かわいくてニューゲーム!~ゲーマーが異世界で【職業→遊び人♥】の美少女にTS転生したけど、デバフに負けず最強チート魔法で無双します~
#OPENing STAGE-4; 遊び人、〝もうひとつ〟の魔法も見せつける!
#OPENing STAGE-4; 遊び人、〝もうひとつ〟の魔法も見せつける!
アストが放った超
大陸の中でもずば抜けて堅牢と評される城壁を軽々と突き破った。
もはや原型を留めていない大地と濃霧のような土埃の中を。
「……ヒハッ!」
辺境伯は必死に逃げていた。
「〝
辺境伯が意味深なことを呟きながら地を駆けていると、唐突にガラスの琴線を弾くような声が響いた。
「おい、どこに行くんだ」
辺境伯が慌てて立ち止まった。
道の先を見て目を丸める。
そこにはとっくに置き去りにしたはずの〝規格外の美少女〟――アストが堂々と立っていた。
「な……なんでてめえが、おれ様より前にいやがる!」
「知らん。
「っ!? どこまでも
「わからないことなら俺にもある」アストは変わらず、淡々とした口調で続ける。「お前、なかなか〝頑丈〟だな。言葉を借りるなら――俺も
「――ッ!」
少女から漏れ出た殺気に気圧されて。
辺境伯の身体が無意識に震え始めた。
「あまり〝こっちの魔法〟を使うつもりはなかったんだ。
少女は目を伏せながら続ける。
「お前に洗脳されたやつらの中に、俺のよく知る人もいたんだ。だから……俺はすこし、腹が立っている」
少女は想いを馳せるように言葉を紡いでから。
ゆっくりと。ゆっくりと。
白く。触れれば折れてしまいそうに華奢な腕を。
天に掲げた。
一瞬の空虚な時間が過ぎ去ったあと。
その小さな掌を中心にして。
〝馬鹿げた規模〟と称された先ほどのそれを遥かに凌駕する――
「ヒハッ!? 古代魔法の次は職業魔法か!? それに……なんだよ、この何もかもが滅茶苦茶な魔法術式は!? さっきのでも十分すぎるほど規格外だったんだぞ! まだ〝先〟があるっつうのかよ――」
幾重にも折り重なって。
漆黒に
ひとつも見劣りしない美しさを持つ――
世紀末の人形のような少女が立っている。
「……っ!」
そんな神話の時代の壁画のように幻想的な光景に気圧されて、辺境伯は唾を飲み込んだ。
「神には神を、か――」辺境伯はそう呟いてから、すがるように手にしていた杖を掲げた。「残念だが、いくらてめえが桁外れに強かろうが……
辺境伯がなにかに気づいたように、アストの展開する魔法陣をあらためて凝視する。
そこに刻まれていた文字は、やはり先ほどの〝古代ルーン〟ではない。
《古代魔法》より遥かに
「んな゛っ!?
少女の不条理ぶりに、辺境伯は幾度となく驚愕してきた。
それでもなお、想像を遥かに超えてくるアストに対して。
畏怖の念すら抱きながら彼は呟いた。
「――こいつの存在は、
天空を覆いつくすか如く広がった魔法陣は。
やがてアストの小さな掌へと凝縮されると。
中からひとつ――〝爪先ほどの黒い球体〟が現れた。
それは空中を漂いながら、辺境伯の目の前で制止する。
空気が張り詰めていた。呼吸どころか瞬きひとつ許されない。
無限にも思える緊迫した時間の後に。
黒い球体が――巨大な〝門〟を形作った。
いつそれが組まれたのか解らない。
存在そのものが理解されることを拒否しているような――圧倒的な〝禁忌〟の気配が門からは漂っている。
少女は言う。
「安心して良いぞ。絶対不壊だか知らんが、次はちゃんと消してやる。いや、正確には――
彼女は不吉な未来をほのめかせて。
さきほどはつけ忘れたと後悔していた〝魔法の名前〟を。
今度は――
「――〝 ■ ■ ■ ■ ■ 〟」
少女の口から漏れ出た、この世のものとは思えない不気味な言葉の羅列と共に。
世界が静止した。
扉が――開く。
中からは。
攻撃なのかも分からず。
意思を持つのかすら分からない。
ただただ得体のしれない。
ゆっくりと世界へと
「ヒ、ハッ!」辺境伯は最後の望みを賭けて杖を掲げる。「
しかし。門から這い出てきた得体のしれない〝なにか〟は。
展開された《結界》をやすやすと突き破ると。
辺境伯の片手ごと、掲げていた神遺物の杖を
「……んあ?」
何が起きたのか一切知覚できないまま。
辺境伯はぎょろりと自らの消えた右腕に三白眼を向ける。
――なにが、起きた? おれ様の腕ごと……神遺物が
思考を続ける辺境伯の身体が、なにかに掴まれるように宙へと浮かびあがった。
「ぐ、あああっ! 離せ! なんだ、これは! まったく理解ができねえ……なにひとつとして、だ!
辺境伯は思考がまとまらず、うまく息をすることもできない。
これまでに感じたことのない圧倒的な恐怖に全身を支配されそうになるが、それでも――
「――なんて、美しさだ」
自らが死の淵に立ってもなお、存在に見惚れてしまう魅力が少女にはあった。
「ヒハハハハハッ! 決めたぞ、女! おれ様は絶対にてめえを手に入れてやる。その美貌を。その最強を!」
アストは眉ひとつ動かさず、吹っ切れたように高笑いする辺境伯を見つめていた。
「それまでは
最後にゲルデと名乗った辺境伯は三白眼を見開き、狂ったように
やがてその断末魔の欠片すら残さずに、男は扉の中へと飲み込まれていった。
ばつん、と太い線が切れたような音と共に扉が消失する。
アストは一部始終を見届けてから、はっとした様子で口を開いた。
「最後にあいつ……なにか言ってたか?」
しまった、よく聞こえなかった――などと一応は首をかしげてみたあとに。
少女は困ったように腕を組んだ。
「そんなことよりも……
アストの言葉から次第に力が抜けていった。
ふらりと身体が揺れて。その場に倒れこみそうになった時。
――後方からだれかの〝声〟が聞こえた。
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