージーさんも同じ意見だ。

そして僕は風雅の前まで歩み寄る。

「風雅さん…これからは僕達と一緒に世界の為に戦ってください!!」

「みらい…か……お前は本来なら俺を消滅させる事も出来たはず…だがこうして肉体は消滅したが魂を浄化させたんだな…。」

僕は風雅に答える。

「はい…僕もこの世界に呼ばれた理由をやっとみつけたんだ…これからは風雅の力も正しく使って欲しい。」

僕の言葉に風雅は考えている。

「風雅…これまではこれまでだ…私と共にこの魔幻六芒星の一人の魔導士として魔幻獣十二魔人から世界を守ろう!?」

フレアース様は片手を風雅にさし出す…。

「フレ…アース……。」

風雅もフレアース様の手が重なる。

こうして僕達は風雅を新たに仲間にする事が出来た。

そしてフレアース様と風雅はフッと微笑む。

「風雅よ…それで良いのだな?」

ケルベロスはそう風雅に問う。

「ああ…俺の救われた命…次は間違いのないよう使うさ。」

「そうか…よかろう…これなら我が力で風雅を復活する事は可能ではある…だが……。」

「だが?なんですか?」

フレアース様はケルベロスに問い返す。

「風雅は魂だけは無事こうして存在したが…現世での肉体はもう使い物にならないのでな…。」

「何かいい案はありませんか?」

フレアース様とケルベロスは考える。

「そういえば……。」

ケルベロスの一頭の頭が口を開く。

「アレか…。」

「ああ…アレならばコヤツ次第だが…復活の為の身体として使えるかもしれぬ…」

「そう…かもな……。」

相変わらず三頭の頭は一人…いや三頭で話し合う。

するとケルベロスは話が終わったようだ。

「うぉおおおーーーーーっ!!獣人化!!!」

ごおおおおおーーーーーっ!!!

ケルベロスの肉体は突然炎が地から湧き出し巻かれていく!!

「大丈夫なの……か?」

皆が見ている中ダンさんが口を開く。

すると炎から人間型をした何者かが歩き出てくる。

「!!??あ…貴方は?」

フレアース様のその声に首を回しているその者が気づき口を開く。

「ああ…俺はケルベロスの獣人化した姿…この姿にならぬとある事が出来なくてな…」

ケルベロスはそう言うとある方向を指さし口を開く。

「あの門にはあるモノが潜んでいる…そやつは地獄の魔力を秘めた魔界の魔導兵器その名は『把瑠都ばると』…風雅よ…把瑠都を倒しその身体を手にする事が出来ればお主の身体として使えよう…そしてお主は地獄の魔導兵器となれるのだ。」

「魔導兵器…なるほど……分かった…始めよう。」

風雅はそういうと構える。

復活の為の戦いを迫られる風雅!!

果たしてどうなるのか!?

お読み下さりありがとうございました!

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