024
「けれども、基本的に清掃担当は決まっているし、急に替えては不審に思われるのではない?」
「そこは簡単よ。いつもの子たちが怯えてしまっているから変わってほしいってお願いすればいいのよ、安奈が」
「私が?」
「ええ、それが一番まっとうな方法だわ」
「そうなの?瑞樹がそいうのなら、そうするけれども……」
いまいちわからないという感じで安奈が頷くと、瑞樹はそれでいいと同じように頷いた。
翌朝、安奈と瑞樹は警察にミサの前の少しの時間でいいので聖堂内の清掃をさせて欲しいとお願いをしたところ、少しでいいのと、警察の監視下であればしてもいいと許可を得ることが出来た。
安奈は早速北条達に聖堂の清掃を手伝ってほしいと、その日のミサの後に捕まえて言うと四人とも快諾してくれた。
ちなみにこの日のミサでは聖水盆の横に光る蝶は現れなかったらしい。
そう簡単にはいかないだろうと、安奈達が想っていた時に、第四の事件が起こった。
警察が厳重に見張りを行っていたはずなのにもかかわらず、枯れ木のような死体が発見されたのだ。
ただし場所は厳重警戒をされていた聖堂の前ではなく、警備の甘い校庭脇だった。巡回していた刑事が発見し、すぐさま検死に回されたという。
「今回の被害者は
「残る要注意人物はあと三人、水瀬先輩に北条さん、そして
「五十嵐先輩は水瀬先輩と同じように吸血鬼だと名乗られた人だったわ。そうしてとても理的でオカルトなんて信じなさそうな人だったわ。それにドラックに手を出すようにも見えなかったわ」
「そう、けれどもそれはみんなそうだったのではなくて?皆ドラックに手を出すようには見えなかった」
「それはそうだけれども……」
「兎に角、事件が起きた以上、私達はまた動きにくくなってしまうわね」
「そうね、警察の方々も必死になっているようだし」
「何かもっとヒントがあればいいのだけれども」
「今回は聖堂の前ではなく校庭の脇だったのよね?」
「ええ、そうね」
「やはりそれは警察を警戒してのことだと思うの」
「それはそうでしょうね」
「ということは、やはり吸血鬼や魔女なんて非科学的な事ではなく、人間が行っているということになってしまうわね」
「貴女、まだ魔女や吸血鬼を信じていたの?」
「だってぇ」
「まあともかく、これは人間が行っているドラックに関する犯罪だわ」
「瑞樹の言うとおりね。こんな悪質なことが校内で起こっているなんてなったら、親御さんから子供を預かっている立場の人間からしたら、たまったものではないわ」
「安奈は預かっている側に近いけれども預かっているわけではなくってよ?」
「けれどもお父様が総責任者のようになっているのよ?黙ってみているだけにはいかないわ」
「つまり、まだ継続して捜査するということなのね?」
「もちろんよ。俄然やる気が出てきたぐらいだわ」
「全く困った人ね。情報を全部話して、警察に任せておけばいいのに」
「日本の警察は有能だけれども、校内で起きた事件は、校内で解決したほうがいいと思うの」
「そう、安奈がそう言うのなら私は協力するだけだわ」
「ありがとう、瑞樹。瑞樹の協力がなければ私は何も出来ないのよ」
「そう言ってもらえるだけで十分よ」
安奈はベッドから立ち上がると瑞樹の座るベッドに自分も座り、瑞樹に抱き着く。
瑞樹の背中に回された安奈の手は温かく、瑞樹も安奈の背中に手を回して抱き合った。
しばらくそうしていたのだが、いつ間でもそのままというわけにもいかず、どちらかともなく離れると、お互いにとろけるような笑みを浮かべあった。
「……さあ、瑞樹エネルギーもチャージしたし、事件解決に向けて明日からより一層頑張るしかないわね」
「そうね、明日からは私も合流して捜査するわ」
「それは心強いわ。ともかく、このリストにいる春休みに帰省しなかった人をあたることにしましょう、何か見た人がいるかもしれないわ」
「そうね、夜中に出歩くなんて余程のことだもの。窓からその様子を見た人がいてもおかしくはないわね」
「寮母さんにも話を聞きましょう、もちろん散歩のことは伏せて」
「業者の方はタイミングを見て出ないと捕まらない業者もいるから難しいわね。それに、春休みから今までずっと出入りをしている業者となると、数は限られてくるわね」
「でも夜に出入りする業者なんてないわよね?」
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