スキルをよみ解く転生者

57.爪紅？

しばらくして、続々と荷物が運ばれてきた。

それを、ズラリと目の前に並べられた。

目の前にはキラキラ輝く、化粧品たちーー・・・。

ローランドさんが言った通り、持って帰るのは無理！って程のとんでもない量の化粧品達が並べられた。

先程、お店でみた化粧水や乳液といった基礎化粧品に、ファンデーションやアイシャドウにリップというメイクアップ用品。

更にはメイクブラシや、化粧品・・・ではない気がするシャンプーやコンディショナーまで。

とりあえず店頭に置いてあった物は全種類持ってきてくれたのかな？

だって店頭にあった量を明らかに超えてるし・・・。

素晴らしすぎる・・・！

見てるだけでも幸せなのに、これが全部私のものなんて！！

「欠品中の物もありますが、入荷したらクリスディアに届けさせますね。

使い切れない分は、誰かにあげるなりしてください。気に入った物は連絡をして下されば、追加でお持ちします」

ローランドお兄様！！最高すぎます！

もう、結婚してください！！

という気分になったが、この人はミランダお姉様の旦那様。既婚者だった。

・・・浮気はダメ。不倫なんて絶対ダメ。

「ありがとうございます。

大切に使わせて頂きますわ！」

そんな私の心情は隠しながら、胸の前で手を組み合わせニッコリとお礼を言った。

そして、改めて化粧品を見つめ気付いた。

顔のメイク用品ではない為か、シャンプー等と一緒に置かれた、先程この部屋に入ってきた時に気になっていた物が。

一見は口紅のように見えるもの。

これって、もしかして・・・。と思い手に取ってみる。

すると、それに気付いたローランドさんが言った。

「さすが、お目が高いですね。そちらは当店の人気商品の、

爪紅（つまべに）です」

「・・・爪紅？」

「シエル」

商品を持ってきてくれ、部屋の隅に控えていたシエルさんが呼ばれ、シエルさんがこちらにくる。

「こちらの爪紅は、ミランダ奥様が1年程前にやっと完成させ、発売させたものなんです。

爪紅を使えば、このように爪を染め美しく見せる事が出来るのです」

そう言って、自分の手を・・・爪を私に見せてきた。

やはり、爪紅というのはネイルカラーのようなモノだったようだ。シエルさんの爪は、ほんのり赤く染まっていた。

そして、私は違和感を覚えた。

なんで・・・爪紅（・・）って名前なんだろ？？

爪紅、という名前は馴染みは無いが聞いたことはあった。

確か江戸時代とか、昔にマニキュアのような爪を彩る化粧の事を、爪紅って呼んでた気がする。

だから、たぶん。「爪紅」と聞こえるのは私の 【翻訳】スキルが働いての認識だ。

でも、だったらなんで、

「ネイルカラー」や「マニキュア」って【翻訳】されないんだろ？？

そんな事を考えていた、私をよそにシエルさんが別の色の爪紅を手に取った。

「ただ・・・、美しく塗るのは、コツというか慣れが必要なんです」

「そうなんですか？」

たしかにマニキュアも、綺麗にムラにならないように塗る為には、慣れとコツが必要ではあるけれども・・・この爪紅も同じなのだろうか？

「なので、爪紅は販売も行ってますが、当店ではハンドケアと共に施術もさせて頂いております。

よろしければ、ジルティアーナ様もお試しになられますか？」

「はい！お願い致します」

私は気になっていた『爪紅』をしてもらう事になった。

ーーー・・・・・・

細長いテーブルにシエルさんと向かい合わせに座る。

横に並べられているネイルケア用品だと思われる道具たち。

見たところ・・・ネイルファイル、プッシャーに甘皮ニッパー、ネイルシザー、ウッドスティックにダストブラシ···

などと、日本で見るのと同じようなネイルセットが並んでいた。

「失礼致します」と声をかけ、シエルさんが私の手をとり施術を始めた。

まず、爪ヤスリ（ネイルファイル）で爪の長さを整える。元々あまり長くは無かったので、少しだけ。

次に爪の生え際、甘皮部分にオイルを塗り、お湯が入ったボールにつけた。

そのまま10分程放置するらしい。

そのため、その間に「何色を塗りますか？」と聞かれた。そこに並べられた10色ほどの爪紅の色見本（カラーチャート）。

色は無難な赤とピンク、ベージュ系ばかりだ。

爪紅そのものとカラーチャートを見比べると、だいぶ色が薄いし、ツヤがなくマットな感じだ。

発色はあまり良くないのかな？

とりあえず、可愛いサクラ色のようなピンクを選んで見た。

ちょうど選んだところで10分経ち、続いてプッシャーで柔らかくなった甘皮を押し上げてく。

その押し上げられた甘皮をシエルさんの指に巻き付けられたガーゼで取り除く。

取り切れなかった部分はニッパーでカットし、キューティクルケアは完了した。