第4話 久しぶりの........
「
それは突然の事だった。尚書と国王の集う
「皆様におかれましては、大変ご苦労をおかけ致しましたこと、心よりお詫び申し上げます。本日より虹姫としての責務を果たし、少しでも皆様のお力になれますよう精進して参ります。ご迷惑をお掛けする事もあると思いますが、何卒どうぞ宜しくお願い致します。」
そう言って深々とお辞儀をした星華は尚書達を見回し、ある人物に視線を止めた。
「あら、あなたは....。」
「お久しゅうございます。礼部尚書、伶霜晏でございます。お帰りを、お待ち申し上げておりました。」
記憶の中よりも老けて見える霜晏に、星華はにこりと微笑みかけた。
「星華様、お戻りになられて早々ですが、側近をお固めになって下さいませんか。」
こう声を上げたのは
このように、各部尚書にはそれぞれ五州を治める“五大家”の人間が任命される。土木関係、宮廷工事を担う
「その事なのですが、今年の及第者の任官の儀まで待って頂けますでしょうか。その時までに専属文官と武官を決定致しますので、名表を持って頂けると助かります。」
「承知致しました。」
「星華様。武官の名表は只今持ち合わせております。失礼ながら、この場でお渡しさせて頂けますでしょうか。」
兵部尚書、
それから星華は、すっかり侍官へ様変わりした
「おかえりなさいませ、星華様。」
鵲鏡を始めとする、かつて
今は亡き母との短い生活を想い、八年間自然に張り詰めていた緊張の糸が弛み、それを皮切りにして星華の両目から一気に大粒の涙が溢れ出す。ぽたぽたと、大きな雫が次から次へと床に落ちていった。
「うぅっ.......、うっ....、お、お母........様............。っうぅ....。」
筆頭侍官として他の側仕え達に仕事に戻るよう指示した後、赤ん坊の頃のように泣き出してしまった星華を
「ごめん....なさ、い....。........泣かないって....、そう......、決めてた、のにっ........。」
「良いのですよ、星華様。泣きたい時には泣けば良いのです。でないといくら星華様でもおかしくなってしまいますよ。貴方が泣いて下さって私は今、とても安心しているのですから。私がいつでも貴方の泣き場所になって差し上げます。」
「ありっ....が.....、とう........、鵲....鏡..........。」
涙を流しながらも微笑む星華に鵲鏡もまた微笑んだ。
しばらく泣き続け、すっかり元に戻った星華は吏部より届けられていた文官名表を手に、一人の名前を探し出した。
「あった....、『
「星華様。そのお顔からすると......。」
「えぇ。決めたわ。文官も..........、武官も。」
「文官は勿論あの方でしょうけれど....、武官は誰になさるのですか??」
「それは............、」
「それは???」
〝知りたい〟と書いてある鵲鏡の顔を見て考えが変わった星華は、面白がるように長年の付き合いになるお目付け役に目を向けてこう言った。
「ここに連れて来てからのお楽しみ!」
と。
その後、ひんやりとした鵲鏡によって星華がどうなったのかは、言うまでもないだろう。
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