双子の姉は『勇者』ですが、弟の僕は『聖女』です。

ミアキス

プロローグ

「初めまして、楠木陽向くすのきひなたさん。僕は数多いる創造神の一人ディアル・マディル。貴女をスカウトに来ました♪」


 突然、目の前に銀髪銀目の美形青年に、全開の笑顔でそう手を差し出された。


 ここで普通の女子高生なら、黄色い声を上げて、差し出された手を掴むのかもしれない。

 若しくは、不安そうにじっと睨んでるのかもしれない。

 でも、私はとにかく何もかもが嫌になってて、死にたくなってた時だったから…。


「……」


 見なかったことにして、さっきまでそうしてたように、防波堤に座ってジッと海を眺めてた。


「………あ、あれ?もしかして、僕、シカトされちゃってる?」


 これはきっとアレだ。真面目人間とか言われてる私に、面白がった誰かがドッキリでも仕掛けてるんだろう。


 そう思って、完全に気にしないことにした。


「え?え?ドッキリって何だっけ?うわ、もう時間無くなっちゃう!!」


 人が静かに海を見てるのに、背後が煩くて堪らない。


「~~っ!何なんですか、さっきから!」


 振り向いた瞬間、固まってしまった。

 だって、彼は宙に浮いて逆さまになってたから……。


 ーー何、これ?ドッキリでここまでやるの?


 呆気に取られてると、遠くから無数のエンジン音が聞こえてくる。


「ごめんなさい、ごめんなさい!もう時間ないので、説明は後にします!」


「は?」


 彼はそう言って、私の腕を掴んだ。


「な、何っ!?」


 その瞬間、私の体も宙に浮き、眩しい光に包まれたーーーー。



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