詩集75 おいてかれた言葉

仲仁へび(旧:離久)

第1話 海にとびこめ




「食われる!」


――そう察知した俺は、蓋のあいた箱から


――飛び出した


「逃げる!」


――そう、それは自由への逃避行


――全ては


「生きる!」


――そのために


 とびこめ

 とびこめ


 海にとびこめ


 何がなんでもとびこめ


 地上じゃやっていけないし


 陸地では生きられない


 そう生きられるようにできていないし


 だから

 とびこめ

 とびこめ


 海にとびこめ


 はねて はねて


 道路を横断

 歩道を移動

 垣根を越えて

 犬猫のがれ

 ポールの下を

 お店の前を


 とにかく


 移動 


 はねて はねて


 陸地を移動

 森を移動

 草原を移動

 砂漠を移動


 俺達 魚


 この世界じゃ生きられないし


 この世界じゃやってけない


「やべ、蓋しめわすれた」


「あっ? ここに入れた魚が減っている!」


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