エピローグ 君に逢いたい

「僕は、彼女と一緒にいて泣いたことは一度もない。だけど、彼女と再会できたら、僕は泣くと思う。それまで泣くのはお預けにして、僕は前相談役である鷹司様の推薦で彼の補佐官になった。四方院家の情報網と未来予知の占術の力を欲したからだ。相談役の地位を引き継いだ今も僕の目的は変わらない。すべては生まれ変わった彼女と再会するために。鳳凰は転生の力を持っているから、彼女に逢うまで何度でもやり直せる。すべては1人の少女のために……それが僕という人間の秘密だよ」


 リオは言葉を選びながら尋ねる。


「つらく、ないのですか。その生き方で」


「そりゃあ……」


 桜夜は満面の笑みを浮かべる。


 ――つらいさ


「でも幸い相談役の仕事は忙しいし、宗主やリチャード陛下はむちゃぶりをするし、君たちと交わした様に、約束も増えた。だから相対的に彼女のことを考える時間は減っていく。本当は一日千秋の思いで彼女を待つだけの日々を過ごしたいんだけどね」


「……1人に、ならないでください。あなたが楽しく過ごすことを、きっと、あずさ様だって……」


「そうだね」


 桜夜は笑顔のまま天井を見上げる。その目はここではないどこかを見ているようだった。


(この心にぽっかりと空いた穴は、君と再会したら埋まるのだろうか? それともいつか他の誰かが埋めてしまうのだろうか。それでも、もう一度……)


――君に逢いたい。


to be continued

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