下宿先で部屋の中を飛び回っている蜂がいた。

ぶんぶんと羽音がして、目が覚めて仕方がなかったのだが、追いやると照明と天井の隙間に消えていった。

どうやら、その隙間から入ってきたらしかった。


しばらくすると、また現れ、追いやると隙間に逃げた。


しばらく攻防を続けたが、彼女はこの部屋の上の隙間から逃げる様子はなく、いつまでも僕の部屋の近くにいるようだった。僕はどことなく愛着を感じ始めた。


春休み。実家に帰ってしまってしばらくすると、蜂のことは完全に忘れてしまっていた。


そして4月、下宿に帰ると、部屋の中心に一匹の蜂が落ちていた。


そりゃあ食料が無いんだから死んでもしゃあないと思った。

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