第30話 ひきこもり、宝くじを引き当てる
健ちゃんの症状はPTSD(心的外傷後ストレス障害)だと、入院先の医師から告げられた。ただ、異世界で経験した戦闘や経験がフラッシュバックを起こしていたのは、当人も自覚していた。だから、何が変わったということもなく、俺たちはいつものように付き合っていた。
動画配信もバルザ王国の観光名所を、紹介するような内容を続けていたので、動画人数は二桁台と振るわない結果が続く。夜になれば当たり前のように健ちゃんが遊びに来て、ポテチを食べながら取り溜めた深夜アニメを鑑賞したり、テレビゲームを二人してプレイして、学生時代に戻ったように怠惰な生活を続けていた。
「働いたら負けでござる」
「今は心をを癒しているだけでおじゃる」
駄目人間二人がお互いの傷口をなめ合うように、ダラダラと時間を消化していた。こんな生活がいつまでも続くわけでもないのに、このたおやかな時間が心地よかった。
「ついに週刊ジャンプの連載に追いついてしまった……」
健ちゃんは悲しそうに、一冊の単行本を本棚に返す。
「これから月曜日の朝が楽しみになるからいいじゃないの」
俺は数年以上待ち続けている、週刊ジャンプ連載の念能力漫画を床に置き、寂しそうに笑いを返す。
「これからは、まこちゃんと、悲しみを共有するのか……」
そう言って、健ちゃんは重く深い溜息をついた。俺はスマホを取り出し、新しく上げた動画を彼に見せようと、スマホを持ち出した。
スマホの画面を覗くと、見知らぬ人からDMが入っていた。訝しげにその内容を確認すると、テレビ夕日の社員から送られたものだった。『貴方の個人のチャンネルを見ました、テレビで紹介したいので一考出来ますか』簡潔な文章と、連絡先が書かれていた。
「テレビ局から、俺たちの活動を紹介したいと連絡が来た」
「
健ちゃんは身を乗り出し、大きく目をみはる。
「さっき連絡をくれたみたいだから、詳細を尋ねてみるわ」
俺は半信半疑で連絡を取ることにした。その結果連絡をくれた社員は、有名芸人がMCをしている超常現象の特番を作っている、アシスタントデレクターからであった。
テレビのワンコーナーに、色々なとんでも理論を主張する人たちを、五分程度紹介するという、大きなコーナーの穴埋め企画だそうだ。必ず放映されるかは分からないという前置きで、俺に参加を依頼してきた。少々うさんくさく感じたので、断ろうとしたら、出演料がとっぱらいで三万円だと言われた。
この絶妙な出演料に頷くほか無かった。しかも上手く行けば、ユーチューブの登録者を増やすことが出来る。俺はしばらく真剣に考えたが、そう思い悩むこともないと、この出演依頼を受けることにした。
「どうだったの」
健ちゃんの声に、若干の緊張が混じる。
「ビットたけるの超常現象Xファイルから出演依頼が来たぞ」
平静を装って結果を伝えると、いつの間にか握っていた手のひらが、じっとりと汗で濡れている自分に気付いた。
「えっ!? あの番組って、まだ続いていたの」
「はあ? 驚くのは、そっちかよ!」
「フフフ、冗談だよ。テレビ出演なんて凄いよね」
それに対して、健ちゃんは素直に称賛の言葉を述べた。
「オマケコーナーみたいなので、放送されるかは分からないと言われたよ」
俺は床に置いてあったジュースを一口飲み、健ちゃんの顔を見つめた。
「それでも名前を売るのに、大きなチャンスだよね」
そう言って、ぱちんと鳴らした指を俺に向ける。
「全国ネットだし、放送されれば影響力はかなり大きいな」
健ちゃんのその言葉には、俺も同意する。
「亜人の画像で、番組に爪痕を残してやろうよ」
健ちゃんは屈託のない笑顔で、そう言った。
これを機に、僕たちの物語は大きく動き出す――
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