第144話【盗賊団の強襲】
「今度は反対側かよ!」
ガラムは目の前の斬り倒した盗賊にちらりと視線を送ると「チッ」と舌打ちをして警告音のする方向へと走り出す。
「ザビリア!
出し惜しみしてる余裕はねぇぞ!」
「わかってる!」
ガラムは仲間に激を飛ばしながら突然あらわれた盗賊たちに勇敢に立ち向かっていく。
「ファイアウォール!」
「ぐわっ」
ザビリアと呼ばれた男は2人同時に襲いかかってきた盗賊に対して炎の壁をつくりそれを撃退する。
「くそっ なんなんだコイツらは!?」
「わからねぇが普通の野盗ではなさそうだ!」
魔法でダメージを受けた盗賊を追い打ちですかさず止めを刺しながらガラムがそう叫ぶ。
「馬車は大丈夫か!?」
迫りくる盗賊を切り捨てながらガラムが馬車へと目線を送ると馬車を背に御者たちが武器を持ち有事に備えていた。
「ミナトさん!」
馬車へと向って走る僕を警告音の音でテントから出てきたノエルが見つけて声をかける。
「ノエルさん馬車の後ろに隠れるんだ!」
僕はそう叫んで彼女の手を掴むと馬車の後ろに急いで引き入れた。
「あれはなに?」
「どうやら盗賊団みたいだけどガラムさんは普通じゃないって言ってた」
護衛たちと盗賊たちの戦いを見ながらどうすれば危険を回避できるかを思考しているとガラムたちの攻撃をすり抜けた盗賊のひとりが馬車に向って突っ込んできた。
「ひとり来たぞ! 構えろ!」
御者たちはただ震えている者などおらず手にした槍を低く構える。
盗賊は御者たちの構える槍の長さを嫌い手に持ったナイフを腰に戻して別の何かを手にして次の瞬間、馬車に向って放り投げた。
「なんだ!?」
御者たちは放り投げられたものに視線を向けると中のひとりが叫んだ。
「火の魔核だ!
馬車が燃えるぞ!」
(火の魔核?
馬車が燃えるだって?)
その叫び声に反応した僕はとっさにその放り投げられたものを対象にスキルを発動させていた。
「
その瞬間、空に投げ上げられた黒い物体が突然消えた。
「なっ!?」
それを見た火の魔核を投げた盗賊が驚きの声をあげその場に固まる。
「今だ! やれ!」
その隙を見逃さなかった御者のひとりが槍を盗賊に向けて突き出した。
「ぐっ」
その槍先が盗賊の体に刺さると男はうめき声と共にその場に崩れ落ちた。
「すまない、助かった」
トトルが僕の側に来てそう伝えると辺りに盗賊が潜んでいないか警戒を続けるがそれまで聞こえていた戦闘音がやがて聞こえなくなりトトルのもとにガラムが血がべっとりと付いた剣を片手に戻ってきた。
「どうやら片付いたようですね」
「ああ、思ったほどの人数じゃなかったのが救いだったがこっちも無傷って訳にはいかなかったのが痛いな」
「何人やられました?」
「ローズとギリーだ。
とりあえず命に別状はないが怪我の具合から少なくともこの旅のあいだは戦力外となるだろう。
回復薬のストックはまだあるか?」
「まだいくつかありますので使ってください。
そのために準備したものですから」
「わかった。助かるぜ」
「ところで奴らの素性はわかりましたか?」
「生け捕りに失敗したから確かな事は言えないが普通の野盗ではないことは確かだ。
商売敵の差し向けた裏の私兵か流通ルートの破壊を目的にした国への反逆行為あたりか」
ガラムはトトルから受け取った回復薬をリーグに渡して怪我をした部下へ持っていくように指示をしながらそう推測した報告をする。
「敵対商会ならばマジカン商会だろうが御者の皆殺しを優先してそれが駄目なら荷を燃やす手段をとるなどとても乱暴で普通のやり方ではないからね。
敵対商会とはいえそれなりに知っている私としては彼らの仕業とは思えないんだが……」
ガラムはトトルのつぶやきを聞きながら「どちらにしてもいまさら王都へは戻れないので明日到着する予定のベベルでギルドに報告をして対処してもらうしかないでしょう。
そのためにも盗賊たちの死体を運ばないといけませんがさすがに荷物を置いて乗せていく訳にはいかないでしょうからどうしたものかと……。
まったく面倒なことになったな」とため息をついた。
護衛のメンバーが倒した盗賊たちを一箇所に集めてどう運ぶかを話し合っているところへガラムの指示で僕が呼ばれた。
「この盗賊たちの死体をベベルまで運ばなければならなくなったが荷台は荷物で一杯だから乗せられるスペースが無い。
そこでだ、コイツらを荷台に乗せるために馬車一台分の荷物をカード化して運んではくれないだろうか?
もちろん礼はするつもりだがどうだろうか?」
僕の予想とは少しばかり違う方向だったがガラムの頼み事はやはり荷物のカード化しての運搬の事だった。
「それは構いませんが、死体を荷台に乗せて走るのはあまり気持ちの良いものではないですよね?」
「それはそうだが人はカード化出来ないだろう?」
「できますよ。
人といえども死体ですからボアなんかの死体と同じでカード化は出来るものですよ」
本当は生きていてもカード化できるのだがそれはミナトのみに許されたチートなので死体だからカード化出来るのだとの説明をして誤魔化すことにした。
「なに!
それは嬉しい話しですね。
ぜひ頼みたいと思います」
トトルはそう言うと僕を死体の前に連れていき「では、お願いします」と言って他の皆をさがらせた。
「あ、そうだ。
一人ずつが良いですか?
それともまとめてでも良いですか?」
「まとめてって10人以上居るんだぞどれだけの魔力が必要だと思ってるんですか?
まあ、出来るならばひとまとめの方が管理がやりやすいでしょうかね」
トトルの言葉に僕は「わかりました」と応えてからひとところに集められている盗賊たちを範囲に絞りながらスキルを使用した。
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