追偲の扉

八嵜 瀬奈

Prologue

プロローグ

この世界には、あまりにも謎が多すぎる。


未解決事件や事故は過去に何度も起きているし、

幽霊や妖怪といったたぐいの話は枚挙まいきょいとまがない。


「科学的根拠が証明できないから有り得ない」

「ただの空想、妄言だ」


そうやって考えることを放棄してしまうことは誰にでもできる。


だが、一度自分の胸に手を当てて考え直してほしい。


「人間は、この世のありとあらゆるものを理解できる存在なのだろうか」と。


わからないもの、理解できないものは確かに怖い。

だから受け入れたくないのだ。

でもそれは、一時的に目を背けている行為に過ぎない。


人は大人になるにつれて、あるがままを受け入れられなくなっていく。


自分の知っていることが世界の全てであり、

知らないことは必要ないものだと無意識に選別しているからだ。


経験という物差しは、

時に自分の視野を狭める足枷あしかせにもなり得ることを忘れてはならない。


そういえば、神社の鳥居が現世と神域を区画する結界、

言わば境界線の役割を担っているという話を何処かで聞いた覚えがある。


もしそれが本当ならば、

我々はこの世ではない世界(異界)に

何時でも足を踏み入れることができる状態にあると言える。


だったら、その逆があってもおかしな話ではない。


異界から現世にやってくる者がいないと誰が断言できるのだろう。


もしかしたら、現世と異界を繋ぐ境界線は鳥居に限った話ではないのかもしれない。例えば、貴方が今いる部屋の扉だって、異界に繋がっている可能性は十分にある。


……


…………


恐らく、今の話を聞いて


荒唐無稽こうとうむけいな話だ」

「付き合いきれない」


と考える人が大半だろう。


だが、ここでハッキリと言っておきたい。


わからないもの、理解できないものは確かに存在する。

必要なのは、あるがままを受け入れる心だ。


貴方にその覚悟はあるだろうか。

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