第170話【修練の成果と調薬準備】
その後も研修は特に問題なく予定していた期間の終わりが近づいていた。
「うん、良いんじゃないかな。
レベルが上がったおかげで魔力も増えたみたいだし一度に出来る容量はまだまだだけど回数をこなせば一日の量としてはそれなりになった。
もう、まわりから『使いものにならないスキル』とは言わせないくらいにはなったのではないかな」
ミギーをはじめ、ナカーやダリーも同様にレベル3に達し両手のひらに乗せられる程度のものならば数十は作れるようになっていた。
「まあ、それなりに使えそうな気はしてきましたよ。
今はまだ両手のひらサイズまでですが頑張れば両手をひろげたくらいまで出来るのですよね?
それを複数回やれるようになればそれこそ乗り合い馬車でさえ行商が出来ることになりますからね」
ミギーはそう言って練習ようの物質を目の前でカード化して見せた。
「なかなかいい目の付け所だとは思うけど、今の君たちが報酬を貰いながら研修できるのは商会主のおかげなんだから独立を考えていてもその前にしっかりと恩を返してからにするようにね」
「あはは、冗談ですよ。
僕たちが商売を立ち上げても小銭を稼ぐくらいなら出来るでしょうけど元手も信用もない状態で独立なんて考えもしないことです」
「まあ、それぞれに考えはあるだろうからそのあたりは深く話さなくてもいいか。
それよりも昨日連絡があったんだが頼んでいた魔道具が明日到着するそうだ。
そうすると僕はしばらくそちらの方を優先的に試してみたいと考えてるのでこちらに顔を出すことがかなり減ると思う」
僕は3人にそう言うとレベル3になったら覚えて欲しい事を書いたメモを渡して自己修練をするように指示を出した。
「これをしっかりこなせれば君たち3人の立場はかなり改善されるはずです。
僕もしばらくは魔道具の使い方を勉強したいので1ヶ月後にひとつテストをしようと思ってます。
これに合格したならばちょっと頼みたいことがあるから頑張ってくださいね」
「頼みたいことですか?
いや、ミナト先生の役にたつことなんて私たちにはないと思ってたので嬉しいです。
頑張って期待にそえるようにしておきます」
ミギーたちはそう行ってお互いに笑いながらうなずいた。
* * *
「さて、ようやく試したかったことができるな」
「そうですね。
私ももう少しでレベリングが終わりそうな雰囲気ですのでお手伝いをしたいです」
ハーベスに頼んでいた魔道具が運び込まれた部屋で僕とノエルは山積みされた調薬の本を前にやる気に満ちていた。
「しかし、よくもまあこれだけの本を集めてくれたものだよ。
普通は調合師のスキル持ちにしか手に入れられないはずの上級調合の本まであるとは……」
「本に関してはこういった専門書はかなりの高級品になりますからそれを生業にしている調合師でなければ不要なものですがそれを扱えるところからもそれだけロロシエル商会は力がある商会ということなのでしょうね」
「本当になにがどうなるかわからないから縁は大切にしないといけないな」
「そうですね。
これからすぐに調薬を試してみるのですか?」
「もちろんそのつもりだし、ノエルにも手伝ってもらうからよろしく頼むよ」
「まかせてください……って言いたいけれど私になにが出来るのかな?
調合スキルはもちろん無いし商人スキルじゃあ品物の適正価格がなんとなく分かるだけだし……。
もしかして鑑定スキルを使ってなにかするの?」
今の今まで鑑定スキルのレベリングをしていた事を忘れていたのか最後になってようやくそこに思いがたどり着いた。
「まあ、僕も鑑定スキルは使えるけれど二人でやったほうが効率よくできるからね」
僕はそう言うと調薬の本を一冊ノエルに渡して「一番簡単に出来そうなものを選んで素材の準備を頼むよ」と言って自分は魔道具の使い方が書いてある説明書のようなものを読み始めた。
「一番簡単なものですか?
ならば初級回復薬ですかね。
普通に売っている薬の中でも安価な部類になるのでおそらく素材も安価なものを使っているのだろうと推測します」
「ならばその素材があるかどうかの確認を頼んでも良いかい?
素材は全部カード化してあるからレベリングのときにやったように鑑定スキルで探してくれたらいい」
「わかりました。
じゃあ探してみますね」
ノエルはそう言って調薬の本から初級回復薬のページを探してカード化されている中から素材を探していった。
「これで全部あると思いますよ」
十分ほどたった頃、まだ魔道具の説明書を読んでいる僕に素材が揃ったことをノエルが教えてくれる。
「もう見つかったの?
じゃあ早速試してみるか」
「魔道具の使い方は分かったのですか?」
「まあ、だいたいだけどね」
僕はそう言って彼女が選んでくれた素材のカード化を解除して素材本来の姿に戻す。
「この説明書によると最初の素材をひとつ入れてから順番に反応したら次を入れるようにするらしい。
反応したかは魔道具で分かるみたいだけど、せっかく鑑定スキルを持ってるんだから魔道具の計測とどっちが正確か試してみようか」
「それ良い考えですね。
スキルの練習になりますしより調薬のことを知ることが出来そうですもんね」
「ああ、それにもしかするともしかするかもしれないしな」
僕の意味深な言い回しを聞いたノエルは小首を傾げながら「なんの事です?」と聞いてきたが僕は「まあ、やってからのお楽しみにしておいて」と軽く話をそらしておいた。
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