ケリーの章 ⑫ 待ちわびていたプロポーズ

「あ…ローラさん。こんにちは」


目をこすりながらローラさんに挨拶した。


「ええ。こんにちは、ケリー」


するとアメリアも挨拶をしてきた。


「こんにちは、ケリーお姉ちゃん」


「ええ、こんにちは」


赤みがかかったアメリアの頭を撫でながら挨拶した。


「珍しいわね。この時間に貴女に会うなんて。お買い物かしら?」


ローラさんは買い物袋を手にしている。


「はい。ヨハン先生と私のお昼を買いにパン屋さんへ行くところなんです」


「あら、珍しいわね。いつも大体3食必ず食事を作っているのに」


「はい、そうなんですけど今日は予約の患者さんもいらして混雑していたので」


私の言葉にローラさんは頷いた。


「そういえば、ヨハン先生の診療所は今患者さんが増えているものね。余命半年と言われていたアゼリアの延命治療した話が有名になって…すっかり、ここ『リンデン』の名医とまで言われるようになったもの」


「ええ…そうですね」


アゼリア様の事で診療所が有名になった…今思えば皮肉なものだ。


「それで忙しくてお昼ごはんを買いに来ていたのね?」


「はい、そうなのです」


返事をするとローラさんが不意に笑みを浮かべて私を見た。


「フフ…ケリー。すっかり美人になったわね。アメリアもそう思わない?」


「うん、ケリーお姉ちゃん。きれーい」


「え?と、突然何言い出すんですか?アメリアまで…」


するとローラさんが言った。


「ケリー。貴女、今恋しているでしょう?」


「え?」


その話にドキリとする。


「ど、どうしてそう思うのですか?」


ドキドキしながら尋ねる。


「だって、最近のケリー…本当に綺麗になったもの。オリバーもそう言っていたわよ?あれじゃヨハンが心配でたまらないだろうなって。大切なケリーに悪い虫がつくんじゃないか〜って」


ヨハン先生の名前が出てきて、 ドキリとした。


「そ、そんな…ヨハン先生はそんな風に思ってくれないです…」


徐々に声が小さくなっていく。


「ケリー?どうかしたの?」


ローラさんが心配そうに覗き込んできた。どうしよう…ローラさんになら…相談してもいいだろうか…?するとローラさんが言った。


「ケリー。明日は診療所がお休みの日よね?お邪魔してもいいかしら?御馳走作って遊びに行くから」


「ローラさん…」


「ほら、パンを買いに行くんでしょう?ヨハン先生が待っているんじゃないの?」


ローラさんが私の頭を撫でながら言う。


「は、はい。では失礼します」


「ええ、また明日ね」


「ケリーお姉ちゃん、バイバイ」


頭を下げると、ローラさんとアメリアが手を振ってくれた。私も2人に手を振ると、パン屋さんに急いだ。


ヨハン先生が…待っているから―。

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