第40話 可能性。
「まずこの店に入ってきたときに、ノエルさまとロココさまが【闇】属性であることはすぐにわかりました。これでも冒険者のはしくれでしたので、魔物と同じ――いえ、厳密には少し感じ方が違うのですが、とにかく【闇】属性の察知は容易です。となると、あとはどのようなクラスでご用件であるかですが、これもすぐにわかりました。ロココさまの呪紋使い(カースメーカー)の特徴は褐色の肌に見え隠れする赤い【呪紋】と一目瞭然でしたし、ノエルさまは特に外見上の特徴はありませんでしたが――失礼ですが気味の悪いくらいに足音がしませんでしたので、ああ。暗殺者だと」
そこまでを一声で言い切ると、サーシィさんはくいっと眼鏡を上げ、一度「ふう」と息を吐く。
「続いておふたりのご用件についてですが、ロココさまが呪紋使い(カースメーカー)であることで
パチパチパチ。
思わず僕とロココが拍手をしてしまうくらいに一切のよどみなく、サーシィさんは僕の「どうして僕たちのクラスと買いたいものがわかったんですか?」という問いに理路整然と答えてくれた。
それもよく噛まなかったな? と言いたくなるようなとんでもない長台詞で。
その結果わかったのは、サーシィさんの洞察力がサーシィさん自身がいう【察しがいい】なんてレベルはとうに通りこし、すべてを見透かされてるんじゃないかって錯覚するレベルだってことだ。
それと、ちょっとだけ気になることがもうひとつ。
「でもサーシィさん? さっき僕たちの用件がロココが呪紋使い(カースメーカー)なことから、上着にほぼ絞られたって言ってたけど、ほかにもなにか可能性があったってこと? 正直思いあたらないんだけど?」
「えっと……。いえ。なんというか、その……。可能性といいますか、わたくしの願望といいますか……」
え? 願望?
さっきまでハキハキと長台詞を一切噛まずによどみなくしゃべっていたひととは思えないくらいに言いよどむサーシィさん。
なぜか両手を頬にあてながら、潤んだ熱っぽい視線で僕の全身を眺めまわし始めた。艶やかに塗られた赤い唇が動く。
「その……ノエルさまの……
……はい?
それは、僕にとってまったく予想だにしない【可能性】とサーシィさんの発言だった。
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