⑭JK、手がかりの変態下着を矯めつ眇めつするのこと。
糺一はややあってうなずいた。
「わかった。そうしよう。ただ――」
「ただ、なに?」
「その女が何者かわかったところで、意外とつまらない内情しかないかもしれない。つまり、面白いネタにつながるとはかぎらない」
瀬乃は肩をすくめた。
「ま、そのときはそのときさ」
そういって彼女はふたたび下着を手にした。
「その女に関して、この変態パンツいがいの情報は?」
「いや、とくにはない。女のみてくれは、黒のボブカットで、むっちりした体つきの女性ってことくらい。来ていたものはぴっちりした毛皮のコートに、針みたいなピンヒールのブーツだ。あとは……そもそも会話らしい会話をしたわけじゃないんだ」
「すると手がかりはこの下着だけか――」
瀬乃はそれを目の高さにかかげてじろじろと調べた。
「あれ? これオーダーメイドのしろものだ」
「わかるのかい?」
「ラベルの刺繍をみればわかる。注文にあつらえて作った高級なやつ――まあこういう変態パンツに高級低級あるのか寡聞にして存じませんけど――とにかくそのへんにある吊るしの既製品じゃないよ」
「そうなのか」
「この製造元をつきとめればなにか手がかりがつかめるかもね――おや」
そういって瀬乃はドアのほうへ顔を向けた。
「昼飯がきた」
田沼が手にコンビニ袋をぶら下げて戻ってきた。
「じゃ、いろいろ当たってみましょ」
「検索とかでわかんなかったら、パパのよく使ってる興信所に相談してみる――だからそっちもサバゲ―動画のほうちゃんとやっといてよ」
「そういえば」
はっとして糺一はいった。
「このからだの傷で、海パン一丁になると画的にアレだな」
瀬乃は笑った。
「ああそうね。まあ鞭の痕がビシバシ入ってるのも面白いかしれないけど――あれだ、前やった企画の〝店のしきたりにうるさい勘違いラーメン店主は腕から刺青がのぞいてる輩にも注意できるか〟で使った全身用の刺青シール貼っときなよ。以前の余ったやつそこのバッグに入ってるから」
それだけいって彼女は、指でつまんでいる例の下着をくるくる振り回しながらドアへ向かっていった。
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