第155話 未知

一時間ほど電車に揺られ火月が到着したのは、

都内でも有名な電気街がある場所だった。


改札を抜けてペデストリアンデッキを移動し、

駅の反対側にある複合商業ビルへ向かう。


今回の目的地はこのビルの一階にある

パソコン製品を中心に扱うチェーンショップだった。


店内に足を踏み入れると、クリスマスソングが耳に入ってくる。

店員はサンタ帽を被って接客をしており、

季節的にもクリスマス商戦に力を入れているということなのだろう。


午後四時という時間にも関わらず、店内はそれなりの人で賑わっていた。

特にゲームのコーナーは人気が高く、

おそらく子供のクリスマスプレゼントを購入するために、

多くの親御さんが足を運んでいるのだろう。


目的のものを手に入れるため、火月もゲームコーナーへ移動するが、

いくら探してもソフトが見当たらない。

というよりも、そもそも成人向けのゲームコーナーが存在していない気がした。


もしかして自分の調べた情報が古かったのかと思い、

出入り口の壁のフロアマップを凝視していると、

地下一階に専用のコーナーがあることがわかった。


なるほど、確かに成人向けのゲームコーナーを

一般人の目に触れるような場所には設置しないよな……

と一人納得した火月は下りエスカレーターに乗って、地下一階へ向かう。


地下一階の大部分は本屋が場所を占めており、

通路を挟んで反対側には占い師のような人が椅子に座って客を待っていた。


本当にゲームコーナーなんてあるのか?と不安になりながら

通路を歩いていくと、

一階へと続く登りエスカレーターの手前の一角にそれはあった。


スタイルの良い二次元キャラクターのイラストが

壁や床一面にプリントされており、

壁に設置してあるモニターからは動画が垂れ流しになっていて、

軽快な音楽と共に可愛らしい女性キャラクターの宣伝用ボイス?が響き渡る。


そこは本屋や一階のゲームコーナーに比べたら遥かに小さい区画だったが、

その存在感は圧倒的で、初見の人は誰でも一度は足を止めてしまうだろう。


異彩を放つ未知なる空間、それはまさしく異界と呼ぶに相応しい場所だった。

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