第114話【報酬と納品】
「ありがとうございました」
僕はグレートボアに止めを刺してくれたトトイにお礼を言ってギルドカウンターにて報酬を受け取ってくれるように伝えた。
「お、おお……。
しかし、本当にこんなんで報酬をもらっていいのか?
結局のところ戦闘経験は全く積めなかったのは残念だったがあれしきのことでこれだけの報酬をもらうのも気が引けるんだが……」
「いえいえ、グレートボアが気絶したのは偶然ですし、もしかしたら直ぐに起き上がってこちらに向かってきたかもしれない状態でしたからね。
保険の意味でもトトイさん達が依頼を引き受けてくれたからできたことですから遠慮なく報酬は受け取ってください」
「そうか?
まあ、そこまで言ってくれるなら遠慮なく受け取らせてもらうとしよう。
だが、もしまた同じようなことがあったら言ってくれ。
タダとは言えねぇが半額で引き受けてやるからよ」
「それはありがたい申し出です。
その時にはぜひお願いしますね」
「ああ、またな」
トトイ達はギルド受付から報酬を受け取ると笑顔で手をあげて次の仕事へとギルドを後にした。
「じゃあ、このグレートボアは解体して素材と肉に分けてもらえますか?
そして、肉は僕が依頼用に貰いますので他の素材はギルドで買い取ってもらえますか?」
アリシアにそう言うと彼女は「解体手数料はいただきますよ」と言いながらギルドの解体チームに声をかけてくれた。
「うおお!
コイツはかなりの大物じゃねぇか!
解体士としての腕がなるぜ、少しまってな1時間程で解体してやるからな」
アリシアが手配した解体士の男達は歓喜の雄叫びをあげてグレートボアを運んで行った。
「宜しくお願いします。
では、僕はギルド併設の食堂で紅茶でも飲んで待つようにしてますね」
僕がそう言って食堂へ行こうとするとアリシアが呼び止めて「ミナトさんは解体依頼を出されていますので応接室にてお待ちくださいね。 これからの事も聞きたいですし……。 あ、紅茶は出させてもらいますよ」と言って僕を応援室へ案内するとすぐに紅茶を淹れてくれた。
「――それで話って?」
アリシアが淹れてくれた紅茶に口をつけながら僕は彼女にそう問いかける。
「今、解体しているグレートボアの肉で子爵家からの依頼素材4つが揃うのでしたよね?
納品はどうされますか?」
「どうされるって、当然納品しますよ?
ほかに何かあるのですか?」
僕はアリシアの言葉の意図がわからずにそう問い返す形になる。
「いえ、本来ですと納品はギルドへ預けて頂いてそれを依頼主へ渡すのが一般的なのですが今回は食材が依頼物なので直接子爵家へと納めてもらっても問題はないと思います。
どちらを選んでも報酬は変わりませんが顔を繫いでおきたいならば直接行かれても良いかもしれません。
どうされますか?」
(なるほど、当然といえば当然か。
ギルドを通じて依頼されたものはギルドに納品して受け取りに来てもらうのが普通なのだろう。
しかし、今回は子爵家に伝手をつくるチャンスでもあるから自ら納品に行くのが正確かもしれないな)
「では、解体が終わり次第子爵家へ持参することにします」
「わかりました。
では、その時にこの書類をお持ちくださいね。
納品したときにここに受け取りのサインを貰ってきてくれればこちらで報酬を出させて頂きますので」
アリシアはそう言って依頼完了報告書を僕の前に置いてくれた。
――1時間後には解体士達から連絡があり、肉と素材の解体が無事に終わったと言われた。
「では、こちらがグレートボアの肉となります。
そのほかの素材に関してはギルドで買い取りとさせて貰いますのでリアラにてお支払い致します」
僕はアリシアから肉の塊を受け取るとすぐにカード化してポーチに仕舞った。
「ところで依頼があったとはいえ、連絡も無しに行っても良いものなんですか?」
「お屋敷の門兵に依頼完了報告書を見せれば料理長のオルードさんに取り次いでくれると思いますよ。
その後は彼次第ですが運がよければ子爵様と面会できるかもしれませんね」
「なるほど、わかりました。
では行ってきますね」
僕はアリシアにそう告げるとギルドを出て、子爵家へと向かった。
* * *
「――ここだな。
さすがに大きな建物だな」
数十分ほどかかったが僕は無事に子爵家の前にたどり着いていた。
「すみません。
子爵様からの依頼で食材の納品にきました。
これがギルドからの証明書になります」
僕はギルドでアリシアから受け取った依頼完了報告書を門兵に見せて確認をしてもらう。
「担当の料理長を呼んでくるのでしばし待たれよ。
ところで馬車も無いようだが食材はどうやって運んで来るのかね?」
ひとりの門兵が僕に当然の疑問を投げかける。
「……こちらではあまり馴染みのないスキルのようですが僕はカード収納スキルを使うことが出来ますのでこうやって運んできました」
僕はポーチからいくつか依頼物のカードを取り出して門兵へみせた。
「ほう。
カード収納と言えば小指ほどのものしかカード化出来ないと聞いたことがあるがどうやらデマだったようだな」
門兵が感心しながらカードを眺めていると彼の後ろ側から聞き覚えのある声がかけられた。
「これはこれはミナト殿。
ギルドに依頼していた食材を全て揃えらたようですね。
中にはかなり手に入れるのが難しいものもあったと思いますが……」
そこに現れたのは料理長のオルードだった。
「先日はどうも。
ええ、子爵様からのご依頼とのことでしたので急いでこなしてきました」
「それにしてもお早い。
では、中で納品物を見せて頂けますか?」
オルードはそう言うと僕を引き連れて厨房の横に配置されている食材倉庫に置くように指示を出した。
「では食材のカード化を解きますので後の処理はお願いします」
僕はそう言って指定された食材を棚や保存機能つきの保冷庫に置いていった。
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