第2話
彼は雨が似合うひとだった。
いつも笑っていて、皆の中心にいて、誰よりも優しくて、誰よりも皆に愛されていた。それなのにふと、一人で生きているような目をする、そんな人だった。
僕とそんなに変わらないのに、悲しいほど落ち着いた、大人のひと。
彼の瞳の奥はいつも水面のように光っていた。自ら光るのではなく、世界を映す幻の煌き。少なくとも僕にはそう見えた。
まだ幼かった僕は、その違和感を口に出した。なんで君は、泣きたくても泣かないの。
歳に似合わない秀逸な冗談を口からこぼしていた彼は、固まってしまった。彼が余りにも驚いた顔をして黙ってしまったから、僕は何か間違ったことを言ったかと恥ずかしく思った。ごめん。何に向けての謝罪だったかは僕自身未だにわからない。
けれど、僕の言葉を聞いたとたん彼はまた笑みを浮かべて首を振った。
どうして?どうして泣きたいとか思うん。僕が泣いたとこみたことないやろ。
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