かわいくてニューゲーム!~ゲーマーが異世界で【職業→遊び人♥】の美少女にTS転生したけど、デバフに負けず最強チート魔法で無双します~
#OPENing STAGE-2;遊び人、すごい魔法を受け止める!
#OPENing STAGE-2;遊び人、すごい魔法を受け止める!
堅牢な作りであろう辺境伯家の主塔の壁を
「
などと非常識な理由で〝無傷〟を断言する少女を前に、小太りの家臣が叫んだ。
「ふふふふざけるなッ! 受け身でどうこうなるレベルを超えていますぞッ……!」
「ヒハッ、まあいい。
しかしアストという、世界の果てに取り残された人形のような美少女は。
辺境伯の言葉を完璧に無視してエルフの姫と会話を続ける。
「――それで、どうなんだ? お前は〝王女〟ではないのか?」
長耳の少女は辺境伯のことを気にしつつも、おそるおそる頷いた。
「あ……はいっ。あたしは
「そうか――よかった。やっと見つけた」
ここまで動きの少なかったアストの表情が微かに緩んだ。
アストはそのまま淡々と続ける。
「じゃあ、
「……ふえっ!?」
まるで緊張感のないその一言に、エルフは体をぴこんと跳ねさせる。
「
辺境伯は再び空中に魔法陣を展開させると、アストに向けて青白い光を放った。
「む? なんだ、これは――
その光を受けたアストの言葉が――〝鳴き声〟へと変わる。
「にゃあ。にゃあにゃあ……にゃあ」
「ヒハッ! 巫山戯たことばっかぬかすからよ、最底辺職に相応しい
大声で
「にゃあ、にゃあ……あ、あー。ふむ。にゃるほど」
やはり何事もなかったかのように〝もとの言葉〟を話し始めた。
「面白い
「……んあ?」辺境伯は眉間をひくつかせながら、「
「いや、効いているぞ」アストは淡々と答える。「今は少し無理をしているが、油断すると――元通りになりそうだ、
「っっっ! どこまでもおちょくりやがってええええ!」
辺境伯が怒りをあらわにして飛びかかる。
じゃらじゃらと仰々しい指輪が
「マグレはもううんざりだ! 次はてめえの頭に直接〝
しかし頭を掴まれた少女は、ひとつの抵抗も見せずにいる。
辺境伯は畳み掛けるように続けた。
「出力を加減するつもりはねえ。ヒハッ!
そうして辺境伯は下卑た微笑を最大級に歪ませて。
無抵抗のままの少女の頭に。
魔法陣を通じて《魔力》を送りこむ――
刹那。
辺境伯の全身に――恐ろしいまでの
「――ん、あ……?」
まるで時間が止まったかのような錯覚に陥いる。
『なにかまずいものに触れた』――その自覚はあるが、その正体が何なのか。
一体どのような種類のものなのか。
まるで見当がつかない。
――なんだ、こいつは……? 魔力を送り込んだはずが、逆におれ様ごと……こいつの中に、引きずり込まれ……!?
辺境伯にとって。
途方もない時間の果てに。
「……んがっっっ!!」
彼は腕ごと千切るほどの勢いで、少女から無理やり身体を引きはがした。
そのまま後ろへ飛ぶように距離を取り、まるで全力の手合いを終えた後のように肩で息をし始める。
「辺境伯、様ッ?」
「今のは、一体……?」
周囲には不可解に映った一連の出来事にだれもが首を捻った。
当事者である辺境伯の表情からは、これまでにあった一切の余裕が消失している。
「なんだ、やめるのか」それでもアストは変わらない口調で、「お前の魔法をまた見られると思ったんだが」
「てめえは一体……
辺境伯は先ほど触れた、少女の得体のしれない〝魔力の底〟を思い出しながら訊いた。
「ん? さっきから言っているだろう。ただの
「あんな
くそ、巫山戯やがって、などと何かに憑りつかれたように辺境伯は呟いて。
そのままふらふらと部屋の最深部に向かうと、壁面に厳かに飾られていた巨大な〝杖〟を手に取った。
「へ、辺境伯様ッ!? 〝
辺境伯は両手を天に突き出すようにして、神遺物と呼ばれた杖を構える。
「こうするんだよ――《
杖の先端を中心に、先ほどの倍はあろうかという巨大な魔法陣が空に描かれた。
莫大な量の青白い光が放たれ、辺境伯自身の身体にまとわりついていく。
「ヒハッ……!
溢れ出した青白い魔力の渦が、辺境伯の頭上に集約されていく。
やがてそこには凄まじい轟音を立てる、あまりにも巨大な〝魔力の塊〟が完成した。
「攻撃魔法――《
「や、やりすぎですッ! なぜ遊び人の奴隷一匹のために……この城どころか
「いや……まだだ。
小太りの家臣の忠告とは真逆に。
辺境伯は巨大な杖を操って、さらなる術式を織りなしていく。
「禁忌魔法――《
その一言でびりびりと空気が震え始めた。
やがて周囲から放射状に、辺境伯に向かって魔力が吸い寄せられていく。
「ふゃっ!? なんですか、これっ……力が、抜けてっ……」
エルフの姫に続いて、奴隷の少女たちもその場に倒れこんでいった。
「ヒハッ! これまでに洗脳してきた奴らから魂ごと魔力を引き上げる禁術だ……一匹一匹は
この場にいるだけではない、世界中から無数の光の筋が辺境伯の元へと集まってきた。
数多の人々の魂を代償に吸い上げられた魔力は無尽蔵に膨れ上がり、ぎりぎりと空間を震わせる。
「ひッ! 終わりだ、なにもかもッ……!」小太りの家臣が顔中に汗をかきながら言う。「敵も味方もない、辺境伯様はすべてを巻き込んで壊す気でいらっしゃるッ……! 一体、
だれもが恐れおののくほどの力が集まろうとも。
「まだ足りねえ!
辺境伯だけは魔法陣を展開する手を緩めない。
そしてついに――
「ヒハッ!
辺境伯が不敵に
「てめえはここで消さなきゃならねえ。おれ様の本能が徹底的にそう警告しやがった――」
頭上には領国を滅ぼしうるほどの魔力が結集し、はち切れんばかりに膨らんだ巨大な魔球。
それが辺境伯の叫びと共に――アストへ向けて放たれた。
「触れるすべてを壊して消えろ! 特級攻撃魔法――《
それらをすべて凝縮した魔法攻撃が少女へと迫った。
「こ、これが〝別格〟とされるA級職に、神遺物と禁術の効果が合わさった力……あまりにも、
エルフの姫が絶望の声を漏らした。
家臣も含めた周囲のだれもが震え、すべてを諦めかけていた中。
ただひとり。
美しく儚い、人形のような少女だけは。
やはりそれまでと同じように。
眉ひとつ動かすことなく。
ゆっくりと片手を前に伸ばすと。
迫り来る〝絶望〟を。
完膚なきまでに
「「……へ?」」
そして完膚なきまでに――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます