33.思い掛けない再会に
シャーロッテ邸の最深部。宝箱と金庫の前。
思わぬ形で再開した二人と一人の男と、何が何だか解らずに会話についていこうと三者の会話にとんがり耳を傾けて頷く一人の少年。彼らは輪を作って話し合っていた。
「……では、詳しく説明してもらおうか。ルージ。それに、バーレッド。貴様もいつから気付いていたのだ?」
戦闘終了後、話題を切り出したのは彼らのリーダー的存在をかってでたキリシマ。
さっきまで敵であった見知らぬ大男を前に怯えているルタを背中に隠しながら、スクルージとバーレッドを交互に見て問い詰める。
「僕は強化スキルを使って戦い始めた時からです。前衛で剣を交えると何となく感じることがあるんですけど、『あ、これ、太刀筋がスクルージさんだ』ってわかったんですよね。ただ、もうその時にはスキルのキャンセルも出来なかったですし、それに……」
「それに?」
「一度戦ってみたかったんですよね、スクルージさんと」
「そうそう。俺も!」
キリシマの顔色をうかがうように控えめに言っていたと思えばこの通りだ。
詫びれていたはずの表情はどこへやら。照れたように頭を掻きながらバーレッドが答えに続けると、スクルージも調子の良さそうな声で笑う。
「っていうか俺は目が覚めてログアウト出来ない事に気付いてからずっとここにいたの。下手に動いてもどうなるかわかんなかったし。それで、偶然お前らが来て……。いや、最初はキリシマが俺に腰抜かして逃げたんだったな。それ以来、お前らがこのダンジョンに戻って来るのを待ってたってわけさ」
「我は腰など抜かしていない。それにルージ、貴様がわざわざPvPを仕掛ける必要などなかったろうが。そんな珍妙な格好までしおってからに」
「だから言ったろ? 本気のお前らとバトってみたかったって。……ウルトラお洒落番長のキリシマには言われたくねーな。気付いたらこの装備だったんだっての」
まったく拍子抜けだ。と、がっくり肩を落とすキリシマ。
シャーロッテ邸の地下で待ち構えていた未知の強敵は、あろうことかかつての仲間であり翼蛇の杖のメンバー。重装備の騎士号ことこの男、スクルージであった。
呑気に笑いながら経緯を説明するが、一度敵前逃亡をして作戦を練り直し再戦に挑んだキリシマは彼からどう弁明を受けたところで納得がいかない。いくはずもない。
「ピーブイピーって何ですか? バーレッドさん」
「簡単に言うと仲間同士での模擬戦かな」
「ええ?! では自分たちはご主人さまのご友人と戦っていたのですか……?」
「早い話がそういうことです」
ルタの質問に優しい目の色を取り戻したバーレッドが答えていれば、
「それを言うな貴様も同罪だぞバーレッド!」
「相変わらず短気だなぁ。キリシマお前。手伝い屋の子がビビッてんだろ~」
反応してイライラをぶつけるキリシマを宥め、スクルージがルタの顔を覗き込むとルタも緊張して背筋をぴんと伸ばす。
ルタから見たスクルージは自分の頭五つ分以上背が高く、背丈だけでなく体格さもかなりある。端から見れば熊と兎、大人と子供。
スクルージも顔は爽やかでハンサム路線だが、同行していた二人と比べて少しいかつく、怖がりなルタは見つめられると動けなくなってしまうらしい。「ひぃっ」と小さな悲鳴を挙げてバーレッドにしがみついた。
「……もういい。それよりも金庫破りだ。この鉄扉、斬れるか? ルージ」
邪魔が入ったどころではない予想外の仲間との合流に、当初の目的を忘れそうになっていた。
振り向き、宝箱の向こう側に背景として設定されていた金庫の大扉を指さすキリシマと、大きく頷き斧を構えるスクルージ。
「お安い御用だぜ!」
「それでは僕も!」
一度提げ直した刀を引き抜いてバーレッドも負けじと彼の後に続き、二つの刃の重なりが鉄の塊を容易く切り伏せる。
斜めに二線、真横に一閃。開かれた鉄扉の向こうには両手に抱えきれないほどの金銀財宝の山が彼らを待っていた。
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