第7話 許嫁と海 2

 久しぶりに海を堪能して今はテントで一休み中。

 ゆらゆらと波が打つ景色を見ながら俺は感性に浸っていた。

 少しずつ観光客も増えていき活気が増していく中気温も少しずつ上がり、直射日光を浴びると、暑いの一言に尽きた。

「うう、暑い・・・・・・」

「確かに暑いです」

 これ程暑くなるとは思っていなかったが一応、パラソルを持ってきて良かったとかなり痛感している。

「何か買ってくるわ」

「それなら、私が」

「これくらい大丈夫。真鈴は休んでて」

「あ、ありがとうございます。それならお言葉に甘えて」

 俺は体を起き上がらせて売店へと向かい、長蛇の列へと並んだ。

 お昼時という事もあるのか、売店は大忙しの様子だった。

 売店から放出されているソースの良い匂いが辺りに漂い余計にお腹が空いてきた。

 ソースの匂いがするって事はおそらく焼きそばだろう。

 もうすぐで買えそうだからもう少しだけ待つとしますか。


 十分後。意外とすんなり買えた。

 焼きそばとペットボトルのお茶を二つずつ購入して、真鈴のいるパラソルへと向かった。

「買ってきたぞ〜」

「ありがとうございます」

 袋に入った焼きそばとお茶を二つずつ取り出し円花に渡す。

 どうやら円花も空腹の様子だったらしくずっと待ってたらしい。

「そんなにお腹空いてたのか?」

「あんまり言わないでください・・・・・・恥ずかしいですから・・・・・・」

 とりあえず俺は焼きそばの容器の蓋を開けて割り箸を割り焼きそばを口に運んだ。

「美味い」

「ですね!。すごく美味しいです!」

 ソースの風味とシャキシャキとしたキャベツが絶妙にマッチしておりかなり美味であった。

円花も夢中で食べすすめている様子だったのでかなり満足だ。

あれだけ並んだ甲斐があったってもんだ。

「ふう〜美味しかったです」

「久々に夢中で食べたわ〜」

「ですね」


 昼食を終えて今は真鈴と一緒にテント下でちょこんと座りながら海をぼーっと見ている。

 観光客は午前に比べて少し少なくなっている印象で、今は家族連れが多い感じだ。

「これからどーする?」

「そうですね。私行ってみたい所があるのですがいいですか?」

 

 真鈴が自分から希望を言うのは珍しいと思い、一体どこに行きたいのだろうと少しの疑問と期待を頭に残しながら真鈴の行く方向へと俺は進んだ。

「ここです」

「ここって」

 連れてこられたのは、砂浜から少し離れた岩陰だった。真鈴にしては意外な選択だと思い思わず声に出した。

「なんで岩陰なんだ?」

「気になりますか?」

「そりゃ、まあ・・・・・・」

「それはですね」

「う、うん」

「あなたと一緒にこの綺麗な海を見るためですよ」

 まさかの答えだった。さすがの俺でも応えに戸惑い、赤面してしまい目線を背けた。

 嬉しくないような照れ臭いような感情が体全体からこみ上げてきて俺の気持ちは今、この海と同じく綺麗に透き通っているみたいに心が洗われた。

「今だけは、この瞬間だけは、あなたと私二人だけの時間ですよ」

 そう言って手を差し伸べてくれる真鈴はまるで本物の聖女さんのように美しく、気高かった。

「お、おう」

「おや、顔が赤いですね。もしかして照れてるんですか?」

「そ、そんなんじゃない」

「隠さなくてもいいんですよ」

 今日だけは真鈴のペースに呑まれそうだ。

 



 

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