▄︻┻┳═一 エピローグ ≫
猿飛との決闘は無事勝利という結果で幕を閉じた。リミットにも間に合ったし、依頼されていた契約書のデータもちゃんと渡せた。ここまで苦戦したのは初めて暗殺をしたとき以来かな。猿飛も学校もこの組織も、正直いって七面倒くさかった。次からは泥棒やスパイみたいな仕事じゃなくて、単純に暗殺の依頼がきて欲しいよ、まったく。
体は案の定ボロボロで、緊張と薬の効果が切れたせいでくしゃみをするだけで激痛が走る。
「いったっ!」
「我慢しなさい。これだけの傷で済んでよかったじゃない。あの薬の副作用でちょっと発熱してるけどすぐに治るわよ」
フォリアの病室で包帯の交換をしてもらっている。全身いたるところに巻かれていて、まるでミイラみたいだ。痛み止めのおかげで腕を上げたり歩くのは多少楽になった。ついでにもうひとつ薬を投与された。なんでも、人体の自然治癒力を飛躍的に向上させるものらしく、ケガの治りが早くなるらしい。漫画の世界かよ。
「さてと、これでよし。ベッドで安静にしてなさい。今ご飯持ってくるから」
二度寝をするようにゆっくりベッドに入っていく。枕に頭を乗せたとき、自然とため息が出た。今は休まないといけない。特にやることもないし、天井をぼーっと眺めた。猿飛のこと、エージェントのこと、いじめのこと。頭の中にぼんやりと浮かんでは別のことを思い出す。いろんなことがあったせいで整理がつかない。私は今なにを考えてるんだ。それすらわからない。考えるのをやめようとしたとき、柊木空の顔が鮮明に浮かんできた。
ほとんど話したことのないのに、あんなに積極的になるなんて。男なんて色目を使うか見た目に対する差別的な視線を送ってくる。なのに彼にはそれがなかった。こんな体験をしたのは初めてだ。
どうしてこんなに胸が痛むんだろう。もしかしたら薬の副作用かもしれない。
「七面倒くさい……」
それに私の転校理由を怪しんできた。柊木空はやっぱり警戒したほうがいいな。って病院のベッドで横になっているのに、そんなことを考えるなんてもはや職業病だな。
ここは静かすぎてなにか考えてないとソワソワする。音楽でもかかっていればまだマシだなと思った矢先、無音の病室に音が響いた。
「お元気ですか」
声の主はマスターだった。私が最初に入院したときと同じようにドアのところに立っていた。相変わらずの鬼灯な笑みで近づいてきてベッドの横にある椅子に座った。いつもの調子で会話をする。それがあまりにも自然で、むしろ実感が湧かなかった。まあ微熱でふわふわした感覚だから仕方がないけど。
話をしているなか、横に置かれた紙袋がずっと気になっていた。細長くてボトルでも入ってそう。マスターに聞いてみると、思い出したようにその中身を出した。想像したとおり、それはボトルだった。ラベルは手作り感満載で、“LEMONADE”という文字が刻んであった。さしずめ私の差し入れってことだろう。よくもまあリミット宣言してきたのに、そんな陽気にレモネードを持ってくるなんて。組織の人間はやっぱり狂ってる。
「ささ、まずは一杯飲んでください」
「マスター、私が栄養管理してるんです。勝手なことはしないでください」
「いやはや、手厳しいですな」
ため息まじりにフォリアがいう。レモネードなんてむしろ健康に良さそうなんだけどな。まあ医療のことなんて私にはわからないけど。戻ってきたフォリアは食事を目の前に置いた。スプーンを持ちあげて、あたかもいつもやっているかのように私に食べさせようとする。これに必死で抵抗する。
「はは、仲がよいですな。そういえばリリィ様、今日私がきたのはこれをお渡しするためです」
そういうと懐からブルーの手紙を取り出した。それは報酬を意味する手紙で、それと同時に私がリミットに間にあったという証拠でもある。今までなかった現実をじわじわと胸の奥で感じる。鼓動が速くなる。受け取ろうとする手が震えている。初めて報酬を受け取ったときもこんな感じだったっけな。
封を切って中身を取り出す。二つ折りになった紙をゆっくり開く。フォリアも覗き込むように前屈みになる。妙な緊張感が胸を躍らせる。固唾を飲んで金額を確認する。
「ぜ、ゼロぉぉ!?」
報酬金は〇円。何度見てもその数字はかわらなかった。契約書を奪ってターゲットを殺したのに報酬なし。骨が折れる大ケガをしてまで得たものはこの紙切れ一枚だけ。驚愕の事実に戸惑うばかり。一瞬にして頭をフリーズさせた。なんで? どうして?
固まっている私に対して嬉しそうに告げる。
「ハイドの使用とフォリア様の治療費が大部分を占めています」
くっそ……ハイドの出費を差し引いて、残りは全部フォリアってことか。治療費についてはろくに計算もしていないだろうに。治験代くらいはもらいたい気分。肩をさげて落ち込む私にフォリアは「ありがとね」と嫌味ったらしくいってきた。これじゃあタダ働きと変わんない。銃弾の補充やクリーニング代を考えればむしろ赤字になる。
「まあでも、命あっただけマシってことかな」
「「……」」
ぽつりと呟いた瞬間、辺りが静まり返った。耳に入ってくるのは布団が擦れる音と私の呼吸。その異変を感じて、「ん?」っと顔を上げる。横にいるマスターとフォリアはお互いに顔を見合わせていた。え、どゆこと?
呆けていると、静寂を打ち破るようにふたりは笑い出した。目に涙を浮かべて腹を抱えている。私だけ置いてけぼりだ。
「おい、なにがおかしいんだ」
「これは失敬、あまりにもリリィ様には似つかわしくないお言葉だったので」
「まさか学校に好きな人でもいたりしてね。デートするなら相談に乗るわよ」
なにかと思えば、しょうもない理由だな。恋愛なんて私とは無縁の存在だ。興味なんてない。やんややんやと歳のいった盛りあがりを見せるふたり。なにが面白いんだかさっぱりわからない。呆れてものもいえなく、ため息をついてふたりを無視した。
それにしても賑やかな病室だな。廊下の外にまで声が響いてそう。
「七面倒くさい」
「まあ冗談はここまでにして。リリィ様、よくご無事でいられました」
すっと立ち上がり、服装を整える。バーのときと同じように背筋をピンと伸ばしている。いつもと違うのはマスターの全身が見えているということ。つま先から頭のてっぺんまでしっかりと見えている。それだけで厳かな雰囲気が感じられた。
左手を胸の前に置いて、右手を後ろに隠す。しっかりと私の目を見て鬼灯の笑みを浮かべた。
「おかえりなさいませ」
深々とお辞儀したマスターはいつもより嬉しそう。私の勘違いかな。でも胸の奥がなんだか暖かい。私は帰ってきたんだ。そう自覚させた。ただのお辞儀のはずなのに、いつも見ていたはずなのに、今はとても安心する。
姿勢を戻してまた椅子に座る。そして平然と会話を続けた。
「レモネード飲んでいい?」
「だめ、また今度よ」
* * *
空は青く広がり雲ひとつない。快晴の日に窓を開けて風を感じる。黄昏ているせいか、教室の音が遠く聞こえる。
四月も今日で最後。本当にいろんなことがあったな。まるで夢を見ているみたいだった。学校が始まって一ヶ月が経つけど、感覚的にはもっと短い。一年生のときはもっとゆっくり時間が流れていたんだけどな。
だからかな、始業式からの毎日を鮮明に覚えている。あの“景色”が俺の、いや、俺たちの始まりだった。
「そーらー、なにしてるの。こっちでご飯食べよう」
不意に名前を呼ばれて振り返る。すみれと笹原が俺の机にそれぞれのお弁当を広げて待っていた。ちらっと窓の外を見て席に向かう。
今朝の連絡では、里中さんは午後から登校するとのことらしい。でもまだきていない。学校で会うのはなんだか久々な気がして、無性に胸がざわつく。あの公園で会ったのが最後だけど、大丈夫かな。学校にくるってことは一応学校が嫌になったわけでないと思う。それか親に無理やり行けっていわれたのかな。いろいろと話がしたい。里中さんに会いたい。率直な気持ちが
「えーと確か割り箸がここに……」
机の中に入れた割り箸を取り出すために古文単語帳を一旦取り出す。しかし手元が狂って地面に落としてしまった。
それを拾おうとした瞬間、手と手が触れあった。
はっと顔をあげると、そこには美しい青い瞳が俺を見つめていた。
「里中さん……」
鼓動を感じる。周りの雑音も聞こえなくなり、目の前にいる彼女に釘付けになってしまった。俺が知っている彼女の顔。あのとき出会った春の“景色”。その澄んだ瞳を見ていると、俺の目に熱いものを感じた。そして桜の花びらが一枚、俺らの間をひらりと舞った。
頭が真っ白でなんて声をかければいいかわからない。考えろ考えろと集中することに集中して、結局なにも思いつかない。あれだけ話をしたいって思っていたのに、いざ面と向かうと言葉なんて出てこない。気持ちだけが昂っていた。
里中さんは古文単語帳を拾って俺に渡してくれた。その表情は始業式と同じで無そのものだった。しかし雰囲気がちょっとだけ変わったような気もする。もしかすると単に気のせいかもだけど、前より距離を感じない。そして……。
「里中さん! ごめんね……あんな意地悪して」
「私もごめん、便乗して悪口いってた」
「俺もだよ、変な噂まで広めちまってよ」
俺が言葉をかける暇もなく、里中さんはクラスの人に取り囲まれてしまった。そこにいる全員が口々に
自分の席に行って、ドンッと重たくカバンを置く。
「気にしてない」
え、今なんて?
思いもしなかったのは俺だけじゃなかったらしく、クラスの全員が戸惑っている。謝っているから許してもらいたいのは当然だけど、こうもあっさりいわれると実感が湧かない。ある人が「本当に?」と確かめると、「本当に。だから大丈夫」と無表情で返ってきた。
短くても力強い言葉が心に響く。胸の奥からじわじわと感じて涙腺を刺激する。そこにいた人はすべからく涙を流した。出会ったときはわからなかったけど、里中さんってこんなにも心が広いんだな。並の高校生と比べて格段に大人だ。頭がよくて美人で、かつ優しい。そんな彼女を再認識した。そして鼓動を早める。
おっと、今のうちにいかないと里中さんがまた囲まれちゃう。
「里中さん、こっちきて」
カバンを開けようとした彼女に声をかける。一瞬はっとして俺を見る。白い肌は以前と比べて褐色を帯びているような気がした。公園のときのような青白く死んだような顔とは大違いだった。
ほとんど無反応の彼女の手を取って引っ張る。少し包帯が巻いてあるのが気になる。まだ治っていないのかな。手を握ったあとに、痛くないかなと心配する。それと同時に里中さんの温かみを感じた。包帯越しだけど、確実に伝わってくる。会話をしていても距離を感じていたため、彼女は“知人”でしかなかった。けど今は違う。一歩踏み込んで、この気持ちをちゃんと言葉にして伝えられる。
里中さんを俺の席に座らせて、四人で昼食を取る。里中さんは予想どおり弁当を持ってきていなかった。さっき購買で買っておいてよかった。パンを渡そうとカバンに手をかける。そのとき「じゃあさ、こうしようぜ!」と笹原が意気揚々に提案した。便乗した俺たちは弁当箱を開けて、各々好きなおかずを取り出して……。
「ジャーン! スペシャルサンドウィッチの完成だぜ」
笹原のパン、すみれのサラダ、俺のコロッケと卵焼きなど、たくさんの具材を挟んだ。それはひどく不恰好だったけど、里中さんは「ありがとうと」とちょっと驚き気味でいってくれた。
この四人でご飯を食べるのは初めてなはず。それでもなんだか懐かしく感じた。暖かい気持ちで満たされるまえに手を合わせていただきますをする。
ふりかけがかかったご飯を箸で口に運ぶ。行きつけのパン屋のパンを頬張る。嫌いな野菜を向かいにいる幼馴染みにそっと渡す。小さくかぶりついたサンドウィッチを飲み込む。弁当を食べてようやく昼休みを感じる。午前中の授業が重たい分、ひと口目が美味しくなる。それはみんなも同じらしく、とろけるように肩の力を落として昼食を味わっていた。
そういえば、すみれとはご飯食べたことあるから認識あるだろうけど、笹原とは初めてだったけ。
「里中さん、実はこのふたりが協力してくれたんだよ」
ついでに笹原の紹介もして、今回の結末を簡単に話した。
「噂を消すのってマジで無理ゲーだったぜ」
「あたしも先輩たちの誤解解くの大変だったんだよ。罰として……これもーらいっ」
「じゃあ俺も!」
というと箸がのびてきておかずを取っていく。サンドウィッチを豪華に作りすぎたせいで、もう弁当箱はすっからかんだった。まあお腹がすけば渡しそびれた購買のパンを食べればいい。それに目の前でおいしそうに食べるふたりの姿を見ると、まあいいかと思えてしまう。
残り少ないご飯を箸でつまむ。そのとき、サンドウィッチの一片が見えた。顔を上げて確認すると、里中さんが「食べる?」と差し出していた。戸惑っていると、笹原が乗り気で「いけいけ」といってくる。真っ直ぐ見つめる里中さんに押されてひと口食べた。
満足げな笹原となぜか頬を膨らませるすみれ。何事もなかったように食事を続ける里中さん。あれ、今のって間接キス……。すみれと海以外の人とやるのは初めてのような……ってなに考えてんだ俺!
耳が赤くなっているのがわかる。話題を切り替えたくて頭を回しているとき、大事なことを思い出した。
「あ、それと。里中さんに会いたい人がいるだけど。入ってきていいよ」
「あ、あの……こんにちは……」
ドアに隠れるように立っていたのは桂さんだった。里中さんの様子を伺うようにゆっくり近づく。先生のおかげで数日の停学処分で済んだようで、警察沙汰にもならなかったし本当によかったと思う。後日、笹原経由で連絡先を交換して話をした。どうしても直接謝りたいらしく、休み時間になると教室の前でずっと待っていた。
実際に会うと気まずい空気が流れ、なかなか目を合わせられない。言葉もたびたび詰って、出だしをなんていおうか考えていた。それでも両手を強く握って想いをぶつける。
「あの! 本当にごめんなさい! 私が全部悪いの。恨むなり叩くなりなんでもして」
深々と頭をさげて、ボロボロと涙を地面に落とす。その姿から誠意を感じるが、里中さんは雰囲気を変えて歩み寄った。周りが凍りつくような緊張感。表情はいつもと同じだが、怒気を感じる。四月に起きたいじめの元凶。彼女の行動がなければ里中さんは苦しまなくて済んだ。桂さんの気持ちもわかる。けど今の里中さんにそれは関係ない。感情をぶつけるように手を広げて桂さんに向けて振りかざした。
「え……?」
桂さんの頭に手を置いて、顔をあげさせた。その手を頬に滑らせて優しく包み込む。
「気にしてない。だから私のせいで泣かないで」
張り詰めていた緊張感も呆気に取られて消えてしまった。優しすぎる言葉を聞いて、余計に泣いてしまった。周りにいたクラスメイトも「すげぇ」「やばいね」と心の広さを讃える。里中さんがされたことを考えると、その憎しみは計り知れない。まして異国へ転校して早々いじめられたんだ。イギリスに帰ってもおかしくない事件だった。それなのにどうしてこうも涼しげに相手を許せるのだろうか。俺だったらどうしてたかな。
改めて里中さんの美しさを知った。宥めている姿はまるで……。
「里中さん、マリア様みたいだねぇ」
うんうんそうそう……ってだれ!? 突如として現れた人物に全員が目をパチクリする。このシルクのようなしゃべり方と軽くクセのある髪はあのまったり系だ。隣から椅子を持ってきて菓子パンの袋を開けた。そしてなに食わぬ顔で食事をともにする。
笹原は本当にだれかわからないらしく、首を左右に激しく動かして俺らに説明を求めた。そう彼女は……彼女は……あれ、名前聞いてないような。
「そういえば名前ってなんだっけ?」
「あ、いってなかったねぇ。私は……」
「チェストぉぉぉ!!!!」
突然轟音がしたほうを振り向くと、桂さんがサッカー部の佐藤くんに飛び蹴りしていた。倒れ込んだ彼の胸倉を掴んで罵倒する。両手のひらを見せて無抵抗を示しているが、お構いなしにビンタする。その光景が好奇だったのか、いつの間にか野次馬がふたりを取り囲んで「やれやれ!」「佐藤も負けるな!」と妙な盛り上がりを見せている。里中さんを含め、俺たちは第三者視点で傍観する。騒がしくなった教室は以前のような陰湿な雰囲気は無く、太陽に照らされるような暖かみを感じた。
里中さんが席に戻り、新たに加わったまったり系と一緒に昼休みを過ごす。
「そうだ! ここでグループ作ろうぜ。ほらみんなスマホ出して」
「いいねそれ、やろう!」
「わぁい、私も参加したいなぁ」
それぞれスマホを取り出して、笹原が作ったトークルームに参加する。唐突の提案に意外と乗り気のメンバー。俺も参加しようとアプリを開くと、すでに入っていた。すみれが追加したらしい。真新しいトークルームにスタンプが送られてくる。
グループ名なににしようかなと和気藹々と話をしている三人。クラスやクラスの男子を除けば、グループなんて初めてかもしれない。正直いって胸が躍る。
「里中さん、俺はもっと里中さんと一緒にいたい。一緒に笑ったり泣いたり、いろんなことを楽しみたい。“友達”だから」
「“友達”……」
言葉を繰り返した彼女はキョトンとしていた。しばらく考えたあと、ポケットからスマホを取り出した。
「こちらこそ、よろしく」
辺り一面が季節外れのソメイヨシノで包まれた。花びらが舞って髪をなびかせる。そして俺の心も桜色に色づく。
四月はもう終わり。夢のような時間はあっという間に過ぎていった。高校生活も無限じゃない。だからこそかけがえのない友達と一緒に思い出を作りたい。しょうもないこと、特別なこと、日常のこと。言葉と時間を
できたての絆。確かに不安はある。でもこれだけはいえる。
俺たちは今、満開だ。
* * *
ポストに入っている手紙の束を手繰り寄せて持ち帰る。手紙といってもチラシしかない。
エレベーターを待っていると、清掃員のおばさんが話しかけてきた。
「お嬢さん、これよかったらもらって。差し入れらしいんだけど私食べれなくって」
渡されたのはシュークリーム。押しつけるように渡されたが、別に断る理由もなく素直に受け取る。
そこにちょうどよくエレベーターがきた。ドアが閉じる瞬間、おばさんと目があったので軽く会釈した。
右手にはチラシ、左にはシュークリーム。エレベーターの角に身をあずけて、ぼんやりとカウントアップを眺める。
部屋に着くともらったシュークリームとチラシをテーブルに置き、ため息混じりにソファに座る。
新しい家電のチラシ、クーポン券、スーパーのチラシなどどうでもいいものばかりだった。いらないものは古紙回収、毎日ゴミが増えて七面倒くさい。クーポン券のひとつを切り出してそれを見つめる。別に割引なんて興味ないけど、今はこれが必要なんだ。いつものようにジッポーを取り出して炙る。するとただのクーポン券が別な意味をなした。
“C”
浮かびあがった文字は大文字の“C”だった。
「了解」
さっそく服を脱いだ。
なぜなら私は、暗殺な女子高生だから。
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