15.侵入作戦
「なるほど考えたな。シャーロッテか」
二人がターゲットに選んだシャーロッテ・イヴィナはテンプレートもよろしくどうぞな悪役令嬢だ。
LSO稼働最初期、期間限定イベントで登場した彼女は、資産家の父の財産を使って違法な流通を繰り返しペットと称した大型モンスターを買い付ける絵に描いた悪役キャラクターだった。
その後も運営に気に入られていたのか、年に二度ほどシャーロッテがメインになるクエストが毎年のように開催された。
プレイヤーは期間内に彼女の悪事に関する情報を集め、ボスである大型モンスターを討伐する……というクエストだ。
そういった便利なキャラクターとして扱われていたのか、彼女は一回のイベントで悪事を働いたあとも全く懲りずに同じ過ちを繰り返す。
いわゆるお決まりの悪役としてプレイヤー達とは反対側に永久にいるキャラクターがシャーロッテだった。
「うん。彼女なら誰も困らないですからね。というか本当にいるんだ……」
使用人たちに囲まれて庭でうたた寝をしているシャーロッテを生垣越しに観察しながらバーレッドが頷いて言い、メニュー画面を開いて自分の装備を変更する。
「これでどうかな?」
「ああ。申し分ない。立派な奴の小間使いに見えるぞ」
「小間使いって……」
黒づくめのコートから質素だが小綺麗な洋装に着替えたバーレッドに対し、からかうように笑ってキリシマも準備を始め、
「戦闘は出来れば避けたいがやむを得ん場合は……だな」
「シャーロッテ周りの戦闘値はもともと大したことはなかったと思うんで心配ないとは思いますけど。一番強い使用人NPCでも60レベルくらいですし」
「ああ。そのようだな」
「では、さっき話した通り僕がシャーロッテ達を引き付けておくのでその間にキリシマさんが倉庫に忍び込むということで。目標金額は家を買うための数千万円。引き出したら全力で逃げましょう」
ターゲットにアイコンを表示させながら二人で立てた作戦を振り返る。
暴君を叩き弱き貧民(ここでいう自分たちのこと)を助ける大仕事。
題してネズミ小僧作戦、決行だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます