スキルをよみ解く転生者

よつ葉あき

異世界からきた私

0. プロローグ~目覚めた私。



長い夢を、見ていた気がする。



·····ここはまだ、夢の中?



思考がまとまらず、ぼんやりとしながら目を開けハッとする。


『いま何時!?』


やばい!やばい、やばい、ヤバーイ!!

仕事に遅刻じゃない?化粧する時間ある!?


··············。


·····いや、それよりも有給もたくさんあるんだし休んでしまおう。うん、そうしよう。

私なんて居なくても、甘え上手のあの子と、頼りになる課長でどうにかできるでしょ?

私に「君は1人で大丈夫だろ」と言うんだから、私なんて必要ないよね?

あんたら2人でどうにかすればいいんだ。だからーーー


色々考えていた、思考がとまる



ここ、どこ??



目の前の景色が思っていたものと違っていた。

私は、昨日は一人暮らしの部屋で寝た。んじゃなかったっけ??


目の前の光景·····ここは、どこかのホテル?


布団もフワフワだし、上を見上げるとコレってお姫様ベッドってやつ?天蓋付きのベッドの様でレースのカーテンのようなものが下がっていた。


「良かった…!目が覚めたのですね」


声をかけられ、そちらを見ると




····どちら様??



見たこともないような美女が、そこに居た。



急に声をかけられ驚いたが、それは一瞬の事。それよりも、彼女の容姿に衝撃を受けた。


何この美人。モデル?女優さん??

いや、テレビの女優だって、この人には負けんじゃない?


こんな美人いるんだなぁ。スタイルも出るとこは出てるのにウエスト細!顔も身体も綺麗すぎて、モデルというより人形みたい。


あ。目の色!最初、光の加減で茶色かと思ったけどよく見たら緑色だ。宝石のエメラルドみたいな綺麗な色。

服はクラシックな黒いロングドレス。メイド服のような服を着ている。


コスプレイヤーさん??


コスプレは、やっぱり綺麗な人がすると映えるわねー。

日本人に見えなくもないけど色白で鼻筋が通ってるし、髪色もプラチナブロンドだし、もしかしてハーフかしら?


うわー。昔どハマりしてやり込んだ、あのゲームのヒロインのコスプレしたらメッチャ似合いそう!


こんな美人さんを間近に見る事なんて、滅多にないだろうから良ーく拝見させていただこう。


うわぉ。よく見たらまつ毛長くてバサバサなのに、髪と同じ薄い金色だしマスカラもツケマもアイラインだってしてないよね?

天然美人、羨ましい!!


私も自慢ではないけど、可愛い・綺麗って言って貰える方。上の下って感じ?

でも、それは作り物…。いや違う、努力。そう、努力!



もうアラサー。もうすぐ30歳。


毎日、服・髪型には気を使い、前日と同じバックや靴は使わない。化粧は最低30分。

基礎化粧品も5年程前からお高めな物に変えた。


綺麗だね。とか、褒めて貰えたらやっぱり嬉しいしね。


化粧。化けるに、粧う。ってまさにピッタリすぎる漢字よね。

考えた人、天才じゃない!?···て、考えが飛んでた。



目の前の美女を改めて、観察みる


すごい薄化粧だけど、凄い美女。

ナチュラルメイクもいいけど、赤いリップとか塗ったら似合いそう!

ハーフみたいな濃いめの顔だから、アイラインはやり過ぎると切れ長の目がキツイ印象になりそうだから控えめに入れてアイシャドウは···


妄想を膨らまして、また自分の世界に突入していたら、戸惑ったような様子で美女が小首をかしげながら話しかけてきた。



「ジルティアーナ姫様?大丈夫ですか??」




···············ジルティアーナ、姫様????




姫様。てのは、コスプレに合わせて言ってるのかもしれないが、私の名前はジルティアーナなんて御立派な名前じゃない。それに、コスプレに合わせるなら、姫じゃなくお嬢様のがよくない??


なにより私の名前は、もっと庶民的で平凡な名前・・・と考えてると美女に悲痛な顔で抱きしめられてしまった。



「ご安心くださいませ、このエリザベスがついております」


「·····リズ?」


「はい。ジルティアーナ姫様」



いつも2人っきりの時は呼んでいた愛称でエリザベスを呼ぶ。


色々と暴走してた思考が一時停止して、




理解した。



今の私・・・は、ジルティアーナだ。


ヴィリスアーズ家の娘、ジルティアーナ・ヴィリスアーズ。


正当な次期当主である。···今は、まだ。



何故そんな歯切れの悪い言い方をするかと言うと、元々危うかった次期当主の座が、おそらく《成人の儀》での一件で剥奪されるからだ。



そして、ショックのあまり私は、儀式のあと控え室で―――――。




その後の記憶がはっきりとしない。自室で寝てたと言う事は···



「ねぇリズ。成人の儀での事、お父様はなんて?」


エリザベスの肩がビクリと揺れた。

ゆっくりと身体を離し、涙を溜めながらも力強い瞳で言う。


「お父様のローガン様は正当なヴィリスアーズ家の血筋はジルティアーナ様であり、自分も中継ぎの当主にすぎない。

と仰っていましたが、奥様が……」


緑色の瞳が揺れて、震えた声で絞り出すように続けた。


「奥様は……上級貴族の跡取りが……


【ロストスキル】持ちだなんてありえない。


直ぐに、次期当主は妹君であるシャーロット様にするべきだと·····!」




····ああ、そうだった。


イザベルはずっとジルティアーナを疎ましく思っており、次期当主というのはもちろんの事、家から追い出したいとまで思っていた。

だが、ジルティアーナが居なくなれば本当にヴィリスアーズの血を引くものが居なくなってしまう。そのことで周りから非難される事は必至。

その為、今までは追い出されるような事はなかった。


だが、今回の成人の儀での事。


ジルティアーナとシャーロットの儀式の結果を見て、実行する事にしたんだーーー。


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