第40話 ジョンバーン(5)
前後に球体があり胴体の部分が円柱の様な形でつながっている。繭(まゆ)な形状だ。
その球体の前部二か所からエネルギー波を出している。大きさは哨戒艦と同じ位だ。ヘルメース級航宙駆逐艦の前面シールドを破れない程度のエネルギー波だ。
それぞれの宙域で二〇〇隻近い謎の物体が、第二艦隊の各部隊を攻撃している。だが、戦況は、敵方に思わしくないようだ。
アトラスⅢ型の荷電粒子砲で後方から攻撃を受け、順次破壊されて行っている。機動力は高いらしく、アトラスⅢ型と同程度の機動を備えている。
あの大きさであの機動力ヘンダーソンは謎の物体の動きに注目していた。戦況は敵方に不利かと思われたその時だった。
後方にいた四〇隻ほどの謎の物体がものすごい速度で前面に出て来たかと思うと一瞬、全部の球体が光った。
これはヘンダーソンは気付くと
「退却しろ」
口から怒鳴ったが、前戦に届くはずもなく、前面で応戦していた駆逐艦五隻が一瞬にして三分の一程消えた。アトラスはこの光る物体を攻撃しようしているが敵の戦闘艦に阻まれて近寄れない。
制御スラスタを全開してA3G、A4G両部隊の全艦が後ずさりしながら応戦している。
機動力があり、駆逐艦の主砲では捉えられないでいた。更に三隻の駆逐艦が攻撃を受けたところで後方から新たに発進したアトラスによって光を発する謎の物体が壊滅すると、やっと敵の攻撃が収まった。映像には五秒程度のタイムラグある。
A3G旗艦シューベルトに乗艦するカルビン・コーレッジ司令が3D映像に現れ
「ヘンダーソン総司令官。敵の攻撃は止みました。敵の艦をいかがいたしましょう。前回の様に捕獲しようとして近寄って大爆発されては、たまりません。このまま破壊しますか」
「艦として原型が残っているものは全て破壊しろ。艦のかけらの様な物体が有れば捕獲しろ。十分注意して」
「了解しました」
敬礼して3D映像が消えた時、A4G旗艦アドラステアのアンデ・ボルティモア司令が3D映像で現れた。
「ヘンダーソン総司令官。敵はあらかた片付けました。形状のある艦は全て破壊しました。アトラスの調査で分かった事ですが、我々の調査した小惑星帯の宙域に、例の二連星と同じ様な緑のガス幕で覆われている宙域が有ります。小惑星帯なので航宙艦は入れません。航宙戦闘機のみです」
「場所はどこだ」
「ここです」
3D映像に小惑星帯の一部が赤く光る部分が見えた。
「小惑星帯の左先端から中央へ六〇万キロ入った中心当りです」
ヘンダーソンは、
「クレメント艦長、各部隊の司令とだけ話したい」
数秒もしないうちに司令フロアに四人の司令の映像が現れた。ヘンダーソンは、ボールドウィン主席参謀に重力カーテンをするように言うと
「謎の物体の発進位置の一つが明らかになった」
そう言ってA3G司令から送られてきた映像を出す。
「A3Gは、この宙域の調査を行う。A1Gは、担当宙域の調査を中止してA3Gのバックアップに当る。
A4Gは、謎の物体の発進位置を探してくれ。発見次第、その宙域の調査を行え。A2Gは、A4Gのバックアップをするように」
四人の司令が「はっ」と言って敬礼するとヘンダーソンも答礼をした。
やがて四人の映像が消えるとコムを口にして
「A1G全艦、調査作業を中止してA2Gのバックアップを行う。外に出ている航宙戦闘機の回収を急げ。哨戒艦と駆逐艦はすぐに所定の位置へ戻れ」
それだけ言うとヘンダーソンはコムを口から離し、スコープビジョンを見た。外の宙域ではまだ、アトラスが忙しく動き回っている。
二時間後、A1Gは、A3Gのバックアップに当るべく宙域を移動した。
A3Gが、小惑星帯の左三分の一を包み込むように展開すると航宙母艦アルテミス八隻から発進した計四〇〇機・・一隻当たりの最大同時発進機数は、九六機だが、小惑星隊への突入の精神的疲労を考慮して一航宙母艦辺り四交代とした。
最初に選ばれたのは、各航宙戦闘機部隊でも選りすぐりの精鋭だ。最初は、何が起こるか解らない。その為の体制だ。
「こちらA3G宙戦隊長のアッテンボロー大佐だ。皆よく聞け。これから向かうところは、未知の物体がお住まいになるところだ。そそうの無い様に心してかかれ。遠慮しなくていいぞ。レーダー全方位展開」
そう言って口元をゆがませると小惑星帯に自分の編隊を引き連れて突っ込んでいった。
小惑星帯入ってすぐにヘッドディスプレイにものすごい数の赤い光点(敵)が現れた。
「全機散開」
言うが早いか急激に方向を変えた。
前方の岩礁の後ろに潜んでいる敵を見つけると岩礁の右から回ってヘッドディスプレイに視認した途端急上昇した。
既に赤い光点は消えている。右前方に映る赤い光点を視認するとすぐに向きを変え、左に下降した。
「すごい数だ」
口の中で呟きながら次の敵を視認にした。
―――――
次回をお楽しみに。
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